第四章執筆中スタートです！

最終章は父親とハラルド王子がメインの話になります。お楽しみに！

『第四章：ハラルドとの決著』

フーリエ公との決闘から數か月が経過した。彼の所有をすべて手にれたアルトは、クラリスと共に、農園を視察していた。

「見える景すべてが農園なのですね」

「さすがは王國の食糧庫だな」

雨で輝く緑の農園に心を奪われる。フーリエ公が所有していた時は、これほどまでにしい景観ではなかった。

最初の変化はクラリスがもたらした。えた大地を回復魔法でさらに促進し、作の出來をより良くしたのだ。

そこに続くように、アルトが農園で働く従業員の待遇を改善した。搾取されていた給與系を見直し、果報酬を設けることで、作の収穫に喜びをじるようになったのだ。

改善した農園は夫婦の絆の象徴でもあった。肩を寄り添う二人に、聲がかかる。

「聖様、俺の育てた野菜を食べていってくれ」

「僕の野菜も絶品ですよ」

「儂のも一口食べとくれ」

農園の至る所から野太い聲が飛んでくる。どの聲にも好意が混ざっているのは、クラリスの好度の高さの証明だった。

「皆さん、優しい人たちばかりですね」

「特に男連中は、クラリスのことを慕っているようだな」

「娘のように思ってくれているのでしょうね」

「クラリスは鈍だな……」

「どういうことですか？」

「なんでもない。ただ君を誰にも渡すつもりはないだけさ」

「はい♪　私はずっとアルト様のものです」

二人は視察を進め、農園から街へと移する。

石造りの街は以前の面影が消えている。路上で倒れ込む者はいないし、スラムも消えた。

「聖堂教會の慈善活には謝しないとな」

「ゼノ様たちの活躍のおかげで、飢えて苦しむ人が減りましたからね」

教會による食住の提供は、貧困から大勢の人を救った。彼らはフーリエ領において、一種の英雄のようにさえ扱われている。

「聖堂教會が人気なおかげで、聖グッズも売上がびているとのことだ」

「～～ぅ、は、恥ずかしいです」

「街の中央広場には彫像も建てられたそうだしな」

「えええっ、聞いていませんよ！」

「嬉しくないのか？」

「え、だって彫像ですよ？」

「ふむ、兄上とは違うのだな」

「ハラルド様と？」

「王族は十歳の誕生日になると王宮に彫像を建てられるのだが、大はしゃぎしていたぞ。『俺は偉人だ、偉いんだ』とよく自慢されたものだ」

「ふふふ、ハラルド様らしいですね。それにアルト様の彫像もあるのなら、一目見たいものです」

「殘念ながら、私の彫像はない。なにせの頃は醜い顔をしていたからな。王族の恥だと、一人だけ除け者にされたのだ」

「アルト様……」

「だがクラリスの彫像なら問題ない。ゼノが魂を込めて生み出したそうでな。見事な出來栄えだったぞ」

「化されすぎていないかと不安になりますね」

「安心しろ。実の方が何倍もしいからな」

「ふふふ、そう言ってくれるのはアルト様だけです♪」

クラリスたちは街の中央へと進んでいく。貧困から解放されたおかげで、治安の心配はない。それどころか二人に向けられる好意がより強さを増していく。

特にの多い商業區畫へ足を踏みれた時の反応はひとしおだ。黃い聲が至る所から屆いてくる。

「アルト様はから慕われているようですね……」

クラリスは笑顔を浮かべているが、橫顔に影が混じっていた。その影は彼を奪われないかかと心配するの現れだった。

そんな折、クラリスたちの元へと一人のが近づいてくる。年が十五、六のしい淑だ。貌に衒いを含んだ笑みを浮かべながら、アルトをまじまじと見つめる。

「あ、あの、アルト様、これ、クッキーを焼いたんです。どうか食べてください」

は綺麗にラッピングされた菓子を差し出すが、アルトは微笑みながら首を橫に振る。

「気持ちはありがたいのだが、からの贈りモノはけ取らないことに決めているのだ」

「そ、そうですか……殘念です」

「そのクッキーは君の好きな人にでもあげるといい。きっと喜んでくれる」

「は、はい」

アルトがらかい対応をしたおかげもあり、は嬉しそうに彼の元を離れていく。その様子をクラリスは不思議そうに眺めていた。

「どうしてけ取らなかったのですか？」

「好意の形は好きな人に渡してこそ意味がある。私にけ取る資格はない」

憧れと好意は違う。アルトは自分に向けられたが前者だと理解していた。

「それに私はクラリス以外から贈りをけ取るつもりはない。君を嫉妬させてしまうかもしれないからな」

「ふふふ、アルト様らしいですね」

愚直な対応だが、そんな不用さを好ましくじる。クラリスは白い手を絡めると、ギュッと握りしめた。

（こんな穏やかな日常がいつまでも続けばよいのですが……」

クラリスは心で平和を願う。しかし彼は失念していた。フーリエ公がいなくなっても、彼の悪評をばら撒いていた父親が健在だということを。そしてこれからトラブルに巻き込まれていく未來を、想像さえしていなかった。