《【書籍化】白の平民魔法使い【第十部前編更新開始】》45.侵攻
目覚めたものの山の巨人はきを見せない。
ただベラルタの方角を見たまま不気味に佇んでいるが、その姿すら何か意味があるようにじる。
巨人の表面に生い茂る森からは目覚めた際の挙に耐えきれない葉を舞い散らせ、枝や葉も普段とは違う方向にびている。
しかし表面に付いた木々たちは重力に負けることなく巨人からそのを手放さない。
長した木々が真橫にびていて、騙し絵のような不思議な景が目に映るが、巨人の存在がその錯覚を許さなかった。
むしろ大抵の人間は山と同じくらいの大きさの巨人がいるという事実の方が錯覚であればいいと強く願うだろう。
「ふむ、目覚めたばかりでまだ魔力が馴染んでいないのかな?」
何にせよ、この巨人がかないのはミスティとルクスにとっては好都合。
この巨人がけば戦いへの集中は嫌でも削がれる。
頭部こそベラルタを見ているようだが、気まぐれにその腕がこの山に振り下ろされる可能もある。
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「ルクスさん」
「『雷鳴一夜(らいめいいちや)』」
だからこそこの場をどれだけ時間をかけずに制することが出來るかが重要となる。
ミスティが名を呼ぶとともにルクスは自に補助魔法をかけた。
雷屬の補助魔法だ。
「……?」
「聞かぬ魔法だ」
ルクスがかけた魔法は補助魔法、強化の類だという事はわかるが、聞いたことの無い雰囲気の魔法にルホルと老人はし警戒を強める。
「お願いします」
「任せてくれ」
だが、ルクスはこちらに向かうでもなく山を下りていく。
確かに足元が整っていなくとも強化魔法をかけて下山すれば時間は大幅に短できる。
し加減を間違えれば足をとられて大事故になるだろうが、ルクスならばそんなミスもありえまい。
「雷屬……それなら僕が相手するべきだが……」
ルホルは正面のミスティに目をやる。
冬に吹く風のように冷たい目。そして何の魔法を唱えるかわからない閉じた口。
目を離した瞬間、このは自を殺す為の魔法を唱えるという確信があった。
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これに背を向ける自殺行為を魔法使いの自分のが許しはしない。
「そちらは任せたよ、執事」
ルホルが言わずとも、執事と呼ばれた老人はルクスを追いかける。
すでに友人は自分の裏切りを看破しているというさっきの言葉が本當なら逃がして困るのはむしろ自分達だ。
とはいえ、互いに互いを逃がすメリットはない。
こちらは言うに及ばず、あちらとて仲間が気付いているのだとしたら、ベラルタに向かう仲間を自分達に追われることは避けたいだろう。
ルクスが逃げる気ではないだろうという事はルホルにもわかっていた。
「さて、何故分斷しようと思ったのかな?」
「あら、おわかりになりません?」
「まぁ、一対一のほうがやりやすい魔法使いというのは珍しくないからね。どうしても連攜しにくい魔法傾向ってのはあるものさ」
「ふふ、そんな理由ではございません」
ルホルの的外れな回答にミスティはつい笑ってしまう。
まるで馬鹿にしたような一笑にルホルは一瞬、頭にを上らせる、が――。
「私があなたを嫌いだからに決まっているじゃありませんか」
そのは急速に引いていく。
その笑顔はしいの可憐なものであるはずなのに、作りのようだった。
「『十三の氷柱(トレイスカクルスタロ)』」
ミスティは威力の低い魔法での牽制など考えていない。
巨人を刺激しない程度に、そして目の前の男を八つ裂きにできる魔法を選択する。
水屬の中位魔法。
人間大の氷柱がミスティの頭上に出現する。
その數は十三。
これから降り注ぐと予告するように、その鋭い先はルホルのほうに向いていた。
「いやはや、容赦がない」
普通ならば避けられない魔法でもない。
だが、今は足場がいいとはいえない山の中。
