《【書籍化】萬能スキルの劣等聖 〜用すぎるので貧乏にはなりませんでした》諦めるにはまだ早い
「いやー、凄いです。こんなこと、このギルド始まって以來なんじゃないでしょうか。フリーターの仕事量がギルド所屬のパーティーを含めても第一位になるなんて」
ルミアは書類を私に見せながら、凄いと褒めて下さいました。
私からすると、あれだけの仕事を全部管理して尚かつこちらのの回りの世話までこなすルミアが凄いと思ったのですが。
「20日はお休みを頂いていましたけど。それが無ければ、もっと仕事が出來ましたよ」
「とんでもない! 本來はもっと休みを増やすべきでした。たったの20日しかお休みが取れなかったのは私のスケジュール管理が甘かったせいです。申し訳ありません」
もっと働けたと口にすると、ルミアが逆に頭を下げます。
ゼノンのパーティーにいたときは休日という概念すら殆どありませんでしたから、十分すぎるのですが……。
「しかし、ソアラ様のおかげでこのギルドもかなり有名になりました。まさか、一年先の予約まで埋まってしまうとは。よほど、どのパーティーもソアラ様とお仕事がしたいんですね~~」
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「い、一年先の予約ですか……!?」
また、私は年甲斐もなくはしたない聲を……。
でも、一年後まで仕事が決まってしまうなんて思いもよりませんでした。
一年待っても良いという方がまさかいらっしゃるなんて……。
「えへへ、やっぱりびっくりしますよね。安心して下さい。予約の付は一年間止めることにしましたから」
「ええっ! 予約、止めても大丈夫なんですか?」
「あ、はい。もしかしたら、フリーターを辭めて別のことをされたいと思われるかもしれないと気を回したつもりだったのですが……」
ルミアは當たり前のような顔をしてフリーター以外のことを私がしたくなるという可能について言及しました。
一年後まで私のの振り方を考えるように促してくれたのです。
「ですが、私は誰かのパーティーに所屬するなんて――」
「何を仰っているんですか。ソアラ様がパーティーを作るのですよ。リーダーとなって」
「えっ……? ふふ、それは無いですよ。ルミアさん、私はリーダーになんてれるではありません」
ルミアは面白いことを言いました。
私がパーティーリーダーとなって、新たなパーティーを作るというような絵空事を。
確かにそれなら、追放されることはないですが、私の力では皆を率いることは無理です。
「そんなことないですよ~~。だってソアラ様のことを――」
「そ、ソアラ様! た、大変です! そ、ソアラ様に面會したいという方が來られましたぁ!」
ルミアの聲に被せるように付の方が息を切らせながらギルドの休憩室に來られます。
どうしたというのでしょう。そんなに息を切らせて……。
「面會したいという方ですか? 大変というのはどういう意味で――」
「ゆ、勇者様なんですよ!」
「――っ!?」
「勇者ゼノン様がソアラ様に會いたいと! こちらに!」
彼は興気味に面會相手について話します。
ま、まさか、ゼノンが私に會いに……?
