《【電子書籍化】神託のせいで修道やめて嫁ぐことになりました〜聡明なる王子様は実のところ超溺してくるお方です〜》第五十四話 またここへお伺いしますね
翌日、王城。
サナシスの執務室へ、書のイオエルが息を切らしながらやってきた。
「殿下! 大変です!」
いつも冷靜な書があまりにも必死な形相をしている。サナシスは積み上がった書類の壁の隙間からその様子を見たが、それでも自分をわずらわせる案件がまた來たのか、とこの時點ではうんざりしていた。
「何だ。今俺が忙しいことくらい知っているだろう」
「それどころではありません、急ぎいらしてください。ヘリオス様が出歩かれているのです」
サナシスは前言撤回、とばかりに思いっきり立ち上がり、そのまま早足で執務室から飛び出した。
兄のヘリオスは王城の廊下を歩くことすら珍しい。溫室庭園と自室は繋がっているし、が多く差し込む王城の廊下は彼にとって厳しい環境だ。以前サナシスが目にしたときは、特殊な傘とヴェール、全を覆うローブすら著けての行だったほどだ。
それが、イオエルに連れられてヘリオスがいるという場所に辿り著くと——ヘリオスは、ヴェールこそ著けているが、平然と明るい廊下の真ん中に立っていた。自にとっては毒に等しい、のを浴びても何ともない、というふうに。
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ヘリオスの白銀の髪が溢れんばかりに輝き、神々しささえじられる。現に、周囲にいる僚やメイドたちは、ヘリオスのしさに気を取られていた。無理もない、ただでさえ普段目にすることのない存在が、満を辭したとばかりに、まるで達した絵師が神話のり輝く一場面をに描いた絵畫の中から出てきたかのようにそこにいるのだから。
サナシスは、我が目を疑った。しかし何度見直しても、そこにいるのは兄のヘリオスだ。
「あ、兄上?」
ヘリオスはサナシスを手招きする。
「遅かったな、サナシス。だがちょうどいい、來い」
「何をなさるのですか、いえ、それよりもおは」
「無用な心配だ。お前にも立ち會わせねばならないと思っていた」
そのまま、ヘリオスは歩きはじめた。どこへ行くのか、と問うこともできないほど、サナシスは驚きすぎてヘリオスの一挙手一投足に目が奪われている。
兄と弟が王城の廊下を並んで歩くことさえ、初めてのことだった。ヘリオスは先導役のメイドに従い、目的地へとまっすぐ進んでいく。
そして辿り著いたのは、ステュクス王國國王の寢室だ。病床にある國王は、今はほぼ寢室から出てこない。覚醒と昏睡を繰り返し、狀態は良くも悪くもならない、そんな有様だった。
だが、今日は違った。
ヘリオスが國王の寢室へとる。サナシスもその後ろをついていく。
すると、中にいた醫師たち、看護の従者、メイドたちが一斉にヘリオスを見た。だが、すぐに中央のベッドに橫たわる人へと、視線は戻る。
白髪混じりの紺の髪をした老年の男が、顔悪く、しかし目は開けていた。國王が起きている、サナシスはそのことにまたしても驚く。
打って変わり、ヘリオスは當然、とばかりに國王へ話しかける。
「國王陛下、お目覚めとあらば、今のうちに一つ承諾を得たいことがございます」
はっきりと明瞭に、ヘリオスは聲を発する。ヘリオスの聲はこれほど人の腹に響くような、説得力のある聲だったのかと、サナシスは他の人々と同じく、やはり初めて知った。
「私、ヘリオス・ペレンヌスは、自ら第一王子の座を退きます。また、國王健在のうちに玉座をアサナシオスへ禪譲すべきと進言いたします」
その発言の終了とともに、しん、と場が靜まり返る。
何を言ったのだ、と戸う人々は、聲も上げられない。サナシスはその言葉の意味を瞬時に理解したせいで、言葉が出ない。
ヘリオスは、ステュクス王國の王子という分を辭める、と言ったのだ。それに飽き足らず、國王へサナシスへ王位を渡せ、と迫っている。
とんでもない狀況、考えられなかった場面。誰もが反応できなかったそのとき、國王はしっかりと、頷いた。
「いいだろう。余は執務に耐えられぬ、あとは任せた」
ただそれだけを言い殘し、國王は目を閉じた。ヘリオスの行を後押しするかのように、その場にいる全員が國王の言葉を聞き、証人となった。
ヘリオスはくるりとサナシスのほうへ向き直り、シニカルに笑う。
「というわけだ。よかったな、サナシス」
そうは言われても、サナシスは何一つ納得できていない。事はあっさりと進み、ヘリオスはぽいと軽々しくサナシスへ重責と國王の地位を持ってきた。
いくら聡明で知られるサナシスも、この狀況にはついていけていない。何を問うべきか、何をすべきか、よく分からないままだ。
「お待ちください! 退くとは、どういうことですか!?」
「ああ、この間言ったことだが、醫師によれば誤診ということだ。まあ、常人より壽命が短いことには違いあるまいが」
「ええ……?」
「とにかく、これで私はもうお前と関わらなくてよくなった。せいぜい邁進するがいいさ」
それだけを言って、ヘリオスは國王の寢室を出た。突っ立ったままのサナシスや唖然とする人々を放って、自らの棲家たる溫室庭園へと戻っていく。
その溫室庭園のり口前に、小柄なが立っていた。長い金の髪を垂らし、青い目は大きく、にっこりと微笑んでいる。全を覆うチュニックは、彼のお気にりだ。
ヘリオスは笑う。律儀にも待っていたであろう彼へ、報いなければならない。そのくらいには、機嫌がよかった。
「エレーニ」
義妹であるエレーニの前に立ち、ヘリオスはいつになく穏やかに、しかしその立場では言ってはならないことを告げる。
「俺は神など信じない」
ヘリオスの言葉を、エレーニは肯定する。
「ええ、それでいいと思います。運命の悪戯や偶然です、何もかも」
「そうか」
ヘリオスは、サナシスほどでなくとも聡明な青年だ。すべてではないが、察している。
こいつが何かをしたのだ。ただ、それを言わない以上は、藪を突くような真似はすまい。
互いに示し合わせることもなく、ヘリオスとエレーニはそれでいいのだと、ただ現実をけれる。
「また溫室庭園(ここ)へお伺いしますね」
「もう來るな……と言ったところで來るのだろうな、お前は馬鹿だから」
ふん、と鼻を鳴らし、ヘリオスは溫室庭園へと帰っていく。
その後ろ姿を、エレーニは眺め、ふふっと満足げに笑った。
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