《【書籍化】萬能スキルの劣等聖 〜用すぎるので貧乏にはなりませんでした》大聖の稱號

「聖ソアラ、そしてその仲間たちよ。ジルベルタ王國へよくぞ參ってくれた」

フリーの冒険者として一年以上仕事をしたジルベルタ王國北端のギルドとの契約が満期を迎えた私はジルベルタ王宮に招待されました。

エレイン、ロレンス、ジンの三人とこの宮殿に辿り著いた私は謁見の間でジルベルタ國王と初めて対面したのです。

その理由、それは……私が自らのパーティーを結し、そのスポンサーにジルベルタ王室がついてくれることになったことなのですが、まだ実が湧かないでいました。

私が所屬していたギルドには私のパーティーが王宮所屬に移籍するにあたって、補償金として五億エルドもの大金が支払われたと聞きましたが本當でしょうか……。こういうお話もかなりプレッシャーになります。

勇者ゼノンはパーティーがアルバニア王宮所屬になったとき、このように張したのでしょうか? 必ず結果を殘さねばならない立場というのはそれだけで神的に來るものがあります。

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「早速だが、ソアラ殿に稱號を與えねばならぬな……。ふーむ、勇者、大賢者、聖騎士……々と宮仕えパーティーのリーダーは特別な稱號が與えられておるが。ソアラ殿は聖であるし――大聖など、どうだろう?」

「だ、大聖ですか!? そ、そんな大仰な稱號……私には荷が重うございます」

ジルベルタ國王が大聖の稱號を與えようと提案したので、私は慌ててそれは荷が重いと口にしました。

大聖とはかつて大陸侵略を目論んだ大悪魔を討伐した歴代最強の聖がエーレ教の教皇より授かったという栄譽ある稱號です。

凡庸な私などが頂くにはあまりにも畏れ多い――。

ですから、私ははっきりと陛下にそれを伝えました。

「うむ。大聖という稱號の重みは私も知っておる。それでも、私はソアラ殿にはそれに見合うだけの活躍を期待したいのだ。そして、セルティオスらの話を聞いて貴ならそれは可能だとも信じておる」

「陛下……」

「そもそも、私がソアラ殿のファンというのもあるがな。アルバニア國王と會食したときに自慢してやったわ。いい人材を送ってくれてサンキュー、とな。わっはっはっ」

陛下は期待と信頼を兼ねて、私に大聖の稱號を手にしてしいと仰せになりました。

あ、あのう。陛下、アルバニア國王に自慢したというくだりは冗談ですよね? あちらの國に行くことになった場合、気まずいなんてものでは済みませんよ……。

ジルベルタ國王は頬を緩ませて、ファンと仰ってくれたとき……この方が本當に私たちパーティーを手厚く歓迎しているということが分かりました。

「陛下のお心遣い。そして期待や信頼、痛みいります。ですが、私の我儘を一つ述べることをお許しください」

「ほう、聖ソアラ殿の我儘か。なんじゃ、興味がある。言うてみよ」

「大聖という稱號としての名譽。私たちのパーティーが陛下の認められる功績を立てたときの報奨として頂戴させてしいとぞんじます」

私は陛下に大聖という名譽はせめて何らかの実績を認めてもらった上で頂戴したいと願いました。

このパーティーは結したばかりで、まだ何も果を上げておりません。

ですから、一つでも何か武勲を立てた上で陛下から稱號を頂きたいと主張したのです。

「ソアラ殿、お主……意外と頑固だのう。普通なら名譽が貰えるというときにわざわざ遠回りなどせんぞ」

「も、申し訳ありません。分ですから」

「いや、よい。ソアラ殿の我儘は筋が通っとる。大聖の稱號はお主らが功績を殘してからにしよう」

ジルベルタ國王は私の我儘を聞いて下さいました。

國王陛下の厚意を無下には出來なかったのですが、こればかりはどうにも譲れなかったのです。

「ならば早速だが、聖ソアラのパーティーに最初の依頼を言い渡す。最初の依頼は氷の魔城の偵察じゃ」

「「――っ!?」」

い、いきなり、氷の魔城……?

氷の魔城というのは、勇者ゼノンが幾度も失敗して心が折れかけ――私にパーティーに戻るように聲をかけに來るほどだったという難攻不落のダンジョン。

これはいきなりとんでもない依頼を出して來られたものです。

エレインたちからもただならぬが伝わってきます。

「勘違いするでない。最初の依頼は飽くまでも偵察。出來るだけ多くの報を得て、生きて帰って來さえすれば達じゃ」

な、なるほど。魔王の幹部の討伐自が目的ではないということですね……。

それならば、何とか――。いえ、だとしてもパーティー結直後にするには高難易度であることは間違いありませんが。

せめて、氷の魔城に行ったことがある方から多の前知識さえあれば……。

◆ ◆ ◆

「ソアラ姐さん、氷の魔城ですよ。氷の魔城……!」

「ええ、分かっていますとも。皆様が危険を予して――」

「國王陛下も粋な計らいをしてくれる。僕たちが最も行きたかった場所に最初に行かせてくれるなんて」

「えっ……?」

國王陛下との謁見が終わり、エレインたちがプレッシャーに押し潰されていないか憂慮していますと、ロレンスが思いもよらぬ言葉を放ちます。

氷の魔城が一番行きたかった場所というのはどういうことでしょう?

「あたしたちはソアラ姐さんが戦力外でパーティーを追放されたという事実が気に食わない。姐さんの名譽を回復させるのに一番手っ取り早い方法は――」

「拙僧たちで勇者ゼノン殿すら葉わなかった氷の魔城攻略を功させることである」

力強い意志の込められた言葉で氷の魔城を攻略して私の名譽を回復したいと主張しました。

この方たちはどうして、そこまでして私のことを……。

そうですね……。今回の偵察によって得た報が今後の攻略の鍵になれば何とかする方法も思いつくかもしれません。

三人の心遣いに応える為にも私も前向きに事を考えなくては。

「分かりました。無理はせずに、準備は怠らずに、偵察の依頼を出來るだけ高い度で達しましょう」

「はい!」

「分かった」

「承知した……」

私も意気込みを新たに、パーティーとしての初仕事を功させることを誓いました。

「それでは、まずは……。報収集ですね。氷の魔城に行ったことがなくとも、何かしらの話を聞いたことがある人を探しましょう。勿論、都合よくそんな人は――」

「そ、ソアラ先輩……! や、やっとお會い出來ましたわ……!」

目の前に現れたのは黒髪のしいでした。

今のは超高等魔法である空間移魔法(テレポーテーション)。

それだけで、この方の魔力と素質の高さは天才の領域にあることが見て取れました。

私のことを先輩と呼んでいますが、この方は何者なのでしょう――。

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