《【電子書籍化】神託のせいで修道やめて嫁ぐことになりました〜聡明なる王子様は実のところ超溺してくるお方です〜》第十八話 拳一つ
「むかしむかし、あるが主神ステュクスに戦いを挑みました」
「え?」
「結果、引き分けでした」
「えっ?」
「主神ステュクスはそれ以來地上から姿を消し、用意された神域アルケ・ト・アペイロンにのみ現れ、神託を降すようになりました」
それは、ちょっとだけ聞いたことのある話だ。千四百年前、ステュクス王國が立したのち、各地の神々を祀る神殿は神託を降さなくなった、なくとも預言に関しては形式上の存在になった。それは神域アルケ・ト・アペイロンの存在が大きく、人々は神域アルケ・ト・アペイロンを所有し主神ステュクスの神託をけられるステュクス王國を尊敬するようになった、そういう話——の、前の段階だろうと思う。
それにしても、主神ステュクスに戦いを挑む、しかも引き分けたというのだから、凄まじい話だ。
「そのというのがステュクス王國初代王ディミトゥラで、主神ステュクスに戦いを挑んだ理由は悟ったからだ」
「悟った、とは?」
「神を信じて祈ったことが無駄だった、と」
サナシスは、やれやれ、とばかりの口調で話す。
「王ディミトゥラは祖國で巫の神託の預言のせいで不義の子として迫害され、行く先々では神に訴え、己の不名譽を回復させようとした。ところが神々は主神ステュクスの預言だと偽り、自分たちでは覆せないと言った。だから主神ステュクスに戦いを挑み、神託を撤回させることと、下らない神に祈らせられることをやめさせる……そういうことを掲げた」
おそらくは、その時代においてはとても先進的で、神が近だった時代を終わらせることに繋がったのだろう。々な思はあっても、ディミトゥラは自分を救わない神に文句を言えるほど強いだった。ただ神を信じたくない、祈りを嫌う私とは、大違いだ。
「正直言えば、主神ステュクスはとばっちりだが」
「はい、そうですね」
「それでも、神託が氾濫して人間をわせるのはよくない、ということになって、それ以來、王ディミトゥラと約した主神ステュクスの神託だけが重んじられるようになった。以降、ステュクス王國以外の國家が、神の名の下に政治を行うことはできなくなった。そしてステュクス王國は大陸全土にその権威を拡大させていき、ほんの二十年前にやっとすべての國家へその威を認めさせた」
私を抱きしめたまま、サナシスは難しい話をらかく語る。どう私に理解させようか、工夫しようとしたのだろう。本當は伝承ならもっと小難しい話がたくさんあって、ややこしいことも多いが、そのあたりはサナシスはすっぱり切り捨てて分かりやすくしてくれた。
「お前は王ディミトゥラと々と共通點があるし、何よりその人格は高潔だ。人間は噓を吐くものだが、お前は噓を吐かなかった。俺を騙そうとしなかった。言わなくていいこともあったのに、すべて包み隠さず話した」
そう真っ直ぐに褒められると、私も恥ずかしい。ただ全部話しただけだ、と謙遜したいのに、それもサナシスに失禮かと思って私は言葉を引っ込める。
「ひょっとすると、主神ステュクスは王ディミトゥラの再來となって自分の敵になる前に、お前を懐したのかもしれないな。ははは、冗談だ、お前が拳一つで神に挑むとは思っていない」
「拳一つで挑んだのですか……?」
「そういう伝承だ」
何だか恐ろしい話だ。私との共通點はそれほど多くない、私は拳一つで神に挑めたりしない。ちょっとだけそこは私も不満だった。
このとき、私はまったく実は湧いていなかったけど、どうやら私(・)た(・)ち(・)以(・)外(・)の(・)人(・)々(・)の(・)間(・)では、そういう話になりそうだった。それはまだ、私は知らない。
——一方、そのころ。
【書籍化作品】離婚屆を出す朝に…
