《【書籍化】萬能スキルの劣等聖 〜用すぎるので貧乏にはなりませんでした》約束が違うじゃないか(ゼノン視點)

魔王軍の幹部の二人目を討伐しようと、最難関ダンジョンの一つである氷の魔城へと向かった僕たち。

平凡な聖だったソアラを捨てて、新たにSランクスキルに覚醒しているエリスを加えての冒険。

エリスのSランクスキル“栄への道(シャイニングロード)”は超広範囲に渡って最大火力の魔法を放つという、見栄えも威力も申し分ないスキルだった。

矮小なスキルしか持たない劣等聖であるソアラなんかでは逆立ちをしても出來ない――まさに天賦の才に恵まれた者のみが持つ特別なスキル。

今回のこの氷の魔城も必ず攻略出來るぞ、と僕は確信していたのだが……。

「おいっ! リルカ! 早く治癒をかけろ!」

「ええーっ! 今、魔力の回復中~~。エリスさんお願い!」

「わ、わたくしですか? わたくし、聖ですがの攻撃魔法に特化してまして、治癒はあまり得意な方じゃ……」

「どちらでも良い。某も負傷した、このままではやられる……!」

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何故か全滅寸前まで追い詰められていた。

おかしいな。僕らは全員がSランクスキル持ちの世界一のパーティーだというのに。

魔王の幹部どころか、その部下を相手にして何を手こずっている……。

「わ、分かったぞ。敵の出現率だ! 出現率が異様に高いんだ! だからいつもよりもテンポが悪いのだ!」

僕はどうにかこの事態を招いた理由を考えようと頭を捻った。

この氷の魔城は敵の出現頻度が今までに経験したことがないくらいに高い。

だから僕らは先に中々進めずに足踏みをしているというわけだ。

「てか、そんなのどうでも良いじゃん。ゼノン、意味のないこと考えないで、さっさと戦って。はい、治癒魔(ヒール)」

「どうでもいいとはなんだ!? 分析は大切なんだぞ! それに全治癒(エクスヒール)はどうした!? Sランクスキル使えよ!」

リルカのやつは僕の考察をどうでもいいと切って捨てた。

このスイーツ頭は僕の高尚な考えが理解出來んらしい。

つーか、さっきから普通のヒールばかり使ってるな……。出し惜しみせずにSランクスキルのエクスヒールを使えばいいのに……。

「バッカじゃないの!? 魔力足んないに決まってるじゃない! 何回使ったと思ってんのよ!」

「魔力を回復したんじゃないのか……」

「あんな薬で全快出來るはずないでしょ。それに、お腹タプタプでもう飲めないけどね」

こういう時のために魔力回復用のレッドポーションを大量に持ってきた。

確かに一つの回復量はないみたいだが、大量に飲めば幾らでもエクスヒールが使えると思っていたのだ。違うっぽいな……。

「ついでに言わせてもらおう。そろそろ某の真・魔閃衝撃も打ち止めだ。生命力を燃やしているからな。治癒では回復出來んのだ」

「そ、そうか。僕の聖炎領域(セントバーナード)と同じ理屈の技だったな……。僕の場合は時間制限だが……」

巖山をも塵と化するアーノルドの切り札、真・魔閃衝撃はどうやら闘気という生命力を燃やしてるパワーを使っているらしい。

ということで、アーノルド、そして黙っているけど実は僕もSランクスキルが打ち止めとなってしまった……。

「ぐはっ……!」

「も、もう駄目ですわ……」

「くっ……、馬鹿ゼノン……、何とかなさい!」

や、やばい……。このままでは全滅する?

そ、それだけは避けなくては……。

でも、このダンジョンの攻略は大々的に言ってるし、何ならこの國の國王から莫大な支援金も貰ってるし……。

「グギュルルラアアア!!」

「ひぃっ! 撤退! 撤退だ!」

「「――っ!?」」

僕は逃げた。

全力で走って逃げ出した。

今回の失敗は何かの間違いだ。

対策をきちんと立てて再チャレンジすれば問題ない。

そうだ。僕は……僕たちのパーティーはまだ大丈夫だ……。

「全っ然大丈夫じゃないじゃない!」

「ここ三ヶ月で五回の攻略失敗。客観的に見ると無様としか言えん」

「う、うるさいな! お前らも仲間なんだから責任じろよ!」

おかしい……。どうしてこうなった?

天才たちの共演とも言うべきスター集団、勇者ゼノンのパーティーが何故五回も全滅寸前まで追い込まれて敗走しているのだ?

こ、このままではヤバい。勇者としての信用がガタ落ちして、稱號の剝奪もあり得る。

そうなると、また僕は誰にも相手にされなかったあの時に逆戻りだ……。

せっかくチヤホヤされるために勇者になったというのに……。

「しかし、分からん。どうして、こんなに上手くいかんのだ?」

「あの~~、質問してもよろしいでしょうか?」

「なんだ……? エリス、僕は今フィードバックをだな――」

「いえ、ソアラ先輩はいつ復帰なさるのかな、と思いまして。やはりこのパーティーの要はソアラ先輩なのかと思っていましたので」

「「――っ!?」」

エリスの発言で僕たちの時が止まった。

いきなり追放したソアラなどの名前が出たから當然だ。

そういえば、このはまだソアラを追放したことを知らんのだったな。あのに憧れているとか抜かしたから、勧するときに気が変わらぬように黙っていたのだ。

しかし、ソアラの復帰か。まぁ、あんな奴でも慣れないエリスよりも多は連攜が上手く取れていたのかもしれんな。

そういえば、治癒も使えるし、補助も出來て、アタッカーとしてもそこそこ戦える奴だった。

クソッタレ……。あんな奴に頭を下げるのは屈辱的だ。

しかし、しかし……このままでは僕は勇者じゃなくなる……。

それだけは絶対に避けねば……。ソアラに戻って來てもらえるように頼むしか手はないか――。

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