《【書籍化】萬能スキルの劣等聖 〜用すぎるので貧乏にはなりませんでした》アルカマッハ・エデルジア五世

「ということだから、ゼノンはまだ勇者だけど復帰は難しいかもしれないわ。まぁ、今のあなたにはどうでもいい事かもしれないけど」

「全ては某らの慢心が招いた結果。初心に帰って己を見つめ直すとしよう。あいつもそう思えれば良いのだがな」

憑きが落ちたような表でリルカとアーノルドはそう言い殘して去っていきました。

ゼノンはそれほどまで追い詰められているのですか……。

怖いものなど何もないというくらい自信に満ち溢れていて勇者と呼ばれるに相応しい才能と実力をお持ちだった彼がそんなことになるとは――。

「姐さんが気に病む話じゃないですよ」

「同だ。Sランクスキルにこだわって、誰がパーティーに貢獻してるのかすらも分からなかったゼノンがしくないだけなのだから」

「エレインさん……、ロレンスさん……。気にならないと言えば噓になりますが、今は仕事に集中しなくてはなりませんよね。お気遣いありがとうございます」

ゼノンのことは気がかりですが、今回の仕事は今まで経験したものと比べて規模も危険度も最大級。

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気を引き締めないと、仲間の命にも危険が及びますから。

「ソアラ先輩、エデルジア國王の演説が始まるみたいですよ」

「分かりました。そちらに行きます……」

今回の魔王軍との戦いの指揮をとる人はアルカマッハ・エデルジア五世。

この國の國王陛下です。本人も武人として名を上げた豪傑と聞いていますが……。

「――各國の鋭諸君! よくぞエデルジア王國に集まってくれた! 吾輩がこの國の國家元首! アルカマッハ・エデルジア五世である!」

筋骨隆々でスキンヘッドの頭に大きな傷のある二メートル近い長の男が大きな聲で挨拶をされました。

この方が有名なアルカマッハ五世――。

見ただけで分かります。あの方は強いです。

その佇まいから覇気のある表――どう見ても歴戦の勇士という趣きがあります。

「魔王軍の侵攻が始まり、我が國も自國の戦力でそれを退けようと努力はしてきた! だが! 今回の戦いは規模が違う! 熱量が違う! 魔王軍は戦力を結集させ我が國を本気で潰そうとき出したのだ! そこで異例中の異例のことながら、同盟諸國に応援を頼んだ! そして集まってくれたのが諸君たちということだ!」

そうです。軍事に力をどこよりもれているエデルジア王國が他國に救援を頼むなんて異例の出來事です。

ですから、エデルジア王國が救援要請を出したというだけで私たちは事態の深刻さを察したのでした。

「特に高名な大賢者ガイア、剣聖カイン、聖騎士ヒースクリフ、そして……先日、氷の魔城を見事に攻略したという大聖ソアラ……!」

「――っ!?」

「吾輩たちは諸君らを主力と考えて作戦を考えておる! 厳しい指令を出すかと思うが、それに見合った恩賞は必ずや與えることを、エデルジア王家の名をかけて約束しよう!」

エデルジア國王が聲をかけた錚々たるメンバーと共に自分の名前が呼ばれ……私は驚いてしまいました。

私の実績など、他の三方と比べると大したことはありませんのに……。

名前が呼ばれた瞬間、皆さんが一斉にこちらを見たので々恥ずかしかったです。

「それでは、各パーティー、そしてそれを支援するために集まってくれたフリーの冒険者たち。各々に出される指令については各自擔當から聞いてくれ!」

どうやら幾つかの班に別れてそれぞれ指令を擔當の方から説明して頂くみたいです。

これだけの人數なので當然でしょうけど。

さて、私はどちらに行けばよいのでしょうか……。

「大聖殿はこちらですよ! 私が擔當ですから!」

「クラウド様が擔當の方でしたか……」

ここまで道案をしてくださったクラウドは私の他にも何組かパーティーを集めていました。

その中には、先程……アルカマッハ五世から私と共に名前を呼ばれていた――

「ガイアだ。よろしく頼む。厳しい戦いになるだろうが、チームワークで乗り切ろう。オレのことは同じパーティーの仲間と同様に頼ってくれ」

白い歯をキラリとらせながら大賢者として名を馳せているガイアは挨拶をしながら頼り甲斐のある言葉を私たちにかけてくれました。

魔王の幹部を倒した実績もある彼のパーティーはゼノンと同様に魔王討伐を期待されているパーティーです。

彼らと共闘できるなら、私たちも安心して戦うことが出來そうです。

「私たちはこれから地獄島と呼ばれる場所へと船で向かいます。そこに魔王軍の幹部である死霊使い・ゲリュセルスが他の幹部クラスの連中と共にこちらに攻め込むための戦力を集めているという報がったからです」

船での移となりますか。

道中に襲われると厄介ですね……。

死霊使いゲリュセルス――確か、殺した人間のを意のままにるという厄介なを使うと聞きます。

その他にも幹部がいるとなると、厳しい戦いになりそうです――。

「それでは、港の船まで案します。付いてきてください――」

◆ ◆ ◆

「大きな港ですわ。やはり軍備が整っていますと海運などにも力をれていますのね」

「ふーむ。しかし、どこか変ではないか? 港はあれども船がない」

「これから來るんじゃないの? ソアラ姐さん、大聖の力を大賢者にも見せつけましょう!」

港についた私たちですが船はまだ來ていません。

ジンはそれに違和じていますが、私も同です。

どこかで襲われてしまった可能もあります……。

「おかしいですね。もうとっくに約束の時間は過ぎています。ど、どうしましょう! ま、まさか魔王軍の襲撃が……!? ま、まずいです! 初手から失敗したら陛下にどう謝罪すれば――」

「落ち著きたまえ。そのためのオレたち、なんだろう?」

「大賢者殿――」

慌てふためくクラウドでしたが、大賢者ガイアが彼の肩を叩くと呆けたような顔をしてガイアの顔を見ました。

「そ、そうですね。今やれることを考えることにします」

「ああ、そうしよう。まずは手分けして――。――っ!?」

「極大火炎弾(メテオノヴァ)――」

「「――っ!?」」

突如、クラウドの目が赤くり――ガイアの元に手をおいて大火球で攻撃します。

こ、これはどういうことですか? まさか、クラウドは――。

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