書籍化作品です。 加筆修正した書籍のほうは、書店での購入は難しいですがネットではまだ購入できると思いますので、興味を持たれた方はそちらも手に取って頂ければ嬉しいです。 こちらのWEB版は、誤字脫字や伏線未回収の部分もあり(完成版があるので、こちらでの修正は行いません。すみません)しばらく非公開にしていましたが、少しの間だけ公開することにしました。 一か月ほどで非公開に戻すか、続編を投稿することになれば、続編連載の間は公開します。 まだ未定です。すみません。 あらすじ 離婚屆を出す朝、事故に遭った。高卒後すぐに結婚した紫奈は、8才年上のセレブな青年実業家、那人さんと勝ち組結婚を果たしたはずだった。しかし幼な妻の特権に甘え、わがまま放題だったせいで7年で破局を迎えた。しかも彼は離婚後、紫奈の親友の優華と再婚し息子の由人と共に暮らすようだ。 思えば幼い頃から、優華に何一つ勝った事がなかった。 生まれ変わったら優華のような完璧な女性になって、また那人さんと出會いたいと望む紫奈だったが……。 脳死して行き著いた霊界裁判で地獄行きを命じられる。 リベンジシステムの治験者となって地獄行きを逃れるべく、現世に戻ってリベンジしようとする紫奈だが、改めて自分の數々の自分勝手な振る舞いを思い出し……。 果たして紫奈は無事リベンジシステムを終え、地獄行きを逃れる事が出來るのか……。
8 186迷宮宿屋~空間魔法駆使して迷宮奧地で宿屋を開きます~
迷宮、それは魔物が溢れ出るところ。 冒険者は魔物を間引くが、殘した死體を糧に魔物はさらに強くなった。 それでは意味は無いと、魔物の死體を持ち帰るようにするも……荷物持ちが大変すぎて攻略が進まない。 そんな時、光を浴びたのが『空間魔法使い』だった。 孤児院育ちのマリーロズ。初めは使えない空間魔法に絶望するもコツコツとレベルをあげて夢を見つけ、葉えていくーーー。 Bkブックス様にて一巻発売中!書籍化のタイトルは『迷宮宿屋 ~空間魔法使い少女の細腕繁盛記~』になります。 7/1第三部スタートになります。毎朝8時に投稿致しますのでよろしくお願いします。
8 147転生魔王、冒険者になる
「あれ、ここどこ? あー、俺転生して魔王になるんだんだっけ?」 俺ことユウキは高校でのいじめにより自殺した。だが、たまたま自分の納めている異世界の魔王が壽命で死に、次期魔王となる転生者を探していた神に選ばれ、チートをもらい魔王になることになった
8 152御曹司の召使はかく語りき
施設暮らしだった、あたしこと“みなぎ”は、ひょんなことから御曹司の召使『ナギ』となった。そんな私の朝一番の仕事は、主である星城透哉様を起こすところから始まる。――大企業の御曹司×ローテンション召使の疑似家族な毎日。(ほのぼのとした日常がメイン。基本的に一話完結です。ご都合主義)
8 162帰らずのかぐや姫
それは昔々の物語。竹取の翁が竹の中から見つけたのは、大層愛らしい娘でした。 成長し、それはそれは美しくなった彼女を一目見よう、妻にしようと 多くの殿方が集まります。 しかし、彼らは誰も知りません。世に聞こえる麗しき姫君の実體を――。 ――――――――――――――――――――――――― 武闘派なかぐや姫がタイトル通り帰らないお話です。 ファンタジー要素込み。シリアス寄り。ハッピーエンド。 冒頭はかぐやが鬼を食らうことから始まります。特にグロ表現ではないですが。 完結済み作品。自サイトで全文掲載。
8 51転生しているヒマはねぇ!
異世界で転生する予定になり、チキュウからマタイラという世界の転生界へと移動させられた『カワマタダイチ』。 ところが、控え室で待たされている間に、彼が転生するはずだった肉體に別の魂が入れられ、彼は転生先を失ってしまう。 この大問題を、誤魔化し、なおかつそうなった原因を探るべく、マタイラ転生界の最高責任者マーシャが彼に提示したのは、冥界に來た魂を転生させるこの転生界の転生役所で働くことだった。 ニホンでやる気を持てずに活力なく生きていたダイチは、好みの女性陣や気の合う友人に勵まされながら、少しずつ活力を取り戻し、それでも死んだままという矛盾に抗いながら、魂すり替え事件やマタイラの冥界と現界を取り巻く大問題と、わりと真面目に向き合っていく。
8 76