《【書籍化】天才錬金師は気ままに旅する~世界最高の元宮廷錬金師はポーション技の衰退した未來に目覚め、無自覚に人助けをしていたら、いつの間にか聖さま扱いされていた件》20.新しい力の試し打ち

新しい仲間、メイドロボのシェルジュを仲間に加えて、私たちの旅は再開した。

目的地は、エルフ國アネモスギーヴ。

奴隷のゼニスちゃんの故郷だ。國が今どうなってるのか、そして、散り散りになった家族を探すため。

地竜のちーちゃんに馬車を引っ張ってもらう。

者臺にはシェルジュが座って、ちーちゃんの手綱を握っていた。

シェルジュは魔導人形《ゴーレム》なので、冷卻《クール》ポーションもいらないし、寢ずに仕事することができる。

まあもっとも、荷臺を引っ張るちーちゃんは生きなので休みは取るんだけどねー。

とはいえ、者が増えてくれてよかった。これで奴隷ちゃんたちの負擔も減らせるしね。

「マスター」

「……?」

「マスター。セイ・ファート様」

「お、おう……私のことか。なによシェルジュ、急にマスターなんて言って」

作ったのは私の師匠ニコラス・フラメルだろうに。

「このマークⅡボディは、セイ・ファート様がお作りになられました。なので現在のマスターはセイ様となります。ゆえにマスターと呼稱したまでです。以上」

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「ああそう。好きにしたら。んで、なぁに?」

「敵です」

馬車が止まる。ホロを避けて外を見ると、確かに黒い犬の群れがこちらにやってくる。

ひょこっ、とゼニスちゃんが顔を出す。

「……黒犬《ブラック・ハウンド》です。Aランクのモンスター。群れで行し、その牙には毒が含まれてます」

「さすがゼニスちゃん、知り~。さて……」

荷臺から、トーカちゃんが降り立つ。

「拙者の出番でござるな! セルジュ殿は皆を守ってくだされ!」

諾は拒否されました。以上」

「なんと!? どうしてでござるか!」

「私への命令権限はマスターにしか付與されておりません。以上」

トーカちゃんが半泣きだった。そりゃそうだ。任せるぜ、って仲間に言ったら拒まれたんだもんな。

ええい、頭の固いロボメイドめ。

「トーカちゃん、黒犬倒して。セルジュ、、あんたは近づいてきた犬を迎撃して、私たち守って」

「YES・マイロード」

トーカちゃんが武を抜いて、その場に構える。

槍を構えて、そして高速で突っ込んでいく。

「【砕槍《ばくさいそう》】!」

槍が炎を纏って、黒犬にぶつかる。

ドガァアアアアアアアアアアアン!

