《【書籍化】白の平民魔法使い【第十部前編更新開始】》78.未知の敵
「おい、なんで――!」
マキビは驚きを聲にし、
アルムとルクスは走り出した。
滝の落ちる音と巖を駆ける音がマキビの聲を遮る。
スピードはルクスのが上。
先にマキビに到達し、その駆けたスピードのまま腹部へと蹴り込む。
「くっ……!」
足のきから狙いを推測し、マキビはルクスの蹴りを跳んでかわす。
自を強化せずともかわせるのは當然だ。
マキビは魔法使い。
強化によってきが早くなった敵など見慣れている。
ましてやルクスは知識のないマナリルの魔法とは違って、マキビの見知った魔法(・・・・・・)を使っていた。
「『咬亀(かがめ)』」
ルクスをやり過ごしたマキビはその一瞬で魔法を唱える。
ルクスの影から飛び出す白い獣はその様相を見た。
ただ水を纏ったように見える丸いフォルムだが、それは間違いなく生を模している。
アルムにも近なその生きは亀だった。
特徴的な四足と背の甲羅。
一瞬。見知らぬ魔法と見知ったイメージが重なり、思考が割かれる。
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「獣化か」
敵の魔法が何たるかを判斷してもアルムはその爪をばす。
今の狀態でこの爪がこの獣化を貫くことはまずできない。それはこの魔法を作り上げたアルムが一番よくわかっている。
攻撃の予定だった片手の三本の爪は撒き餌だ。
獣化のモチーフが亀だったとして、そのきがわからない。
水中以外での鈍いイメージが果たしてこの魔法にあてはまるのか――
「馬鹿が!」
「!!」
聲とともにマキビは水を纏う手でアルムの爪を迎撃する。
結果、マキビが振るったその手はアルムの爪をいとも簡単に破壊した。
魔力の爪ゆえ痛覚は無い。
その水は亀の前足を象り、自の魔法を裂いていたのをアルムは確認する。
「あ!?」
驚きの聲を上げるのはアルムではなくマキビ。
亀は捕食者だ。
自の數倍の重量を運ぶことが可能なほど力は強く、その足には爪のある種もおり、顎の咬合力は有名かもしれない。
マキビの魔法は亀の捕食者としての特徴を前面に現実への影響力としてのせている。
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自の魔法の腕はそれなりにある事も自覚しており、この魔法の完度が高い自負がある。
だが――同じように獣化魔法で作られた爪を々にできるほど圧倒的だとは思えない。
目の前の男の白い爪と牙から明らかに食獣、または魔獣を模している獣化魔法を使っているはず。
だというのに、その強度が余りに脆すぎる事がマキビに困をもたらす。
「それも無屬かよ! なんなんだお前!?」
もう一人の敵であるルクスの魔法の完度が高いゆえにマキビは困する。
同じ制服を著ている癖にいくらなんでも差がありすぎると。
気付けばその違和ばかりを作り出す子供にマキビは無意味な問いを投げかけていた。
「アルムです」
そんな問いをアルムは馬鹿正直に名前で答えた。
「そういう事じゃねえよ!」
即答するアルムに苛立つマキビ。
どう返ってくれば満足だったのかはマキビ自もわかっていない。
「『雷の矢(グロムストリエ)』」
その疑問が解消されるまで待つほどルクスはお人好しではない。
魔法を唱え、ルクスは指差すマキビの背に向けて巨大な雷の矢を放つ。
マキビは背を向けたまま振り向こうとしない。
――それも當然。
「む」
一點を貫くはずのルクスの魔法はマキビの背を守る水に弾かれ拡散する。
マキビが今使っている獣化のモチーフは亀。
背中の防力こそ、この魔法の本領だ。
「いって……! くそが!」
魔法そのものは防ぎ切ったものの、雷の特で本のマキビに一瞬痛みが走る。
