《【書籍化】王宮を追放された聖ですが、実は本の悪は妹だと気づいてももう遅い 私は価値を認めてくれる公爵と幸せになります【コミカライズ】》第二章 ~『早朝の急會議』~

王宮の廊下を歩くハラルドは大きな欠らしていた。太が昇り始めてすぐの早朝だ。眠気を我慢しているだけ偉いと、自分を褒める。

「これで下らない用件なら処罰してやる」

會議室の扉を開ける。そこには馴染みの大臣たちと、筆頭公爵のグスタフ、そして今回の議の主催者であるフーリエ公爵が待っていた。

「さっそく會議を始めよう。それでフーリエ公。今日の議題はなんだ?」

「アルト公爵についてです」

「弟についてだとっ!」

耳にタコができるほどアルトの活躍を聞かされたハラルドは、またかという想いに駆られる。聞きたくもない賞賛を聞かされるために早朝から呼び出されたのかと、怒りをわにした。

「それで弟がどうかしたのか?」

「王子は怒りになれるかもしれませんが、どうか言わせていただきたい。アルト公爵の和をす行いを見過ごすことができません!」

「がははは、よくぞ、口にしてくれた。フーリエ公!」

眠気が一発で吹き飛ぶほどの歓喜に包まれる。アルトへの愚癡ならば、徹夜明けでも饒舌に語り合えると、キラキラと目を輝かせる。

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「それでアルトの奴はどんな問題行を取ったんだ?」

「噂には聞いているかもしれませんが、魔ビジネスでアルト公爵領は経済発展しています。金は集まり、領民たちも活気づいているとか。ですがその金は無から生まれたモノではありません。我々周辺領地の犠牲の上にり立っているのです」

例えば魔皮を素材にした鞄が売れれば、自領地で作られている牛革の鞄が売れなくなる。質の高い商品は、悪な商品を淘汰するため、フーリエ領で生産されていた裝飾品や武は在庫の山になっていた。

「分かるぞ。アルトは本當に酷い奴だ」

「王子、分かっていただけますか……」

「もちろんだとも。それでお前は何をむ」

「王家の大號令により、アルト公爵に誅罰を!」

フーリエは王家を巻き込むことにより、王國すべての力をアルトにぶつける算段だった。ハラルドは良き口実ができたと、その提案に同意しようとするが、邪魔するように大きな笑い聲が響いた。

「どうしたのだ、グスタフ公?」

「早朝からの急會議にも関わらず、容があまりにも下らなくてな」

「儂の提案を馬鹿にする気か?」

「するさ。何せその提案は、私利に塗れたものだからな」

「わ、儂は王國のことを考えて……」

「なら経済発展は喜ぶべきことではないか。アルト領が潤えば、それがそのまま王家への稅収となるのだからな」

「そ、それは……」

「さらに核心をついてやろう。貴様は序列第六位の座をアルト領に奪われないかと恐れているのだ」

序列は経済力と軍事力によって決まる。魔ビジネスで得た資金力、元負傷兵たちの軍事力。どちらもフーリエ領と比較して遜はない。

「グスタフ公、勘違いされては困る。儂の領地で囲っている兵隊はの頃から訓練を積んだエリート揃いだ。戦場から怪我をして帰ってくるような連中に後れを取ることはない。戦爭になれば我らの勝利は間違いないのだ」

「ふっ、エリート揃いか。これだから戦爭を知らない田舎貴族は……」

「き、貴様、儂を愚弄するか?」

「馬鹿を愚弄して何が悪い」

「ば、馬鹿だとっ!?」

「そうだ、馬鹿だ。負傷兵たちは帝國との戦爭を経験しているのだぞ。魔法を扱える者も多い。命を賭けられる強者の軍勢は私でさえ油斷できない相手だ。彼らを見くびる者がいるとしたら、それは馬鹿者だけだからな」

「うぐっ……」

筆頭公爵であるグスタフの軍事力は王國でも群を抜いている。そんな彼が油斷できないと口にしているのだ。

アルト公爵領の軍事力は油斷できないかもしれないと、背中に冷たい汗を流す。敗北の可能が恐怖となり、手のひらに汗を浮かばせた。

「フーリエ公、俺は良き方法を思いついたぞ」

「王子がですか?」

「問題を解決できる妙案だ」

「それで、どのような方法なのですか?」

「簡単だ。フーリエ領も軍事力を増せばいいのだ」

「はぁ」

フーリエは乾いた聲で頷く。軍事力を増すと口にするのは簡単だ。だが現実は違う。予算や人材の制限がある中では容易いことではない。

「アルト領の元負傷兵たち、そいつらを王家の命令でフーリエ領に移住させてやる」

「そのようなことが可能なのですか?」

「もちろん。なにせ俺は王子だからな」

「おおっ」

即戦力の千人はから手が出るほどにしい人材だ。必要な人件費もアルト領へと進軍し、領地を奪うことができれば十分にペイできる。

「王子、忘れていませんか?」

「なんだ、グスタフ公。俺が何を忘れていると言うのだ?」

「負傷兵は徴兵が免除されます。王子の命令を聞く義務は彼らにないのですよ」

「それこそ心配不要だ。あいつらは元々王家のために働いていたのだ。王子である俺が命じれば、その忠誠心から自発的にフーリエ領で働こうとするはずだ」

拠のない自信に満ちたハラルドは、功を確信してを鳴らす。彼の自信に釣られるようにフーリエも笑った。

だがグスタフを含め大臣たちは呆れたと目頭を押さえていた。王家の將來を心配するように小さく溜息を零すのだった。

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