「られていただと？　この僕が、あの白服に……！」

苦々しい表でゼノンは白服にられていたという話を聞いていました。

彼はプライドの高い方でしたから、魔王軍に良いようにられてしまったことが許せなかったのでしょう。

「あの白服！　僕をこんなにしただけじゃ飽き足らず好き勝手しやがって！」

「やはり、あの方が勇者様のをこのような形に……？　魔王軍に捕まったということでしょうか？」

「馬鹿言え！　僕が捕まるはずないだろ！　あいつが今よりも強い力を與えると言ったから、魔族の力を手にれようとしたんだ」

はぁ……。ゼノンは自らんであのような力を得ようと怪しげな男の言いなりになったと言いました。

そこまで、考えなしにく方では無かったと思うのですが……。

どうやら、リルカやアーノルドが離れて心にかなり余裕が無くなったのかもしれません。

「僕は力を得た。こんな見た目になりながらも、Ｓランクスキルの力を更にパワーアップさせて……、素の能力だって數段強くなった。だが、Ａランクスキルしか持たぬお前に取り押さえられる程度だったというのか」

「勇者……様？」

「気に食わないんだよ。僕が上手くいかない間に、お前は凡才のくせに僕と同格まで上がってきて、僕がし遂げようと必死になってるのを嘲笑うかのように、氷の魔城まで攻略した」

々とショックだったのか、ゼノンは顔を歪ませて私が宮仕えになったことや氷の魔城を攻略したことも、こうして取り押さえられたことも悔しいと心を吐します。

特に彼のプライドを踏みにじるつもりはなかったのですが、どうやら彼はそう思っていないみたいですね……。

「勇者様の方が斷然強かったですよ」

「はぁ？　だが、現に僕は取り押さえられて――」

「白服の男は勇者様に単純な命令しか下せなかったみたいです。近くにいる人たちを無差別に攻撃する、とか。私をとにかく倒す、とか……。ですから、勇者様の攻撃って単調で読みやすかったですし、単純なにも引っかかってくれたのですよ」

実際、ゼノンのきを止められたのは作の命令が雑だったことが大きかったのです。

でないと、あんなにヒラヒラ躱せませんし、攻撃に一度當たればアウトだったのできが殆ど完璧に読めたことは確かな勝因でした。

「じゃあ、何か？　僕がられてさえいなければお前は負けていたのか？　僕とまともにやり合えばお前が負けるとでも？」

「それは、そうですよ。というより、今の勇者様のスペックに勝てる人などそうは居ません」

何となくの客観的な事実を話すとゼノンの顔はみるみる明るくなります。

目にはあの頃のような自信がみなぎり、覇気が戻ってきたように見えました。

「あはははは、そうか、そうか。そりゃあ、そうだよなー！　僕のほうがソアラよりも上に決まっているのに、何で僕は自信を無くしていたんだ！　そっか、られていた時のきはそんなに悪かったかー！」

上機嫌そうに笑うゼノン。

元気になられたようで何よりです。

どうやら、自分の中の尊厳を取り戻したみたいです。

「こんな手足でも――！　まぁ、悪くないか。絶対的な強さを手にれたんだし。イカのは確かに僕の剣技を更に強くする！」

腕をギュンとばして剣で巖山を割く彼は、自分の強さをようやく実したみたいです。

正直に申しますと、そのおは早く治した方が良いと思いますが、彼は気にしないことにしたらしいです。

「ソアラ・イースフィル！　大聖とか言われて調子に乗っているみたいだが、その天狗の鼻をへし折ってやる！　僕が魔王軍の幹部を倒しまくって、全世界に勇者ゼノンの名を轟かせることでな！」

私、天狗だったのでしょうか。

どうやらゼノンからはそう見えているらしいです。

そんな彼は勇者として魔王軍の幹部を倒すと意気込みを語り、とんでもない能力でジャンプして、ザパンと音を立てて海の中に潛りました。

さて、死霊使いゲリュセルスも余裕を持って倒せましたし、無事にゼノンも止めることにも功しました。

戻りましょう。皆さんが待っている船へ。

地獄島での戦いがようやく終わりを告げました――。