緩やかな傾斜は足から普段とは違う覚をに伝える。
木々を盾にしてもあの氷柱が木を貫けないなんて保証はない。
必然、ルホルの選択は迎撃か防になる。
「『浮遊土壁(フロートウォール)』」
ルホルが選択したのは防。
唱えると共に土の壁がルホルの周囲を囲む。
ルホルは地屬の防魔法を展開して氷柱に備えた。
「予想はしていましたが、やはり地屬ですか」
スクリル・ウートルザを尊敬しているという発言と、巨人の出現の興から屬の予想はできていた。
後は魔法が不得手という噂の真偽のみ。
どちらでも油斷などできない。
どんな名家に生まれようがこちらは魔法使いの卵。今魔法使いとして立つルホルを甘く見ることなどできるはずもない。
才は無い、とルホルは自を語っていた。
しかし、才が無くともある程度のレベルに達することはできる。
何より、スクリル・ウートルザを尊敬しているものが果たして魔法の修練を怠るとは思えなかった。
「いきなさい」
合図とともに氷柱はルホルへと降り注ぐ。
次々と向かってくる氷柱をその土の壁は防する。
だが――
「ぐっ……!」
防ぎきれるわけではない。
僅かにミスティの魔法の現実への影響力が高く、連続して降り注いだ氷柱の最後の一本がその土の壁を破壊してルホルの肩をかすった。
氷柱は高価な服を破り、ルホルの皮を裂く。
「流石はカエシウス家といったところだね……!」
「『執著の水蛇(カロスオピス)』」
防がれたことに何も思うようなことはないように、ミスティは次の魔法を唱える。
ミスティのに巻きつくように、そして緩慢なきで現れた水の蛇。
ゆっくりとしたきを見せていた水の蛇はルホルのほうに目を向けた瞬間、発臺があるかのように、飛び掛かる。
「『大地の蛇(アースサーペント)』」
今度は迎撃。
ルホルは同じような魔法で対抗する。
土の蛇と水の蛇。共に中位魔法であり、魔法のサイズは同じくらいだが威力は歴然。
しぶつかりあうと、土の蛇は水の蛇にを噛み砕かれて土くれとなり、土くれはやがて魔力を失い消えていく。
余力を殘した水の蛇はそのままルホルに襲い掛かる。
「『降落巖(ボウルダ)』!」
放出した巨大な丸石をぶつけるだけの単純な魔法が水の蛇の頭上から落とす。
水の蛇の頭上に巖が落ち、水の蛇は弾けて水しぶきへと変わった。
「『水流の渦(アクアストーム)』」
魔法が破られてもミスティは次の魔法を唱え続ける。
魔法をぶつけ続ければいつか勝てると理解しているように。
今度は水の渦をぶつけるという単純な中位魔法。
しかし、速度と威力は十分だ。
「構築速度に現実への影響力……うんうん、やはりまともな魔法戦では敵いそうにないなぁ……」
二度の魔法のぶつかりあいは互いに中位魔法を使っての応酬。
二度ぶつかって二度ともルホルの魔法が破られたとあれば、なくとも魔法の強さはミスティのほうが上という事だ。
戦力差を理解し、ルホルは自分の指にはめている指の一つに口づけをする。
自分に酔った者の行のようにも見えるそれも魔法としては意味を持つ。
指は魔力を通して淡く輝く。
次にルホルが唱える魔法の為に。
「『召喚・土人形(サモン・クレイマン)』」
「!!」
ミスティの唱えた魔法はルホルの周囲の地面から生えてきた(・・・・・)人型の土によって防がれる。
それは人型ではあるが見た目に巧さもなく、人形としては一目で拙いものだとわかる。
一ならばミスティの魔法に対抗するなど不可能だが、ルホルの周囲から生えてきたそれは七。
その七が重なるようにミスティの魔法に立ちはだかった。
六までは無殘に砕かれ、七目が完全にその魔法の威力をけ止め、ルホルのところまでミスティの魔法は屆かない。
そこでようやくミスティの表は変わる。
「"人造人形(ゴーレム)"……!」
「さあさあ、ミスティ殿! "人造人形師(ゴーレムサモナー)"と戦うのは初めてかな?」
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