しかしそんな痛みで魔法使いが怯むはずも無い。
即座にマキビはルクスのほうに顔を向けた。
「"咬め"!」
聲とともに顔に當たる部分の水が突如ルクスへとびていく。
水は亀の顎の形を作り、ルクスへと襲い掛かった。
「……もうちょっと……」
不満とともに一閃。
アルムは回り込んで、そのびた亀の首?に當たる部分を両手合わせて六本の爪を総員して下の巖へと叩きつける。
切斷こそできないものの、ルクスのもとにその顎が屆く事は無い。
獣化は魔法だが、使い手のにある事で効力を発揮する魔法。びるような力があったとしても限界がある。
首を切って首だけをルクスに襲わせるような事はできない。
「ちっ……! 『蒼髭(あおひげ)』!」
仕方なくマキビは魔法を切り替える。
防能力が高いとはいえ首を抑えられた狀態でルクスの相手をするのは難しいと判斷し、獣化を解いた。
ミスティの魔法を叩き落とした二本の水の鞭。
扱いやすく、それでいて威力もあるマキビの得意な中位の水屬魔法。
その二本の鞭をもって、目障りなアルムのほうを狙う。
「さっきのやつだな」
しなる水の鞭に白い爪でアルムは迎え撃つ。
「そんなボロで防げるかよ!」
「今なら防げる」
アルムの使っている魔法『幻獣刻印(エピゾクティノス)』は魔力をつぎ込む事によって過剰魔力による魔獣の狂暴化を人間で再現し、意図的に暴走させる魔法である。
意図的に人間を暴走させる量の魔力を魔法につぎ込むのは時間がかかる。
ゆえに唱えてからしの間、その力をほとんど発揮できない。
唱えたばかりの狀態ではその爪も硝子細工のように脆い強度だ。
「な――!?」
だが、そのしが過ぎれば、この魔法はつぎ込まれた魔力によってその真価を発揮する。
強度、速力、そして攻撃力は唱えた時點でのそれとは比べにならない。
アルムの宣言通り、マキビがる鞭をアルムは白い爪を振るって切り裂いていく。
しなる水の鞭を切る、切る、切る。
上から、右から、巻き付くように、どういてもアルムの目と警戒網をマキビの魔法はかいくぐれない。
ひとつ前の攻防ではまだ鈍らだった六本の爪はようやく魔法としての脅威に至る。
不規則な鞭の軌道をアルムは正確にその爪で捉え、そのままマキビへの距離を徐々に詰めていく。
「この……!」
苛立ちが加速する。
さっきは軽く砕けていたはずの白い爪が今度は蒼髭を防ぎ、そして切り裂いている。
別の強化を唱えたのか?
はたまた似ている別の獣化魔法を使ったのか?
脳に押し寄せる疑問に答えは出ない。
"というか、何でその爪再生してんだよ――!"
獣化の首を抑えつけられた時に持つべき疑問までもが今更マキビの脳に浮上する。
同時に、未知に対して抱く高揚にマキビは笑っていた。
「『流神ノ尾(りゅうじんのお)』!」
その笑みでマキビは次の魔法を繰り出す。
繰り出すのは水で作られた巨大な剣、のような尾。
鱗まで再現された爬蟲類の尾のような魔法は今までマキビが使っていた魔法とは違う。
高揚は苛立ちによってれた神力を無理矢理修正し、さらには今までより質の高い"変換"を可能にするところまでマキビを引き上げる。
その鋭さと細微に構築された現実への影響力を持ってアルムとルクスに危機を察知させていた。
「これはまずい……!」
魔法をその目で捉えた瞬間、ルクスは強化の能力を持って離れる。
「綺麗だな……」
見知らぬ魔法にアルムはつい小さく笑みを浮かべる。
マキビはその巨大な尾をその笑みに振り下ろす。
彼のむ形では無かったが、この場での決著はすぐにつくこととなった。
エルミラさんはめっちゃ恐い顔しながら森の中からの奇襲とマキビどっちも警戒してます。
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