《【書籍化】萬能スキルの劣等聖 〜用すぎるので貧乏にはなりませんでした》絆とは

「姐さんだけに頼りっきりじゃあ一番槍は名乗れない! 氷竜魔法(ブリザードドラゴン)ッ!」

「ふっ……! 蕓的剣技・レッドローズライジングッ!」

「拙僧も暴れさせてもらおう! アジール流武・地獄落とし!」

グルセイヤ原の奧地へと進んだ私たちに襲いかかるのは大量のスモールドラゴンとその他の魔たち。

エレインがハイエルフの高い魔力を活かした高火力の魔法で遠距離や空中の敵を牽制しつつ倒し、ロレンスはその機力を活かして中距離の敵を確実に仕留めます。

私とジンは仲間に近付く敵に神経を集中させて倒すことで、パーティーの安全を確保していました。

「これであたしは20、ロレンスは14でジンは5か。どーだ、ロレンス。あたしの方が討伐してるぞ」

「うるさいな。スモールドラゴンは空を飛ぶことが出來るんだ。お前が有利に決まっている」

「んだと、負け惜しみを!」

「負けてないのに、どうして負け惜しみが言えるのだ?」

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相変わらずの口喧嘩をエレインとロレンスはしています。

ロレンスが言うとおり、今回は魔法が使えるというか遠距離程の技を持っている方が便利です。

スモールドラゴンの移範囲がかなり広いので、より多くを仕留めようとするならエレインのようなタイプが向いているのでした。

「エレインさん。ロレンスさんもジンさんもあなたの安全を守りながら戦っているのです。強い魔法を使う際に安心して魔力を溜めることが出來るのはお二人がを張っているからなのですから」

私はエレインを咎めました。

パーティーとはお互いに尊重し合ってこそ、力を発揮出來ると思っているからです。

仕事量で言えばロレンスもジンも決して引けを取ってはいません。

「うっ……、ソアラ様……。――すまない。ロレンス、ジン。あたし、調子に乗っちまった」

「えっ? いや、うむ。僕もしくないことを言ってしまった。君の魔力は頼りにしてるよ」

「拙僧は何も気にしておらん」

エレインとロレンスは互いに仲直りして、ジンもその様子に頬を緩めておりましたので、しずつではありますが急造パーティーにも絆というようなものが芽生えたような気がします。

それはあの日まで私がゼノンのパーティーに対して一番大事なモノだと信じていたことでした――。

「ソアラ姐さん、そろそろ引き上げますか? スモールドラゴンの數も急激に減りましたし」

それから暫くして私たちは急にスモールドラゴンに遭遇しなくなりました。

エレインは仕事を終えても良いという合図だと言って引き上げを提案していますが――

「いえ、何か変です。あまりにも急激に減し過ぎている気がします」

「うむ。ソアラ殿の言うとおり、違和じる靜けさだな」

「おや? あっちの方から何人か走って來てるぞ。隨分と慌てているようだが……」

私が急激に減したスモールドラゴンの気配について違和じていますと、ロレンスが指を差す方向から何名かジルベルタ騎士団の団員の方々が走ってくる様子が見えました。

あの慌てようは只事ではなさそうです……。

「聖様~~! た、た、助けて下さい! だ、団長が、セルティオス団長が~~!」

騎士団の団員は息を切らせながら、自分の來た方角を指差して助けを求めます。

どうやら、セルティオスのに何か起きたみたいですが、この靜けさと何か関係があるのでしょうか……。

「あ、あ、あ、あんなに多くの……!」

「バカみたいにとんでもない化けが――!」

「死んでしまう。し、死んでしまう~~。ひぃ~~!!」

「お前ら! いっぺんに喋んな! 何がどうなのかさっぱり分からない!」

「行きましょう! 一刻を爭う事態みたいです!!」

騎士団員の方々のパニック合から狀況を把握することは無理だとじた私は、危険ですが先に進むことを選択しました。

人の命がかかっていますから、聖としてそれを無視するわけにはいきません。

◆ ◆ ◆

「ひぃぃぃ! 來るな! これ以上私に近付くな!」

団員たちが逃げてきた方向に走り暫くすると、大量のスモールドラゴンに袋叩きにされているセルティオスがいました。

軽く百は居ますね。流石にこの數は異常です。

「な、なにがあったら、こんなことに!?」

「原因は容易に分かります。瀕死のスモールドラゴンが所々に散らばっています。恐らく焦りからトドメを刺さずに雑に仕留めて、仲間を大量に呼ばれた結果かと」

スモールドラゴンは傷付けられると仲間を呼ぶ習があります。

それはセルティオス自が私たちに忠告していたことでした。彼は既に左腕を食い千切られて重傷を負っています。

セルティオスは私よりも多くの數を討伐しようと焦り、それを失念した――その結果がこの狀況というわけです。

しくないどころか醜いね。自らの功績を誇るために焦り自滅とは。とはいえ、見殺しにするのは僕の學に反する。増援を呼んで來よう」

「あ、あたしも行くぞ。ロレンスだけじゃ不安だからな」

「いや、拙僧に任せよ。守りながら戦うだけなら、エレイン殿より拙僧が適任だ」

――良かった。

この中に誰一人として自分を貶めた人間だから見殺しにしようと口にする者が居なくて。

もう誰も信頼出來ないと思っていましたが、その考えは改めても良いかもしれませんね……。

「助けを呼ぶ必要はありません――」

「「えっ……?」」

「――我流・百閃煉魔(ひゃくせんれんま)ッッッッ!!」

最速の突き技のラッシュ。

秒間に百回の突きから繰り出す衝撃波でスモールドラゴンの頭を貫きます。

々の無理はしますが、私なりに才能の限界に挑んだ結果生み出した新しいこの技で、百のスモールドラゴンを一気に絶命させました。

「う、ううっ……」

「ひどい怪我です。治癒魔法(ヒール)……!」

殘りの10程のスモールドラゴンはエレインたちに任せて、私は重傷を負っているセルティオスの傷を治療しました。

食われてしまった左腕は再生出來ませんが、命はまだ助けられるはずです。

「あうう……、ううっ……、せ、聖様……。私が間違っていました。私は隨分と失禮な態度しか取っていないのに、ううっ……、申し訳ありません」

セルティオスは涙しながら謝罪します。

小刻みに震えながら、焦點が合わなくなった目で……。

「命が助かって良かったです。痛むところは止もしますから々お待ちを」

「聖様……、あなたこそ本の聖様です……」

こうして、エレイン、ロレンス、ジンの三人とパーティーを組んでの初仕事は終わりました。

この出來事が今後の私ののフリ方に大きく影響するとは夢にも思いませんでした――。

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