黒犬は木っ端みじんとなった。

「すごいのです! 一撃なのです! トーカちゃんすごいのですー!」

「……あれは魔道ですか、セイ様?」

私はゼニスちゃんに説明する。

「魔道とはちょっと違うかな。あれは魔力がないとかないし。トーカちゃんは魔力をほとんど持ってない」

「……では、魔道ではないと」

「そ。あれは槍の表面に、私が作った特殊な火薬が塗られてるの。一定以上の早さで突きを放つと、熱で発を起こす仕組み」

トーカちゃんが槍をぶん回すたびに、ぼがーん、どごーんと発が起きる。

「……すごい。魔力を必要としない、新たなる魔道を作るなんて。さすがセイ様です」

トーカちゃんパワーで、みるみるうちに黒犬たちの數が減っていく。

敵の攻撃を見切り、回避して、急所に槍を突き刺す。

実に流麗な槍捌きだ。シェルジュとの戦闘訓練のおかげで、きに無駄が無くなった気がするわ。

「……Aランクモンスターの群れを一人で相手取るなんて。セイ様の訓練のたまものですね」

「いやいや。元々あの子は、あれだけやるポテンシャル持ってたのよ。私はただ助言しただけ。すごいのはトーカちゃんだから」

しかしなかなか、黒犬が諦めてくれないわね。

「ダフネちゃん、敵のボスってわかる?」

「はいなのですっ!」

ラビ族のダフネちゃんが耳を立てる。

ぴくぴく、と耳をかして、周囲を探る。

「ばばう!」「ぎゃうぎゃう!」「がぅううう!」「ぐぎゃぎゃう!」

ダフネちゃんはビシッ、と一匹の黒犬を指さす。

「あいつなのです! 他の犬にめーれーだしてたのです!」

ダフネちゃんの両耳には、耳飾りをつけている。

これは私が開発した魔道

音をより効率よく、聞き分けることを可能とする。

ダフネちゃんは耳がいい。が、よすぎるせいで、生活してると出るわずかな布のこすれる音すらも聞き取ってしまってしまう。

だから無意識に、ダフネちゃんのは音量を調整していた。自らのを守るために。

そう、本來の聴力の良さを、ダフネちゃんは発揮できないで居たのだ。

そこで私の渡したイヤリングの出番である。

魔力を込めると発する。

オンオフが可能で、オフにすれば生活雑音をすべてカットし、私たち人間と同じレベルにまで聴覚レベルをさげられる。

オンにすれば、この雑音の中から聞きたい音だけを、正確に聞き取ることができるのだ。

「このイヤリングやっぱりすごいのですー! ずっとずっと楽に生活できるのですー! おねえちゃんすごーい!」

これもまた、すごいのはダフネちゃんだ。

この魔道は別に聴覚を倍増させるんじゃない。本來の耳の良さを際立たせるだけ。

あくまでも、補助道でしかないのよね。

「じゃ、ゼニスちゃん。あとやっちゃってー」

「……はい。【風刃《ウィンド・エッジ》】!」

ゼニスちゃんが両手をばし、魔法を発

詠唱もなく、風の刃が高速飛翔して、リーダーである黒犬をズタズタに引き裂いた。

リーダーを失った犬たちは、撤退していく。

「お疲れー。いいじじゃん、無詠唱魔法」

これも私が教えてあげた技だ。

魔法を詠唱せずに使う方法。

私の師匠、ニコラス・フラメルは錬金師のくせに、魔法の腕も一級品だった。

その技をなぜか、魔法使いじゃない、錬金師の私にも叩き込んできたのよね、あの師匠。

「……すごいです。魔法を詠唱せず使うなんて、聞いたことないです」

「あれ、そうなの?」

「……はい。詠唱するのが當たり前ですから、この世界では」

ふぅん、そうなんだ。まあ詠唱しない方がゼロタイムで魔法が使えるし、実踐向きだと思うんだけどね。

なんでみんな使わないのかしら? ま、どうでもいいけど。

「おお! 拙者達……強くなってるでござるなー!」

「なのですなのです! お姉ちゃんのおかげなのですー!」

「……セイ様のおかげで、我々も強くなれました。ありがとうございます」

奴隷ちゃん達が私に謝してくる。

「いやいや、みんな元々これくらいできる力あったんだって。私は背中を押しただけ。頑張ったのは君らだから」

と、そのときだった。

ずもも……と砂の地面が盛り上がって、新しい敵が現れる。

「うわー、でっかいミミズねぇ」

「……さ、砂蟲《サンドワーム》!? SSランクのモンスターが、どうしてここに!?」

ゼニスちゃんが驚いている。

どうしても何も、この辺が城だったのだろう。

というか、あの犬の群れも、こいつから逃げてきたのかな。

「さ、さすがの拙者も……この巨大な化けは……」

「……わ、私も……自信ありません」

あらま、二人ともだめかー。

「じゃ、私の番かなー。シェルジュ。ナンバー11」

シェルジュはメイド服を著ている。

エプロンの前ポケットに手を突っ込んで、そこからポーションを取り出す。

あのメイドロボには、ストレージという機能がある。

ポケットの中には異空間が広がっていて、たくさんのものが詰めてあるのである。

「……上級《ナンバーズ》ポーション。ナンバー11。【裂ポーション】です。以上」

「はいじゃー、投擲してちょーだい」

シェルジュは大きく足を振り上げる。

スカートが完全にめくれて、ドロワーズが見えてる。

ま、でもロボだしね。見られてもOKでしょ。

人間とは思えない豪腕で、上級ポーションの瓶を投擲。

瓶は正確に、砂蟲《サンドワーム》の頭部にあいた、巨大な口の中にる。

そして……。

チュッドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

側から、大発を起こす。

細胞のひとかけらも殘さない、すさまじい火力を発揮していた。

裂ポーション。酸素にれると同時に化學反応が起きて、すさまじい発を生む、上級ポーションだ。

「うむ、いいじね」

上級ポーションの威力のテストもできたし、よしとしよう。

「って、どうしたのみんな?」

奴隷ちゃん達ぽかーんとしてる。

やがてパチパチと拍手する。

「さすがでござるな! 主殿!」

「すっごーい! どっかーんて!」

「……多強くなろうとも、私たちなどでは、足下にも及ばない。さすがセイ様のポーションです」

奴隷ちゃん達が私を褒めてる。

「いや敵を払ったの君たちだから、もっと誇っていいのよ」

「マスター。全部味しいところを持っていっておいて、その口ぶりだと嫌みに聞こえます。以上」

ええ、うっそーん。

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