《婚約破棄された崖っぷち令嬢は、帝國の皇弟殿下と結ばれる【書籍化&コミカライズ】》4.予想外
「ええ、喜んで」
ミネルバは小さく微笑んだ。
いころからを隠すことを學んできたのだ、揺を抑えることはしも難しくない。小國とはいえ公爵家の娘なのだから、つねに冷靜さを忘れないようにしなくては。
け取った薔薇の香りを楽しんでから侍に手渡し、自室のサイドテーブルの上にある花瓶に生けるように指示を出す。
そして、洗練された仕草で右手を差し出した。
ルーファスがすらりとした長を折り曲げて、ミネルバの手にを軽く押しつける。
彼の漆黒の髪はまっすぐで癖がない。前髪が後ろに流され、れのない完璧なスタイルを保っている。手をばしてれたくなるほど艶やかでしい髪だ。
目は切れ長で鋭いが、顔立ちは目を見張るばかりに端整で、高貴な出自による自尊心で溢れている。引き締まった口元はどちらかと言えば薄くて、獨特の厳しい雰囲気がある。
皇帝トリスタンがの神なら、ルーファスは闇の神。彼が纏う22歳とは思えないほど重々しい雰囲気を見れば、『漆黒の皇弟殿下』『悪魔公爵』などという二つ名で呼ばれていることもうなずける。
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顔を上げたルーファスが口元に笑みを浮かべた。
「私は思いにふけることはないのだが。あの日以降、知らず知らずのうちにミネルバのことを考えていた」
ルーファスの手は、セオリー通りに離れていかなかった。それどころか、ミネルバの手を溫かな両手で包んでくる。
ミネルバどころか父や兄たちもたじろぐほどの熱心さで手を握りながら、ルーファスはぐいっとを乗り出してきた。黒く濃いまつげの間から、突き刺すような黒い瞳でミネルバをとらえる。
「足首の合はずいぶん良くなったようだ。ミネルバのことが心配で、仕事中に手が止まってしまうことがあったほどだ。あれほど心をかきされたのは初めての経験だったよ」
ミネルバは狼狽していることを気取られまいと顔を伏せ、灰銀の手袋に包まれたルーファスの手を見た。
(なるほど、ルーファス様は罪悪に苛まれ続けていたのね。責任が強くて、筋を通す方だという噂は本當だわ。つまりこの前のめりの態度は、彼の誠実の現れということ)
安堵しながら顔を上げ、ミネルバはにっこり微笑んだ。
「もうすっかり良くなっております。ご心配をおかけして申し訳ありませんでした、トレヴィシック公爵様」
「私のことはルーファスと呼んでほしい」
できるわけがないでしょう、という言葉が元まで出かかった。ルーファスの申し出をけるか考えるまでもなかった。はっきり言って常軌を逸している。
ミネルバは鷹揚にうなずいてみせてから、小さく首を傾げた。
「寛大なお言葉を頂戴し、恐でございます。ですが、やはり分というものがございますので──」
「私は気にしない。ルーファスと呼んでくれ、ミネルバ」
食い気味に言われて、ミネルバは鳥が立つのをじた。
(ど、どうしよう……ルーファス様のこの様子では、呼ばないほうがかえって失禮にあたってしまう……っ!)
むなしすぎる10年間の婚約者時代、フィルバートのことを呼び捨てにしたことはない。ジェフリーは言わずもがな。それに、ダンス以外で親にれられたこともほとんどない。
ルーファスが答えを求めるように、さらに強く手を握ってくる。
ミネルバは冷靜な表を保ったまま、混した頭で懸命に答えを探した。
「私のようなものにはもったいないお言葉、に余る栄に存じ──」
「ルーファスと呼んでくれ」
「恐れ多い事でございま──」
「ルーファスだ」
「……かしこまりました。それでは……」
ミネルバは禮儀正しく頭を下げ、それから小さな聲で「ルーファス」と呼んだ。
ルーファスがあからさまに瞳を輝かせる。
「ありがとうミネルバ。母や義姉以外のからルーファスと呼ばれたのは初めてだ。想像通り、とても心地よい。もう一度呼んでくれないだろうか?」
「……ルーファス」
「やはりいい。できればもうし大きな聲で──」
「う、うおっほんっ! こ、皇弟殿下、我が妻が自慢の庭で、おもてなしの準備をしております! 従者の皆様方もお疲れでしょうし、どうかお移りくださいませっ!」
父サイラスがわざとらしい咳ばらいをした。ミネルバは助け舟に謝したが、ルーファスは鷹揚にうなずいただけで手を放してくれなかった。
執事が張した様子で、先頭に立って案する。
ミネルバはルーファスと手を繋いだまま廊下を歩いて扉をくぐり、開放のある中庭に出た。
最高の庭は試行錯誤から生まれるという母アグネスの信念のもと、何年もかけて作り上げられた自慢の庭だ。花壇では母が育てた花々がしい姿を披している。
裝飾的なあずまやの下には、彩かなモザイクタイルのガーデンテーブル。その上には繊細なレースのテーブルクロスがかけられており、座り心地のいい籐椅子が7腳置かれている。
もてなしの準備をしていた母が、ルーファスの前でひざまずく。彼は母を立ち上がらせると、気安く禮儀正しい挨拶をした。
しっかりと繋がれたミネルバたちの手を見て、母が誇らしげな顔になる。
禮儀を欠くことなく振りほどく方法はないものだろうかとミネルバは頭を悩ませたが、そんなものがあるはずもなく。
執事が引いてくれた椅子に腰を下ろすと、侍たちがお茶や軽食のトレーを運んできた。
目の前に繊細な磁のカップにった紅茶が置かれると、ルーファスはようやく手を放してくれた。明らかに殘念そうな顔をして。王宮の西翼でフィルバートとセリカを叱責したのと、同じ人とはまったく思えなかった。
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