《[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!》『白騎士』
「あら、宮野さんたち他のメンバーはどうされたのですの?」
「あ? ああ、あんたか。あー、一応今日はよろしく」
ゲート前に行くと、すでにそこには相手……天智飛鳥というとそのチームが待機していた。
こいつらはゲーム前の接を警戒したりしないんだろうか?
俺がヘラヘラと戦い前にはふさわしくない様子で笑いながら手を差し出すと、天智は眉を寄せたが試合前の禮儀だとでも思ったのか手を握り返してきた。
そして俺は天智のチームメンバー達にも同様に握手をして行ったのだが、見た目だけだと子高生と握手したいだけのおっさんに見えないか、これ?
……いや違う、大丈夫だ。気にするな。
「で、なんだったか……ああ、あいつらはどうしたか、だったな。だがどうしたって言われても、知らんよ。俺はあいつらに嫌われてるからな」
「……嫌われてる?」
「ああ。あー……まあいいか。俺はな、元々あいつらのチームにるつもりはなかったんだよ。教導なんてめんどくせえことはするつもりがなかったからな」
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実際にはどう思われてるかなんてわからないが、俺はいかにもどうでもいいことを愚癡るかのようにダラダラと話していく。
「ではなぜ今、宮野さんたちと行を共にしているのでしょうか?」
「冒険者になると五年間はダンジョンに潛らないといけない縛り……通稱『お勤め』があんだろ? 俺はそれを果たすためにダンジョンに潛ってたんだが、その五年も後わずかって時にチームが解散してな。まあ俺以外のメンバーはお勤め終わってたし、もう歳も結構いってたからな。仕方ねえっちゃ仕方ねえ」
話していくと、それを聞いている天智の表がわずかにだが不機嫌そうに歪められている。
自分が求めても組んでもらえないのに、俺みたいな奴が組んでるのが気にらないんだろうか?
「んでまあ、そんな時に試験だが病気で一人メンバーが足りないあいつらと會ったんだ。あいつらは數合わせでいいからメンバーを探してたが、その日は運が悪いことに同時に複數のダンジョンが見つかったせいで組合に人がいなかった。いたのは俺だけ」
「だからあなたと組んだと?」
ここまでの話に噓はない。
実際みんな歳いってたし、解散したのも本當だ。仮にこいつらが俺のことを調べてたとしても、そのことは間違いではないと分かるだけだ。
だが、ここからはし違う。
さあ、真面目に戦う気のお前らには悪いが、ちょっと化かされてもらうぞ。
「ああ。こっちも人が必要だったからな。ただまあ、無理やりやらされてるだけあって俺はやる気がねえ。そんな態度が気にらなかったんだろうよ」
「……それはわかりました。ですが、ではなぜ今も彼たちはあなたと? 嫌っているのでしょう?」
「それが 最初の契約だからだ。俺がお勤めを終えるまではあいつらのチームにれてくれってな。その代わり數合わせとして參加してやるって」
「それであなたのような足手纏いを……」
天智はそんな俺の言葉を聞いて、それまでのように隠しきれずに滲んだ不愉快さではなく、明確に侮蔑の籠った眼差しを俺に向けた。
「おいおい、これでも年上だぞ? 足手纏いと思うのは勝手だが、しは気ぃ使って外面だけでも敬意を払えよ」
「私が敬意を払うのは、それに値するだけの果を出した方のみです」
「俺はダメか?」
俺は天智の言葉も態度も特に気にした様子もなく、いまだにヘラりと笑っている。そのことが余計に気にらないんだろう。吐き出される言葉の語調が強くなっている。
俺のことが気にらないにしてもちっとばかし短気が過ぎると思うが……俺にとっては丁度いい。いや、俺〝たち〟にとって、か。
「ではお聞きしますが、尊敬に値するなにをなされましたか?」
「尊敬ねぇ……なんもねえな。ははっ」
「……ならば、私のあなたへの態度が変わることはありません」
「そうかい。そりゃあざん──」
「宮野さんたちがいらしたので失禮いたします。挨拶をしなければなりませんので」
俺が最後まで言葉を紡ぐ前に、これ以上は聞いていられないとばかりに、天智はたった今ゲート前にやってきて俺たちのことを遠巻きに見ていた宮野達の方へと歩いて行った。
「隨分と嫌われたもんだな」
誰にいうつもりでもなかった単なる獨り言だったのだが、それに反応した人がいた。
「お嬢さんは生まれもあって々冒険者というものに真面目すぎるんです。失禮な點は多々ありますが、多めに見ていただけると助かります」
「あ? ……まあ子供の言葉だ。それくらいは気にするつもりもないが……誰だ?」
聲のした方へと視線を向けると、そこには天智たちの後ろで立っていたスーツ姿の男がいた。
「失禮しました。私は工藤俊。天智飛鳥お嬢さんの護衛兼教導を務めている者です」
「ああ、あいつの。そりゃあ大変だろうな。俺は伊上浩介だ。よろし──なんだって?」
丁寧な挨拶をけて俺も挨拶を返すが、その途中であることに気がついた。
「どうかされましたか?」
「……お前、工藤俊っつったか?」
「はい。……やっぱりわかりますか?」
「まあな。冒険者で『お前ら』を知らない奴は一度脳みその中洗い流してもう一度詰め込み直したほうがいい」
そんな俺の言葉に、目の前の男——工藤は苦笑を浮かべている。
だが、俺からしたらそんな苦笑いで済むようなことではない。
なんだってこんな奴がこんなところにいんだよ。護衛ってのは今聞いたが、お前は護衛をするような奴じゃないだろうがっ。
「特級冒険者の『白騎士』が、まさか子供のお守りをしてるとはな」
そう。こいつは世界で一握りしかいない特級の冒険者だ。確か歳は……今だと二十五くらいか?
俺のいるチームには宮野がいるし、今回の相手には天智がいるからそこらへんに溢れているようにじるかもしれないが、実際にはそうそう會えるものではない。
今はこいつの代名詞になった真っ白な鎧を著ていないが、その力そのものは変わっていないだろう。
「そういやあ數年前に……三年前くらいだったか? 確かそれくらいに冒険者を辭めたって聞いたような覚えもあったな」
「はい。確かに三年前に私は冒険者を辭めました。……いえ、正確には辭めざるを得なかった」
「……怪我か?」
「どちらかと言うと呪いでしょうか? 一級の者に頼んでみたのですが……」
工藤はそう言いながら諦めたような笑みで緩く首を振った。
「私も特級だ『白騎士』だ、なんて言われて調子に乗っていたんでしょうね。々油斷してこのざまです。今では以前のようには戦えない」
「かの『白騎士』様がねぇ……」
呪いか……そればっかりはどうしようもないな。
怪我なら治癒師が治せる。時間が経って定著した怪我は階級の低い治癒師だと治せないが、特級の治癒師なら問題なく治せる。金はかかるが、こいつだって特級なんだからそれくらいは払えただろう。
だが、呪いとなると話は別だ。
呪いには冒険者と同じように三級から特級までの階級がある。加えて、さらに細かく分類されるわけだが、その呪いよりも階級がうえで、なおかつ扱う呪いの分類が一致している者ではないと呪いは解くことはできない。
今の話ぶりからしてこいつにかけられた呪いは特級。
しかし、今の世界には特級の解呪を行なえる奴はいない。
正確にはいることはいるのだが、滅多に表に出てこないのでいかに特級のこいつでも捕まえることはできなかったんだろう。
「ですが、私よりもあなたの方が有名ではないですか?」
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