《【電子書籍化】神託のせいで修道やめて嫁ぐことになりました〜聡明なる王子様は実のところ超溺してくるお方です〜》第七話 生まれて初めて啖呵を切る
私は男を知らない。そもそも、城にいたときだって遠目に騎士を見るくらいで、ろくに會話もしたことがない。修道院でだって、私は修道だから男のほうが気を遣ってあまり積極的に話しかけようとしなかった。男だろうがだろうが人間と接することのない辺境の修道院で、私は老修道ヨルギアとともに十年間を過ごした。
そんな私でも、ポリーナの発言が無禮にすぎることは分かる。ポリーナが私を陥れ、笑いものにし、弄ぶためにそのようなことをしているのだろうと理解している。
だけど、こればかりは看過できない。ポリーナはやりすぎた。人生も何もかもどうでもいいはずの私の心に、仄暗くも激しい怒りの火を燈すほどに、言葉がすぎたのだ。
私は、自分の口から吐かれた言葉が、想像以上に冷たくじられた。
「ポリーナ様」
「何?」
「私を罵られることはけっこうです。聞き流しましょう」
「罵るだなんて、人聞きの悪い」
「ですけども。アサナシオス王子殿下を貶すということなら、私はこれを斷じて許容することはできません」
ポリーナの顔が変わった。いかに貴族の箱り娘とはいえ、ステュクス王國の強大さは知っているし、王子のはるか高き尊き分を重んじない、と公言することの無謀さを理解しているはずだ。
しかし何より、妻が何の瑕疵もない夫を擁護しない、ということはあり得ないのだと、彼は知らなかったらしい。
ポリーナは明らかに目を泳がせていた。それでも過ぎた言葉はやめない。
「あ、あら、會ったこともない殿方を、いたく庇うものですわね」
「たとえ面識がなくとも、アサナシオス王子殿下は私の夫となる方です。ならば、私は夫の名譽を守らねばなりません。そして、貴族の淑たるあなたが、男の仲や営みについて開け広げに語ることは、あまりにも軽薄でら。ウラノス公の娘として、恥ずかしくはございませんか?」
一つ一つ、靜かにナイフで斬り込まれるかのように、私の言葉がポリーナのプライドを傷つけていったのだろう。
後ろのメイドが顔を真っ青に、そしてポリーナは反対に顔を真っ赤にしている。何を言っても反論しないおもちゃに、よりによって自らの貴族の子としての面を論(あげつら)って思いっきり言い返され、ポリーナは瞬間的に怒りが頂點に達したのだろう。
ついに、ポリーナは私の頬へ、平手打ちを食らわせた。唾が飛び散るほどに、喚く。
「黙りなさい、手違いで生まれた娘のくせして! お父様は取りろうとするあなたの母に誑かされ、間違いを犯してしまったのですわ! ふん、結局あなたが生まれたところで、歓心を買うこともできずに無駄死にしたようですけれど!」
私は頬を押さえることもせず、真正面からポリーナを睨みつけた。不思議と、心は平靜で、こう認識していた。
目の前のは私と私の母と私の夫の名譽を傷つけんとする者であり、私はこれに対抗せねばならない、と。
つまりは、ポリーナは私の敵だった。
私は心を落ち著けて、生まれて初めて啖呵を切る。
「何が無駄かは、これから証(あか)してみせましょうか」
メイドたちがポリーナの腕を摑み、後ろに下がらせようとしている。
ポリーナは捨て臺詞よろしく、びながら去っていく。
「できるものならやってみなさいな! ああ忌々しい、気分の悪い娘! さっさとどこへなりとも行ってしまいなさい!」
自分から會いにきたのだろうに。
私はそんな言葉を飲み込み、一禮をして顔を背けた。
6/15発売【書籍化】番外編2本完結「わたしと隣の和菓子さま」(舊「和菓子さま 剣士さま」)
「わたしと隣の和菓子さま」は、アルファポリスさま主催、第三回青春小説大賞の読者賞受賞作品「和菓子さま 剣士さま」を改題した作品です。 2022年6月15日(偶然にも6/16の「和菓子の日」の前日)に、KADOKAWA富士見L文庫さまより刊行されました。書籍版は、戀愛風味を足して大幅に加筆修正を行いました。 書籍発行記念で番外編を2本掲載します。 1本目「青い柿、青い心」(3話完結) 2本目「嵐を呼ぶ水無月」(全7話完結) ♢♢♢ 高三でようやく青春することができた慶子さんと和菓子屋の若旦那(?)との未知との遭遇な物語。 物語は三月から始まり、ひと月ごとの読み切りで進んで行きます。 和菓子に魅せられた女の子の目を通して、季節の和菓子(上生菓子)も出てきます。 また、剣道部での様子や、そこでの仲間とのあれこれも展開していきます。 番外編の主人公は、慶子とその周りの人たちです。 ※2021年4月 「前に進む、鈴木學君の三月」(鈴木學) ※2021年5月 「ハザクラ、ハザクラ、桜餅」(柏木伸二郎 慶子父) ※2021年5月 「餡子嫌いの若鮎」(田中那美 學の実母) ※2021年6月 「青い柿 青い心」(呉田充 學と因縁のある剣道部の先輩) ※2021年6月「嵐を呼ぶ水無月」(慶子の大學生編& 學のミニミニ京都レポート)
8 193【書籍化&コミカライズ】小動物系令嬢は氷の王子に溺愛される
