《[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!》超強化したバッティングセンターもどき
そして俺たちは一旦部屋を出ると淺田の言っていた第二訓練場へと移する。
ちなみに、今までいたのは人同士が戦うための第一訓練場で、こっちは機械相手に鍛える第二訓練場だ。
他に魔法をぶっ放すための第三だったり、障害のあるそれなりに広さのある演習場なんかもあるんだが、まあそれはいいだろう。
第二訓練場の中にると、そこには天井から床までを繋いでいる太く大きな鉄柱があったり、プロレスなんかのリングみたいに四角形の臺があってその四隅に鉄柱が立っていたりと、いろんな機械が置かれており、結構ごちゃごちゃしたじがする。
「使うのはこれよ」
そしてその中の一つ、さっき例をあげた四角形の舞臺と、その四隅に鉄柱が立っている裝置の前で立っていた。
どうやらすでに起して設定を終えてあるみたいだな。
「あー、懐かしいな。……つっても、まだ四年ちょっとしか経ってねえけど」
「使ったことあるみたいね」
「まあまあな」
授業でも使ったが、それ以外にも一時期はここに通ったもんだ。
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何度かやってコツを摑んだら、もういいやと來なくなったが。
「なら説明はいらないでしょ。さっさとやってちょうだい」
「それは構わないが、先に聞かせろ。どれくらい耐えたら合格なんだ? 制限はあるのか?」
「十五分耐えなさい。それができたら認めてあげる。それから、制限はないわ。制限なんてかけたら、あんたはすぐに終わりそうだし」
この機械は十五分耐えれば一人前的な判斷がされる機械だ。多分それを基準にしたんだろう。
問題は設定がどの程度かってことだが……。
「十五分か。まあその程度ならなんとかなるか」
そう呟きながらリングのそばに用意されていた刃引きした剣のうち一本を選んで手に取ると、それを持ってリングの中央に向かう。
だが、そんな俺の言葉や態度が気にらなかったのか、すれ違った時の淺田の表は不機嫌そうなものだった。
「始めてくれ」
淺田は俺の言葉になんの反応も示さずにただ無言で機械を作した。
そして、四隅に立っていた鉄柱からゴム球が飛んできた。
そのまま立っていればぶつかる軌道だが、ぶつかる理由はないのでスッとをかして避ける。
俺に避けられたことで背後に飛んで行ったゴム球は、そのまま進めば遠くへ行ってしまう。
だが、現実はそうはならずに見えない壁に止められたかのように跳ね返り、コロコロと地面を転がった。
まあ止められたかのように、ってじ、実際に見えない壁があるんだけどな。
そしてその球は外縁部にあるにたどり著くと、そのに沿って転がっていき、鉄柱へと回収される。
だが、それを最後まで見屆ける前に新たな球が先ほどとは違う柱から吐き出された。
これはこういう裝置だ。簡単に、すっっっっっっっごく簡単に言えば、超強化したバッティングセンターもどきみたいなもんだ。
飛んでくる球を返すか避けるかする。違うのはどれだけ打てたかではなく、どれだけ耐えられたのか、だけど。
そしてもう一つバッティングセンターとは違うのは、飛んで來る球の設定が一定じゃないってことと、飛んでくる発點が複數あるってことだな。
この裝置、四隅を柱で囲まれているわけだが、その柱のどこから飛んでくるのかランダムになっている上、飛んでくる球も、速度、軌道、タイミング、全てがランダムなのだ。
加えて言えば、天井も壁も囲まれているので當然ながらバウンドする。
そしてそれが時間が経つごとに同時に出てくる球の數が増えていく。
これはそんな『前衛用』の特訓裝置だ。
本來後衛である俺に使うようなものではない。
だが、俺はその吐き出される球の全てを避けていく。
「すごい……」
「まるで、攻撃がどこに來るか分かってるみたい……」
「……」
「な、なんでよ……。もう十分経つのに、まだ一つも當たらないなんて……」
「も、もしかして、どこに來るか機械の設定を知ってるのかな?」
「それはない。これは完全なランダム。ランダムでもパターンを出そうと思えば出せるかもしれないけど、それはそれであの人の能力」
「そうね。もし本當にそんなことができるほどの頭を持ってるのなら、三級だとか特級だとか関係なしに仲間にしたい能力よね」
宮野たちはそんな風に話しているが、これは別にランダムの設定を読んでいるわけではない。
ちょっと小細工させてもらっているが、俺の実力だ。
「でも……多分違う」
「え?」
え? 違うって……もしかして気づいたのか? 噓だろ?
