《【書籍化作品】離婚屆を出す朝に…》23、紫奈、優華の本心を知る①

私は那人さんにふさわしくない。

考えるのが怖くて考えないようにしてきたけれど、本當はずっとそう思っていた。

康介の言う通り、の程を考えればすぐに分かる事だった。

那人さんには優華のような人が釣り合っている。

優華が自分の方が相応しいと思っても仕方がない事だった。

霊界裁判で言ってたように、那人さんは課題のために魔が差してしまったのだ。

私のようなに振り回されて、大変な課題を終えて、ようやく分かり合える伴と出會える予定だと言っていた。

これからようやく幸せな家庭を築けるのだと……。

その前に、この追加課題を私のために付き合ってくれている。

これ以上、那人さんの人生を振り回してはいけない。

一刻も早く、彼の人生から立ち去らなければ……。

彼の輝く未來のために……。

その未來を支えるのは……。

「優華……。

私はもうすぐ那人さんの前からいなくなるわ。

そうなった時、お願いだから那人さんと由人を支えてしいの」

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「何バカな事言って……」

優華は涙に濡れた顔を上げて呟いた。

「聞いて、優華。

優華は間違ってないわ。

那人さんの人生はきっと優華につながっているのよ。

だから親友から奪ったなんて罪悪じないで。

由人を……由人を大切にしてくれるなら、私は恨んだりなんてしないから。

ううん。優華がいいの。

優華なら安心して那人さんも由人も任せられる」

優華は驚いたように目を丸くしていた。

それからふっと笑った。

「何言ってるのよ、紫奈。

私はもうとっくに振られてるのよ」

「振られてる?」

「紫奈と病院で會った後、那人さんと話したわ。

彼は私と再婚するつもりはないってはっきり言ったのよ」

「そんな……」

「紫奈に未練があるのか、もう結婚はこりごりなのかは知らないわ。

でもとにかく、私と再婚するつもりはないって」

「でも……」

「ほんと、世の中って不公平だわ」

くすりと優華は笑った。

「不公平?」

「だってそうでしょ?

私はいつだって紫奈の何倍も努力して、相手を思いやって、人のために盡力してきたわ。

それなのに、いつも紫奈に負けてしまうの」

「負ける?」

思いもかけない言葉だった。

私が優華に勝った事なんて今まであっただろうか?

「小學校のお験だってそう。

私は高い児塾に通って、遊ぶ時間も削って、落ちたら恥よって言われながら、倒れそうなけたのに、紫奈はダメなら別にそれでいいもんって、テストはほとんど勘で書いたって笑いながら、結局かってしまった。

もちろん一緒に通えるのは嬉しかったけれど、私の努力は何だったのって思ったわ」

「そ、それは……」

自分でもいまだに何かの間違いでかってしまったと思っている。

「それに康介だって……」

「康介?」

「私が何で康介がいる時は一緒に遊ばなくなったか知ってる?」

「な、何か理由があったの?」

優華はいつからか、康介がいる時は私に近付かなくなった。

ただ仲が悪いのかと思ってたけれど……。

「康介に言われたのよ」

「康介に? 何を?」

「お前が一緒にいるとシラけるって。

大人みたいな真面目な事ばっかり言ってつまんないって」

「そんな事を……」

全然知らなかった。

でも康介なら言いそうだ。

「中學の時だってそう。

紫奈が無視した途端に、今まで私の味方だった子達までみんな離れていってしまったわ」

「あの時は……」

本當にひどい事をしてしまった。

「私はね……意識していたわけではないけど、紫奈の親友って事を利用してたのよ」

「利用?」

親友なのを利用してたのは私の方だ。

私に利用出來る何があったと言うのか。

「紫奈はいつだって友達が多くて、クラスで発言力のある子とすぐに仲良くなれて、バカな事やっても『もう紫奈だから仕方ないわね』って許してもらえるの。

わがまま言っても失敗ばかりでも、結局みんな紫奈が好きなの。

私は必死で努力して、勉強もスポーツも頑張って、誰かが困ってたら全力で助けて、面倒な役員も全部引きけて……それなのに……そんなに努力しても、自分の事しか考えてない紫奈の方がみんな好きなの。

私がクラスの中で発言力があったのは、そんな紫奈が親友だったからよ」

「そんなわけ……」

「だから紫奈が無視した途端に、みんな私から離れていったでしょ?

私は便利な人だけど、好かれてはなかったのよ」

そんな事、考えたこともなかった。

こんな自分が優華の何かを支えていたなんて……。

神様はいつも優華にばかりえこひいきをすると思っていた。

でも本當にえこひいきをされてたのは私の方だったのかもしれない。

努力の量と、けた親切の量をグラフにしたなら、理不盡なほど私の方がいい思いをしていたのだ。

それなのに努力もせずに優華ばかり幸せだと、妬んでいた。

人を妬むなら、お互いの努力の量も比べてからにするべきだ。

涼しい顔で功を勝ち取ったように見えても、その影でどれほど見えない努力をしていたのか。

そう。

他人の努力なんて見えないのだ。

だから……。

他人を妬むのなど、愚かな事なのだ。

「由人くんだってそう」

優華は続けた。

「由人くんは紫奈には反抗的だったけど私には素直だったでしょ?

公園にえば喜んで行くって言ってたでしょ?

でも知ってた?

紫奈の目が屆かなくなると、途端にしゅんと沈んでた。

由人くんは私と仲良しのフリをして、紫奈に嫉妬させたかったのよ。

紫奈に自分を気にかけてもらいたかったの。

そのために私に懐いたフリをしていただけ。

由人くんは、いつだって紫奈しか見てなかったわ」

「まさかそんな……」

だって、いつだって優華の方が上手だ、優華の方が優しいって……。

ああ……。

それも私の気を引くためだったの?

じゃあ……。

離婚の話をした時、優華の方がお母さんらしいって言ったのも……。

一杯の意地をはって……。

そんな由人を私は叩いてしまった……。

その時の由人の気持ちを考えると、心が締め付けられる。

私は本當に何も見えてなかった……。

懺悔の想いが塊《かたまり》になって、を突き上げる。

「うう……。

私は……なんてバカだったんだろう……」

込み上げる涙が止まらない。

こんな私を由人は許してくれた。

小さなを震わせて康介から守ろうとしてくれた。

母親になったなら……。

子供のを疑ってはいけない……。

どんなに反抗的に見えても……。

そこに揺るぎないがあるのだという事を……。

次話タイトルは「紫奈、優華の本心を知る②」です

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