《【書籍化】婚約者が明日、結婚するそうです。》2

洗濯を干し終わって家に戻ると、部屋を出たときと同じように母が泣いていて、父が必死にめていた。

今朝、エイダ―の結婚の知らせを聞いてから、ずっとこんな調子だ。

(たしかに、おじさんとおばさんの態度はひどかったけどね)

ラネは、今朝のことを思い出して溜息をつく。

息子のエイダ―が魔王討伐パーティに選ばれてから、彼の両親は村長よりも大きな顔をするようになっていた。

エイダ―から連絡がる度に広場に村人たちを集め、エイダ―が兇暴な魔を倒したとか、ドラゴンと対峙したとか、そんなニュースを教えてくれる。

最初は大喜びだった村人たちも、あまりにも頻繁に呼び出されるため、なかなか集まらなくなっていた。

たしかに魔王を倒してくれる一行には謝しているが、仕事をしなければ食べていけない。だから今朝も、最初に集まったのは四、五人だったらしい。

それを、本當に大事な発表だからと、村人全員を強引に広場に集めたエイダ―の父はこう言った。

「息子のエイダ―が、聖アキ様が結婚することになった。結婚後は爵位と領地を賜る予定だ」

それを聞いた村人たちの視線が、ラネに集まる。

ふたりが結婚の約束をしていたことは、村中の人たちが知っていた。

哀れみや好奇の視線を向けられても、ラネは表ひとつ変えずにいた。

(何となく、帰ってこないような気はしていたのよね)

彼が出立してから二、三年は、頻繁に手紙が屆いていた。

贈りをもらったこともある。高価なものではなかったが、エイダ―が選んでくれたものだと思うと嬉しかった。

もちろん返事も出した。

ギルド宛に出した手紙は、彼が旅を続けていることもあって屆くまで時間が掛かっていたが、それでも途切れず続いていたのだ。

けれど魔王討伐パーティに選ばれてから、ぴたりと手紙が途絶えた。

さすがに魔王討伐の旅は過酷だろう。

ラネもそう思って、手紙を出す代わりに毎日、教會で彼の無事を祈り続けた。

それから一年ほど続いた旅も、魔王討伐という偉業をしえて、ようやく終わった。

ラネは心から安堵して、さっそく彼の無事を喜ぶ手紙を書いた。

けれど、エイダ―から返事はこなかった。

王都では毎日の祝賀會やら、聖アキを稱える祭りなどが続き、忙しいのだろう。落ち著いたらきっと、連絡をくれるはず。

そう思っているうちに、もう一年が経過していた。

その間に聞こえてきたのは、エイダ―が剣聖の稱號と、聖の騎士に任命されたという噂だった。

いつも親切だったエイダ―の両親が、急によそよそしくなったのもこの頃だ。

きっと、聖との結婚の話が出ていたのだろう。

    人が読んでいる<【書籍化】婚約者が明日、結婚するそうです。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください