《【電子書籍化】神託のせいで修道やめて嫁ぐことになりました〜聡明なる王子様は実のところ超溺してくるお方です〜》第二十七話 主神ステュクスのおい
朝、私は目を覚ましてふかふかのベッドから転がり出て、溫かい濡れタオルをもらって顔を拭く。その間にメイドたちがやってきて、朝食の準備をする。私の分と、サナシスの分だ。私の長よりもちょっと小さいくらいの直徑の円卓を、二人で囲むのだ。今日は三種類の野菜のポタージュと押し麥のチーズリゾット、サナシスにはそれにレモンバターソースを添えた白魚のムニエルが付く。意外とサナシスはたくさん食べるほうで——いや、私がなすぎるのかもしれない。でも、目の前で私の倍の量はある食べが次々と胃袋に消えていくのを見ると、やっぱり大人の男はたくさん食べるものなのだ、と心してしまう。
私が頭からシーツをかぶったようなふわりとした寢間著のチュニックに、大きめのカーディガンを羽織って椅子に著くと、ちょうどサナシスがやってきた。
「おはよう、エレーニ」
「おはようございます、サナシス様」
「怯えなくなったな」
「え?」
「前は俺の服を見て、自分も正裝で朝食を摂らなければならないのか、とびくびくして尋ねていただろう」
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「あ、あれは……はい、そう思いました」
サナシスは私をからかう。だって、サナシスはいつもの詰襟の白い服と金の裝飾と房のついたマントを羽織っている。サナシスは私よりもずっと早く起きて、一通り政務をこなしてから、朝食を摂りにわざわざ私の部屋へ來る。となれば、私も早起きしてドレスを選んで、としなければならないのかと戦々恐々としていたのだ。
もっとも、サナシスは一笑に付して、お前は好きな服で好きなように過ごしていろ、必要なときにはちゃんと指示をする、と言ってくれた。
「私も、前は日の出とともに起きる生活をしていたのですけど、ここに來てからベッドの寢心地があまりにもよくて、つい寢坊をしてしまいます」
「そうか、それはいいことだ」
「いいことなのですか?」
「ああ。人間というものは、安心しないとぐっすりと眠れない。憂いもなく、お前が十分に睡眠を取れているなら何よりだ。むしろ、もっと寢坊をしてくれれば俺はお前の寢顔を眺められるのだが、なかなかそうもいかないな」
「ね、寢顔は、あまり他人に見せるものではございませんので」
「何を言う。夫である俺以外の誰が、お前の寢顔を見る権利があるというのだ」
私はつい赤面してしまった。サナシスが私の夫、そう言われると、まだまだ照れて耳まで赤くなってしまう。しばらく、これは落ち著きそうになかった。
押し麥リゾットのもちもちした食に集中して、私は何とか誤魔化そうとする。しかし、サナシスは意地悪だった。
「嫌か? それとも暗に、こっそり見に來いとっているのか?」
「違います! 違います、見ないでください」
「分かった分かった。お前が嫌なら見ないさ、安心していい」
サナシスの端正な顔は本當に楽しげで、ムニエルの一欠片が口に運ばれるフォーク捌きでさえ気だ。私をからかうことがそんなに面白いのだろうか、それともサナシスも実は照れ隠しをしているのだろうか、などと思ってしまった。
やがて、朝食がひと段落してから、私の目の前にはガラスティーカップにった薬草茶が、サナシスの前にはコーヒーが運ばれてくる。私はコーヒーを飲んだことがない。匂いからして焦げ臭く、苦そうだから敬遠しているけど、サナシスはごく當たり前に口をつける。私は、恐る恐る尋ねてみた。
「コーヒーは、その、味しいものなのですか?」
「味い、というよりも刺激を求める嗜好品だからな。目覚ましの気付にはちょうどいいのだが、ああ、お前にはまだ早いぞ。もっと長してからだ」
「は、はい」
「いや、そうだな……まず、砂糖を人並みに食べられるようになってからだな」
サナシスは厳に、私がコーヒーを飲むことをじてしまった。
そう、私は今でも、砂糖を一度にたくさん摂ることができない。今までほとんど摂取してこなかったせいか、すぐにはがけ付けないのだそうだ。この間のサナシスが作ってくれたパンケーキだって、実は水で薄めた蜂を使っていたと後で聞いた。砂糖に慣れていないで一気にたくさん食べてしまうと、に深刻な影響が出てしまうから、と醫師にまだ制限されている。
そんな有り様だから、なかなかすぐに人並みに、というわけにはいかない。サナシスは寄り添ってくれているけど、それがどうにも申し訳なくて、早く人並みに、一人前になりたい、と気持ちばかりが焦ってしまう。
ただ——サナシスはいつも、私がそんな気持ちになったときは、優しく聲をかけてくれる。
「エレーニ、風呂にったら、散歩に行かないか。さすがに市井に出かけるわけにはいかないし、王城もそれほど楽しくはないから、神域アルケ・ト・アペイロンへ息抜きに行こう。あそこならいつでも天気がいいし、何より安全だ」
その提案は神罰を恐れない所業ではないだろうか。ステュクス神殿の最奧は気軽に散歩に行くようなところではないと思う。
ところが、私の頭の中に聲が響いた。
「いいぜ、來なよ! 歓迎するよ!」
私は、それが主神ステュクスの神託だと分かってしまった。
「神託が」
「何?」
「あ、いえ、かしこまりました。ぜひ」
神域アルケ・ト・アペイロンの主である主神ステュクスのおいまであるとあっては、行かないという選択肢はない。
私は、お出かけのための風呂にることになった。ちなみに、まだサナシスは私を一人で風呂にれることはしないので、朝からごしごし洗われることも決定した。
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