《【書籍化】萬能スキルの劣等聖 〜用すぎるので貧乏にはなりませんでした》プロローグ

「聖って聞いてたから、Sランク級のスキルの一つでも覚醒するって思ったんだが。何もかもが平凡すぎる劣等聖のお前はもう要らない」

それは青天の霹靂と言っても過言ではありません。

ある日のこと、ランチタイムを終えたゼノンは勇者である自分のパーティーに私は要らないとはっきり仰せになりました。

両親に捨てられて教會で生まれ育った私は厳しい修行を経て聖としての稱號を得ます。

ゼノンはその噂を聞いてわざわざ教會まで赴いて私を仲間にして下さいました。

パーティーにってからも私は自らの実力の研鑽を怠らずに古今東西の千を超える魔や、剣技、鞭、弓、ブーメラン、トンファー、あらゆる格闘技を一流と呼ばれるAランクの水準までスキルを習得します。

最近、私たちのパーティーが魔王軍の幹部を撃破したという功績を上げましたが、私もそれなりにパーティーに貢獻したという自負がありました。

今、最も魔王の討伐に近いと言われるまでに長した勇者ゼノンのパーティー。私もそれ故に気合をれているつもりだったのですが……。

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どうやらそれでも勇者様からすると劣等聖だと揶揄するくらい使えない人間だったみたいです。

「平凡と言われましても、私も努力して々とスキルを修得していますし、貢獻もしているはずです」

「はは、用貧乏なだけだろ? 多用なのは認めるが、お前のチンケなスキルなんてSランクスキルに比べたら何もないも同然なんだよ。お前だけだぞ、特に誰よりも優れたスキルを持ち合わせていないのは」

私は努力していると主張しましたが、ゼノンはそれを嘲笑います。

私のスキルなど矮小で努力もしていないのと同然だと……。

確かに治癒士リルカや剣士アーノルドは選ばれし天才だけが得ることが出來るという“Sランクスキル”にし前に覚醒しました。

リルカは一度に大人數の力を大幅に回復する治癒魔を、アーノルドは巖山をも木っ端微塵にする程の剣を覚えて人間の限界を超えた力を得ています。

もちろんゼノンはもっと昔から覚醒しており勇者として相応しい力を持っていました。

Sランクスキルに覚醒していないのは私だけ。

ゼノンが私のことを用貧乏で平凡な人間だと揶揄するのにはそんな背景があったのでした。

「実はな、“Sランクスキル”に覚醒していて、しかも王家のを引くというエリスという名の聖を新たにパーティーに勧しようと思っていてな」

「はぁ……」

「お前さえ居なくなれば、全員がSランクスキル持ちという世界一ハイレベルなパーティーが完するのだ。パーティーのレベルを下げているソアラ……お前さえ居なくなれば、な」

世界一ハイレベルなパーティーですか。

そして、私はそのパーティーには邪魔ということですね。

あれだけの努力が何もないも同然とは、釈然としませんがゼノンは本気でそう思っているみたいです。

「私は戦力外ということでしょうか? Sランクスキルが無くとも十分に皆様を援護しながら戦えていると思うのですが」

それでも私は引けません。

教會を出て、やっと見つけた自分の居場所。

パーティーの中で仲間の為に役に立っているという自信もようやくついたというのに、Sランクスキルに覚醒出來ないという小さな理由で追い出されるなんて到底承服出來ないのです。

「くっくっく、おいおい、なぁ聞いたか? この、自分が僕たちを援護していると思っているらしいぞ!」

「うそー、マジでウケるんですけど。だって、ソアラって一人しか治療出來ないじゃん」

「巖を斬り落とすことが限界のなどに助けられた覚えはない」

ゼノンが馬鹿にしたような聲を出すと、リルカもアーノルドも私なんかに助けられたなんて微塵も思っていないと斷言しました。

そ、そうだったのですか。私の力は無力だったのですね……。

驕っていました。努力すればきっとこのパーティーに貢獻出來ると思ってたのですが……。

「私は用貧乏の役立たず、ということですか」

「ようやく理解したか? 鈍いだ……。さっさと出ていけ!」

「わ、分かりました。出ていきます。そ、それでは……、あ、あれ? ……あ、あの私の鞄の中は?」

私は荷を持って店から出ようと思いましたが、鞄の中が空っぽになっていることに気付きました。

「あー、居なくなるやつの持ちなんて売るに決まってんだろ? 今まで、僕らの金魚のフンやってた迷料だと思えば文句もあるまい」

「くっ……! ゆ、勇者様、あなたはそこまで私を……」

こうして私はゼノンたちの嫌がらせで無一文でパーティーから追放されました。

勇者のパーティーにとって私は要らない存在だった……。

今までの努力によって得た自信も、僅かに持っていた資や現金や何もかもも失って――私の神は崩壊する寸前です。

しかし、聖として神の名のもとに忠誠を誓ったこの――生きることを諦める訳にはいきません。

何か、才能も何もない私でも出來る仕事を探さねば――。

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