《婚約破棄された崖っぷち令嬢は、帝國の皇弟殿下と結ばれる【書籍化&コミカライズ】》1.さまざまな思い
「ミネルバ様が落ち込む必要はないですよ。フィルバートからひどい仕打ちをけて、手ひどく傷つけられて、踏みにじられまくって。どれだけ言い訳したって、奴の行は間違いだらけですよ」
ロアンがポテトケーキの皿から顔を上げ、ミネルバに向かってぴしゃりと言った。
「そうだそうだ、ロアンの言う通りだ!」
マーカスが語気を荒げる。彼がほどよく焼けている骨付きを差し出すと、ロアンは満足げな顔になってかぶりついた。
元気にはしゃぐ子犬みたいなロアンの姿に、マーカスが苦笑するように頬をゆるめる。無骨な次兄と無邪気な天才児は、森のはずれの家から一緒に戻ってくる間にすっかり仲良くなったらしい。
「フィルバートはいつだって己の利益のみを考えている。自分の求を満たすことしか頭にないんだ。俺たちがあいつを絶の淵に追いやったって? 結果が出るまで努力せず、何でもすぐに投げ出してきたのはフィルバート自じゃないか。見栄っ張りのくせに持久力に欠けていて、人の言うことにまったく耳を貸さなかったくせに」
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マーカスは呆れたように肩をすくめた。
「もううんざりだって? こっちもうんざりだ、都合の悪いことは全部忘れやがって」
「実際、逃げることにかけては天才的ですもんねー。僕が浄化したら、フィルバートのからするするっと黒い影が出てきたじゃないですか。國王夫妻のときよりはるかに強烈で邪悪なものが。あれ見てたちまち腰が引けて、うなり聲をあげながら気絶しましたもんね」
あっという間にを平らげたロアンに、マーカスが湯気の立ち上るカップを手渡す。
「ああ、鞭でしたたか打たれたような顔をしていたな。おじ気づいて逃げたところで、さらに大きな苦しみしか待っていないのに。事が萬事うまくいく世界なんてないんだよ。劣等のない人間がいないのと同じように」
ミネルバとルーファス、そしてロアンとマーカスのいる部屋のテーブルには、食をそそる豪華な食事が所狹しと並べられている。たくさん力を使ったロアンには栄養のある食事が必要だからだ。
ルーファスがソファにもたれながら口を開いた。
「自尊心というものは厄介だな。特にフィルバートのそれは、人一倍敏で傷つきやすかったらしい。事態の深刻さをようやく理解して、奴は混し絶しているようだが、どう理由をつけても『罪のない』という言葉は當てはまらない。フィルバートの罪は重く、処罰は厳しいものになるだろう」
「そうですね……」
ルーファスの隣に座っているミネルバは、小さくため息をついた。なんとも皮なことに、セリカの魔力がフィルバートの心に最大のダメージを與えてしまったのだ。
いま彼は客間のベッドに橫たわり、青い目を固く閉ざしている。神的な苦痛から一時的に逃げおおせても、目が覚めたら裁きをけないわけにはいかないだろう。
「私や兄様たちが、一生懸命頑張った結果フィルバートを傷つけてしまった。フィルバートも私たちを傷つけた。十年以上もの長い年月、お互いに傷つけあって……。フィルバートの苦しみや葛藤にもっと早く対処ができていたら、セリカが呼び出されることはなかった。そう考えると悔やまれるし、自分の無力さをじます」
「ミネルバ、君は自分に厳しすぎる。ジャスティンもそうだが……」
ルーファスはそう言って、ミネルバの手を取った。
「フィルバートは苦しみや葛藤以上に、大きなエゴを抱えていた。君たち兄妹が大変な努力をするのを橫目に、ありのままの自分でい続けた。楽な方に飛びつくことに慣れすぎて、異世界人召喚がどんな厄介ごとを引き起こすか、深く考えなかったんだ」
「そうですよ。はっきり言って自業自得です」
ロアンが厳しい面持ちでうなずく。
「自分自をすることって大切ですけど、フィルバートの場合は自己が強すぎます。自分に対する自信のなさを打ち破るために、人は誰しも闘ってるってのに。僕はあいつに、ひとかけらの同心も持ち合わせちゃいませんね」
ふんと鼻を鳴らして、ロアンは魚の揚げを口に放り込んだ。
「ルーファス様、あのとんでもない臆病者を縄でふん縛って、セリカ降臨の地に連れていくべきですよ。レノックス男爵の中にまんまと嵌ったんだとしても、異世界人の能力を私のために使おうとしたんですから。セリカをこっちの世界に呼んだ以上は、ぽいっと捨てることは許されません。どうあっても、最後まで責任を取らせなきゃ」
ロアンは甘い香りのプティングを手に取り、宙を見るような表になった。
「セリカは恐らく自分の意思で魔力を使ってるんで、擁護するつもりはさらさらないですけど。こっちに引っ張られてきたことで彼の人生は取り返しがつかないほど変わってしまった。それはかしようのない事実ですよ。セリカを自分の人生に巻き込んでおきながら逃げるのは卑怯です」
鼻の頭を掻きながら、ロアンはひと呼吸置いた。
「僕はまあ、異世界人とは因縁が深くてですね。わけあって、小さなころからごく自然に親しんでいたというか……。命を助けてもらったこともあるし、逆に殺されそうになったこともあったりして。あいつらも普通の人間で、いい奴も悪い奴もいるのを知ってます」
マーカスが小さく目を見開く。ロアンは天真爛漫に見える年だが、ミネルバたちには考えもつかないような人生を歩んできたらしい。異世界人に関するさまざまな知識が頭にっているのは、ただ単に天才だからというわけではなさそうだ。
「セリカは決して非の打ちどころのない人間とは言えないし、多分、呼び出した側が期待するような力の持ち主じゃなかった。でも生き延びるために、唯一持っている魅了の力に頼らざるを得なかったのかもしれない。彼と対決するときには、フィルバートは近くにいるべきです」
そうだな、とルーファスがうなずいた。
「フィルバートにとってどれだけつらく、をえぐるものになるとしても、奴はセリカとレノックス男爵と向き合わなければならない。それは処罰のひとつでもあるし、異世界人にとって召喚者の存在はやはり大きいからな」
「その前に、私がレノックス男爵の正を突き止めなくてはいけませんね。マーカス兄様が消えた従叔父の持ちを、コリン兄様がレノックス男爵のいころの肖像畫を持ち帰ってくれましたし。この手がかりがあれば、きっと千里眼が使えると思います」
ミネルバの手を握るルーファスの目が、しかげった。ミネルバは大丈夫という気持ちを込めてうなずいてみせた。
フィルバートの現狀が自業自得だということはわかっている。それでも彼の心の狀態に気づけなかった罪悪が、心の中から消えることはないだろう。
マーカスは吹っ切れているようだが、彼の枕元に付き添っているジャスティンとコリンも、きっとミネルバと同じ気持ちを抱いているはずだ。
しかしいま必要なことは罪悪に押しつぶされることじゃない。ミネルバはルーファスを安心させるように微笑んだ。
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