《婚約破棄された崖っぷち令嬢は、帝國の皇弟殿下と結ばれる【書籍化&コミカライズ】》1.探し
「セリカって馬鹿で無能っぽくて、異世界人どころか普通の人間以下ってカンジだけど、魅了能力だけは強いってことはわかった。國王夫妻を呪っていたことがバレたのは、セリカにとっては致命傷。あの、もう王宮へは戻ってこれないはずだ」
クリームをたっぷりつけたスコーンをせっせと口に運びながら、ロアンが瞳を輝かせた。
特殊能力を使って國王夫妻の浄化をやってのけた15歳の年は、すっかりお腹がすいてしまったらしい。
國王夫妻が會話ができるほど回復するまでには、それなりに時間がかかりそうだった。ここから先はジェムの仕事で、ミネルバたちが役に立てることはない。だから別室に移させてもらい、ロアンのの求を優先することにしたのだ。
「セリカが頻繁に降臨の地に行っているのはなぜか。わざわざそうするだけの価値があるからだ」
ロアンがふたつ目のスコーンに手をばす。それも一気に平らげて、ロアンは言葉を続けた。
「ニコラス様が一年前の結婚式でセリカを見たとき『金目當ての無能にしか思えなかった』って言ってたでしょ? つまり降臨當初のセリカは、不完全な力しか持っていなかったんだ。だから何度も降臨の地に戻って、己の不十分な力を補ってるんだと思います」
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スコーンの次はバターをたっぷりつけたパンケーキに大口でかぶりつき、ロアンはごくごくとお茶を飲んだ。
ルーファスがうなずいて、空になったカップをソーサーに戻す。
「ニコラスはこうも言っていたな、『セリカは頭が空っぽな恥知らず』だと。それは私も同だ。恐らく降臨の地に、頭が切れて策略に長けてる協力者がいるんだろう」
お茶と軽食を用意してくれた侍を國王夫妻の寢室に戻らせたので、ミネルバはティーポットを手に取った。ルーファスとロアンのカップにお茶を注ぐと、二人とも嬉しくなるような笑顔をくれる。
ミネルバはポットを脇に置いて、頭に浮かんだ言葉を口にした。
「セリカが降臨したとされる地は、王都のほど近くのレノックス男爵領ですね。たしかにアダム・レノックス男爵は下位貴族ですが賢い方で、計算高くて抜け目がないという評判があります。セリカが男爵と懇意にしていることは間違いありません」
セリカ主催の奇抜なお茶會に呼びつけられた日のことを思い出す。セリカの側には、ジェフリーの人リリィの姿があった。
『リリィ・レノックス男爵令嬢よ。以前はただのリリィで、下働きのメイドだったのだけれど──モートメイン侯爵家のジェフリーとの純に私、しちゃったの。し合っている二人が分の差で結婚できないなんて、おかしな話でしょう? だから私がレノックス男爵に頼んで、リリィを養にして頂いたの』
そう言ってセリカはにんまり笑ったものだ。
レノックス男爵は三十代半ばの見目麗しい男だ。鼻筋が真っすぐで歯並びがよく、どこかの國の王族だと言われても信じられるくらいに気高い雰囲気がある。
ロアンは二杯目のお茶を飲み干すと、ミネルバを見ながら元気よく答えた。
「レノックス男爵ってのが、國王夫妻の一件にどこまで噛んでるかは謎だけど。まあ、まったくの無関係ってことはないでしょうね。で、話は『探し』に戻るわけですが」
ロアンがパンを摑んで引きちぎり、豪快に口に放り込む。
「執事のアントンさんが、セリカは月に2、3回は東翼を訪れてるって言ってましたよね。それはつまり『何か』をここに持ち込んでるってことです。國王夫妻の寢室には人の目がいっぱいあるでしょう? あそこでバレずに力を使うのは至難の業ですもん」
「つまりそれは……セリカが自分の力を込めた『何か』を、東翼の中に隠しているということ……? 異世界人には人やに祝福を付與する能力があるって、前に書で読んだけれど。それの応用で、何かに呪いを込めているのかしら」
考えながらミネルバが話すと、ロアンが顔を輝かせた。
「そうです! 前に會ったことのある異世界人が、お守りを作って人々に配ってたんですけど。あれは幸運を呼ぶアイテムだったけど、セリカのは恐ろしい悲劇しかもたらさない!」
食旺盛なロアンがまたスコーンに手をばす。
ちょうど晝飯時になっていたので、ミネルバも遠慮なく食べることにした。まだ働いているジェムには申し訳ないが、食べられるときに食べておかないと、人前でお腹がはしたない音を立ててしまうかもしれない。
「ま、とにかくセリカは『何か』に自分の力を込めてる。それは多分、降臨の地にいかないとできないんだ。そんで、それを月に何度か東翼に持ってきて、力の切れたは回収してたんじゃないかなってのが、ルーファス殿下と僕の予想です」
ルーファスが口元に手をやって目を細めた。
「ありふれたものに見せかけて置いてあるか、どこかに隠してあるか……まあ普通に考えて、わかりにくい場所に隠してあるだろうな」
アントンに確認を取ったが、セリカは國王夫妻の見舞いよりも、東翼を好き勝手にうろついている時間の方が長かったらしい。
寶庫や王妃の裳部屋が見たい、以前許可は取ったなどと言われては、使用人たちには止めようがない。
「ロアンは優れた力の持ち主だが、やはりに近づかないことには検知するのが難しい。ひと部屋ひと部屋しらみつぶしに當たるのが、結局は一番早いだろう」
ルーファスが言うと、ロアンが嫌そうに顔を歪めた。
ジェフリーとリリィの會を目撃した日のことが、ふいに脳裏をよぎった。ミネルバはおずおずと聲を出した。
「探し……。あの、たわごとを言っているように思われるかもしれませんが……私は小さなころから、隠されているものを見つけるのが得意なんです。最近だと、モートメイン侯爵邸のの通路を見つけましたし。もしかしたらお役に立てるかも……」
スコーンにかぶりついていたロアンと、カップに手をばそうとしていたルーファスが、驚いたようなまなざしでミネルバを見た。
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