何故なのでしょう? 私の頭の中は真っ白になり、心臓の鼓が激しくなります。
追放した私にわざわざ會いに來る理由――全く見當がつきません。
「やはりお會いすることは難しいでしょうか?」
「いえ、會いましょう。こちらのギルドに迷をかけるわけにはいきませんから――」
とにかく私は會ってみることにしました。
三ヶ月前に自分のことを追放した張本人であるゼノンに……。
しかし、本當に何の用事でしょう? ちょっと前に別れたばかりですのに……。
「頼む! 僕のパーティーに戻って來てくれ! この栄ある勇者ゼノンのパーティーに!」
「はぁ……? も、もう戻れと仰るのですか?」
ゼノンの用件に私は驚愕しました。
あれだけ、私のことを凡庸な存在は要らないと否定しておいて、たったの三ヶ月で戻って來いと言い出すなんて……。
正直に申しまして呆れてしまっています。
「ま、まぁ、考えが変わったんだよ。お前の力は確かにAランク止まりで矮小な力だったが、無いよりはマシだったな、と」
考えが変わったというゼノンですが、私の力は矮小で無いよりはマシ程度という認識のようです。
その程度の力という認識なら別に私のことは特に必要とじてないように思えますが……。
「だから、お前がどうしても復帰したいと言うならば――」
「戻れませんよ」
「へっ……?」
私が戻れないと口にすると、ゼノンは口をあんぐり開けて変な聲を出しました。
どうやら、私が喜んでパーティーに戻ると思っていたみたいです。
「フリーターの仕事が実は一年後まで予定が詰まっておりまして。一年後なら、と言いたいのですが、生憎予約も打ち切っていますので」
「はぁああああっ!? 僕のパーティーに復帰するよりも、フリーターみたいな底辺職を優先するのか!?」
「仰るとおりです」
必要とされている仕事をしたいと思うのは當然だと思います。
見たところ、ゼノンのパーティーはそれほど切迫した狀況では無さそうですし。
「……手こずってるんだよ」
「手こずっている?」
「だーかーらー、ほんのちょっぴり。しだけ氷の魔城の攻略に手こずっていて、貓の手も借りたいんだ。だから、俺のところに戻って來い。復帰させてやるから」
面倒くさそうな顔をしてゼノンは氷の魔城の攻略にしだけ手を焼いていることを告白しました。
そんなに大した面倒ごとに遭遇した訳でもないのに私を連れ戻しに來たという訳ですか?
こちらは追放されてから慣れない環境で頑張っていたというのに……。
しかし、トラウマはありますし、恨んでないと言えば噓になりますが……聖としてゼノンを勵ますくらいはしておきますか。
「こんな平凡な私なんて居なくても、勇者様は大丈夫です。まだ諦めるのは早いですよ」
「ぬっ……? ふーむ、そ、そうかな? まあ、確かにSランクスキルを持たぬお前が來たところで、とは思うが」
私はゼノンに大丈夫だと聲をかけました。
ゼノンたちみたいに大いなるSランクスキルを持たない私が彼らが手こずるレベルの戦いにを投じてもあまり意味がないので、ご自で努力するしかないと、決して諦めないようにとエールを贈ります。
そもそも私は仲間の誰にも頼りにされていなかったのですから、それを思い出して頂きたいです。
「私、今のフリーの冒険者業が楽しいんです。私みたいな小さな力でも役に立ってると言ってもらえますから。ですから、勇者様も簡単に諦めないで下さい! まだ大丈夫ですから!」
「そ、そうだよな~~! いや、僕がどうかしていた。せっかく夢のパーティーで駆け上がろうとしていたのに、君のような凡才に頼ろうとしてたなんて……。諦めるのが確かに早過ぎたみたいだ。はっはっはっ!」
ゼノンは大聲で私のことを頼ることが間違いだと認めて、笑いながら去っていきました。
これで、彼との因縁も終わりでしょう。私は私の道を行きます――。
◆ ◆ ◆
「ソアラ様ぁ、今日もお疲れ様です。しかし、勇者ゼノン様は中々氷の魔城の攻略が出來ないみたいですね~~。十回連続で失敗してるみたいですよ~~」
「諦めずにチャレンジしてるなら良いではありませんか」
「でもでも、そろそろスポンサーである王國も痺れを切らしてるっぽいんですよ~~。勇者の稱號の剝奪も本當に考えてるみたいで」
勇者の稱號の剝奪? そこまで追い詰められて――。
いえ、それならあんなに余裕な振る舞いをするはずがないでしょう。
「ソアラ殿! 我らのリーダーになってくだされ!」
「あたしたち、ソアラ姐さんに憧れてこのギルドに所屬したんです!」
「貴方の技の數々、僕の描いてきたどんな蕓よりもしい」
もう二ヶ月は経っているでしょうか……。
私と同様にパーティーを追放された方、一匹狼だった方、田舎から私とパーティーを組みたいとわざわざ出てきてくれた方、様々な事を持つ三方が熱烈にパーティーの結をんでいるのです。
こんなにも熱量を持って私と共に冒険をしたいと仰って下さる方がいるとは思いませんでした。
そろそろ、新たな一歩を踏み出すときかもしれません――。
勇者様、私は私の冒険を頑張りますので、どうか夢のパーティー実現を諦めないで下さい――。
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