『氷の王子』と呼ばれるザヴァンニ王國第一王子ウィリアム・ザヴァンニ。 自分より弱い者に護られるなど考えられないと、実力で近衛騎士団副団長まで登り詰め、育成を始めた彼には浮いた噂一つなく。それによって心配した國王と王妃によって、ザヴァンニ王國の適齢期である伯爵家以上の令嬢達が集められ……。 視線を合わせることなく『コレでいい』と言われた伯爵令嬢は、いきなり第一王子の婚約者にされてしまいましたとさ。 ……って、そんなの納得出來ません。 何で私なんですか〜(泣) 【書籍化】ビーズログ文庫様にて 2020年5月15日、1巻発売 2020年11月14日、2巻発売 2021年6月15日、3巻発売 2022年1月15日、4巻発売 【コミカライズ】フロースコミック様にて 2022年1月17日、1巻発売 【金曜日更新】 ComicWalker https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_FL00202221010000_68/ 【金曜日更新】 ニコニコ靜畫https://seiga.nicovideo.jp/comic/52924
8 160骸骨魔術師のプレイ日記
全感覚沒入型VRデバイスが一般的に普及した未來。このデバイスはあらゆる分野で利用されており、それはゲーム業界でも同じである。人々はまるで異世界に迷いこんだか、あるいは近未來にタイムトラベルしたかのような経験が可能ということもあって、全世界であらゆるジャンルのVRゲームが飛ぶように売れていた。 そんな好調なVRゲーム市場に、一本の新作タイトルが舞い降りる。その名は『Free Species World』。煽り文句は『あらゆる種族に成れるファンタジー』であった。人間にも、獣にも、はたまた魔物にも成れるのだという。人型以外の姿を取ることが可能なVRゲームは世界初であったので、βテストの抽選は數千倍、製品版の予約は開始一秒で売り切れ狀態となっていた。 これは後に社會現象を起こす程に大人気となったVRゲームで悪役ロールプレイに撤し、一つの大陸を支配して名を轟かせたとある社會人のプレイ日記である。 ◆◇◆◇◆◇ GCノベルス様から書籍化致しました。書籍版のタイトルは『悪役希望の骸骨魔術師』です!
8 92発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。
「おめでとう!抽選の結果、君を異世界に送ることになったよ!」 「……抽選の結果って……」 『百鬼(なきり) 樹(いつき)』は高校生―――だった。 ある日、授業中に眠っていると不思議な光に包まれ、目が覚めると……白い空間にいた。 そこで女神を自稱する幼女に會い『異世界を救ってくれないか?』と頼まれる。 女神から『異世界転移特典』として『不思議な銃』をもらい、さらには『無限魔力』というチート能力、挙げ句の果てには『身體能力を底上げ』してまでもらい――― 「そうだな……危険な目には遭いたくないし、気が向いたら異世界を救うか」 ※魔法を使いたがる少女。観光マニアの僕っ娘。中二病の少女。ヤンデレお姫様。異世界から來た少女。ツッコミ女騎士、ドMマーメイドなど、本作品のヒロインはクセが強いです。 ※戦闘パート7割、ヒロインパート3割で作品を進めて行こうと思っています。 ※最近、銃の出番が少なくなっていますが、いつか強化する予定ですので……タイトル詐欺にならないように頑張ります。 ※この作品は、小説家になろうにも投稿しています。
8 116絶対守護者の學園生活記
子供を守るために自らを犠牲にし死んでしまった桐谷守(きりたにまもる)は神と名乗る存在によって異世界に転生をすることに。 守はレオンとして故郷となる村の人々の溫かさに觸れながら異世界で平和に過ごしていた。だがある日突然現れた男によって大事な人も場所も一瞬にして失ってしまう。――俺に皆を守れる力さえあれば――様々な負い目や責任を抱えたレオンはある目的で學園に通うことに。そこで美少女達に支えられながらも、レオンは世界の平和をかけた戦いに巻き込まれていく。普段はほのぼのイチャイチャたまにバトルという內容になっております。初作品なので文や設定に拙い所が多々あると思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。評価、ブックマーク、感想など貰えると、とても勵みになります。次回作『最強の元王子様は怠惰に過ごしたい?』もよろしくお願いします!
8 67究極の捕食者 ~チート融合スキルで世界最強~
七瀬素空(ななせすぞら)が所屬する3年1組は、勇者スキルを持つ少女に巻き込まれる形で異世界に召喚される。皆が《炎魔法》や《剣聖》など格好いいスキルを手に入れる中、《融合》という訳のわからないスキルを手に入れた素空。 武器を融合させればゴミに変え、モンスターを融合させれば敵を強化するだけに終わる。能力も低く、素空は次第にクラスから孤立していった。 しかし、クラスを全滅させるほどの強敵が現れた時、素空は最悪の手段をとってしまう。それはモンスターと自分自身との融合――。 様々なモンスターを自分自身に融合し自分を強化していく素空は、いつしか最強の存在になっていた――。 *** 小説家になろうでも同様のタイトルで連載しております。
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