《【書籍化作品】離婚屆を出す朝に…》14、紫奈、霊界裁判に召集される
「ここは……」
気付けば、あの円卓の真ん中に座っていた。
周りには赤翁《あかおきな》、青翁、緑翁……、十人の翁《おきな》が座っている。
「久しぶりじゃの、芥城《あくたぎ》紫奈《しな》。
リベンジは進んでおるかの?」
赤翁の言葉に青翁がメガネを読みながら答えた。
「報告致します。芥城紫奈はこの數日で、過去の自分を反省し、多くの気付きを得たようでございます。
その結果、針のほど小さかった視野がぐんと広がり、様々な現実が見えたようでございます」
「なるほど、確かに多くの呪縛からは解き放たれたようじゃ」
十人の翁はうんうんとそれぞれ肯いた。
「あの……、もしかしてここにいるという事は私は死んでしまったのですか?
え? 私、霊界裁判の事はしゃべってません!
待ってください! まだもうし……」
「落ち著くのじゃ、芥城紫奈。
死んだわけではない。
ここはそなたの夢の中じゃ」
「夢の中……」
「そなたの夢は、今われらが作している」
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「そ、それで嫌な夢ばっかり……」
「うむ。そなたがオプションをつけると申したではないか」
「た、確かに……。
でもオプションってもっと楽しいものかと思ってました」
「そ」
そ?
「そそ」
そそ? え? なに?
「そそそそ……。大笑いじゃ、そそそ……」
わ、笑い聲? 翁たちが忍び笑いをしている。
『し』で笑うなと言ったから『そ』で笑ってる……。
き、気持ち悪い。
「地獄行きのそなたに楽しいオプションなどある訳がなかろう」
「わ、分かってます。だからもうしだけ償いを……」
「うむ。じゃがそなたに、もう一つ選択肢が出來たのじゃ」
「選択肢?」
途端にどこからかパラッタラ~ッ! というラッパのような音が聞こえた。
え? なに?
「おめでとう、芥城紫奈。
そなたは現世で意味ある何かを得たという事で、地獄行きは逃れた。
そして生まれ変わりの権利を得たのじゃ」
「ええっ!! 本當ですか?
ほんの數日の事なのに……」
「時間ではないのじゃ。
どれほど膨大な時間をかけようと何も得られぬ者もいる。
現にそなた自がいい例じゃろう。
逆に僅かの時間でも多くの悟りを得る者もいる」
「そ、それで私は今度はどんな人に生まれ変わるのですか?」
「うむ、これじゃ」
赤翁が黃翁に目配せすると、黃翁は天井を指差し、スクリーンを開いた。
そしてザン! と現れたそれは……。
「……」
「あの……」
「ただの大きな石にしか見えませんけど……」
そう。
巨大な丸い石が映っていた。
「うむ。ただの石ではないぞ。
しばしの間は、ヨネ婆さんの漬石として過ごす事になるじゃろうが、その後、數百年土に埋もれた後、由緒ある神社の神として祭られる予定じゃ」
「す、數百年って……」
だいたいヨネ婆さんって誰?
「鉱もまたされる事によって魂を宿すのじゃ。
ヨネ婆さんの漬石へのがそなたを宿すのじゃよ」
「い、嫌です! 何百年も石になって暮らすなんて!」
「うむ。鉱の時間は瞬く間じゃよ。
一年が一時間ぐらいにじる事じゃろう」
「嫌です!!」
「なんじゃ。地獄行きを逃れたくせに厚かましいのう」
「次も人間がいいです!!
人間にして下さい!!」
「そ」
え? まさか?
「そそ」
やっぱり?
「そそそそ……。図々しい……そそそ……」
「『そ』で笑わないでもらえますか!
気持ち悪いんですけど!」
「……」
翁《おきな》達は気分を害したように黙り込んだ。
「そなたが『し』で笑うなと言うから『そ』にしたのに……」
いや、他に『は』とか『ふ』とかあるだろう!
なんで『そ』よ!
「まあよい。とにかく人間に生まれ変わりたいと言うなら、まだまだリベンジが必要じゃな。
いくら反省したと言うても、まだ実績が足りん」
「実績?」
「中には反省した反省したと言うて、一瞬で忘れて同じ過ちを繰り返す者もいる。
反省を深く心に刻み、の糧《かて》として、実踐せねばならん」
「……はい」
「まだまだ茨《いばら》の道じゃぞ? それでも戻るか?」
「はい。お願いします」
「うむ。では行くがいい」
さらなるリベンジの道へ……。
◆ ◆
「はい。はい。そうなんですか。分かりました。
すみません。今度から気をつけます」
夕ご飯の支度をしていると稚園から電話があった。
由人《ゆひと》が戻ってから三日が過ぎていたが、由人はまだ私のご飯に手をつけようとしなかった。
時折私の話しかけにうっかり答えては、しまった! という顔をしたり、意表を突かれては真っ赤になって部屋に逃げ込む事はあっても、抗議の姿勢は崩してなかった。
由人はくして自分の考えをしっかり持っている分、とても頑固な所があった。
姑にお小遣いをもらったらしく、お腹がすくとマンション橫のコンビニで何か買って食べているようだ。
稚園の弁當もリュックにれたまま、代わりに自分で買っておいた菓子パンを食べているらしい。
その事で、ちゃんとお弁當を持たせて下さいというお叱りの電話がかかってきたのだ。
那人《なひと》さんは、このところ仕事が忙しいらしく真夜中に帰って朝早く出て行く。
時折深刻な顔をして考え込んでいるので、相談するのも躊躇《ためら》われた。
それでも食卓に準備しておいた夕食を食べて、『ありがとう。味しかった』というメモが殘されているのが嬉しかった。
でもこのままではいけない。
私は、由人が自分の抗議に大人がどう解決をつけるのか、答えを待っている気がした。
何かアクションを起こすのを待っている。
きっと、叱ってくれるのを待っている。
でも私も……おそらく那人さんも、由人を強く叱れずにいた。
私達に由人を叱る資格はあるのか?
離婚して由人を片親にしてしまう私達に……。
由人が手にするはずだった幸せを奪ってしまう私達に……。
私達は後ろめたかったのだ……。
次話タイトルは「那人、由人を叱る」です
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