「晴華ちゃん? 違うって、何がなの?」
「あの人が避けてるのは、ランダムのパターンを割り出したからじゃない」
「ハッキリ言うってことは、何か拠があるの?」
「すごく綺麗」
「「「?」」」
宮野、北原、淺田の三人は気づいていないみたいだが、安倍は確実に気がついてるな、これ。
なんでだ? 見えないはずなんだけどな……。
「確かに踴ってるように見えるものね」
「違う。そうじゃなくて、魔力」
「魔力?」
「あの人がくたびに、あの人の周りに魔力の粒が舞ってる。それが綺麗」
「魔力の粒?」
「……そんなの見えないわよ?」
「私も見えない……」
「すごく薄いから、多分魔法使い系の人じゃないと無理」
魔法使い系でも普通は見えないと思うんだけどなぁ。
「でも、綺麗なのはわかったけど、それが避けてるのになんの関係があるのよ」
「…………多分だけど、あの魔力の粒に當たると、當たったことがわかるようになってる」
「それは、えっと……つまり死角からの攻撃を潰せるってこと?」
「そうだと思う」
そんな話を聞きながら、俺は飛んでくる球を避け続ける。
時には持っている剣で弾いたりもするが、基本的には避けだ。
まあその避けるってのもカッコよくスタイリッシュに、ではなく無様に転がるようにして、だけど。
「これで終わりか……あー、だりぃ。まじ疲れたぁ」
そんなこんなで避け続けていたのだが、そろそろ三十分は超えただろうと言うあたりでギブアップを宣言した。
「記録は……ああ、三十四分か。あと一分で切りがよかったんだが、まあいいか」
本気出して全力で頑張れば一時間……や、もうちょっとか? 気合出せば二時間くらいなら保つか。
だがこれは命がかかった戦いってわけでもないし、そこまでやる必要もないだろう。
「で、どうよ。十五分耐えたけど、まだ何かやるか?」
リングから降りた俺は、この前衛用の裝置に挑ませた張本人である淺田の元へと歩來ながら問いかける。
「……あんた、三級のはずでしょ? なのにどうしてそんなに強いのよ」
「あ? 強くはねえだろ。今俺が戦ってたの見てなかったのか?」
「見てたわよ! 見てたから聞いてるんじゃない!」
そんな淺田の言葉に、宮野と北原と安部……はどうだろうな? まあ安部はわからないがなくとも他の二人はうなずいている。
「強くない? どの口が言ってんのよ! 今の設定は私でさえに十分程度しかもたなかった! なのにあんたはどうして三十分も耐えてるのよ! それで強くない? じゃあ私はどうなんのよ! あんたより弱いっての!?」
淺田は俺が強いと言っているが、こいつらは勘違いをしている。
「……はぁ。まず言っておくが、強くないことと弱いことは別もんだ。強いってのはどんな危機でも乗り越えることができるやつのことを言うが、俺は危機なんて乗り越えられない。々が危機から逃げ出すことが一杯だ」
「だから強くない?」
「そうだ。危機を乗り越えることができないから『強くない』が、だからって死ぬほど『弱い』わけじゃない。言っちまえば、俺は生存特化型の戦いをしてるだけだ。勝つも負けるも関係ない。ただ自分たちが生き殘るためだけの戦いだ。純粋な戦闘力って意味なら、お前達の誰にも勝てないだろうよ……いや、だろうってか、確実に勝てない」
俺がそう言うと、四人は何も言えないようで黙っている。
とはいえ、そのままでは話が進まないので、俺は自分から切り出すことにした。
「で、俺の加はどうだ」
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