《僕の妹は〇〇ですが何か問題ありますか?》忠告
僕は妹が泣き疲れて眠ってしまった後、晝ごはんを作ろうとした。
すると、座敷子の『座敷《ざしき》 子《わらこ》』がそれを止めた。
「何をするつもりですか?」
「何って、晝ごはんを作るんだよ」
彼は僕が右に行こうとすると、それに合わせて移し、左に行こうとするとそれに合わせて移した。
「退《ど》いてくれよ、頼むから」
「実の妹に自分を否定されただけで失神するような人を臺所に立たせるわけにはいきません」
人が忘れようとしていたことをほじくり返すなよ。
「そうか。けど、今はをかしていないと気が済まないんだ」
「でしたら、食でも並べていてください」
それはダメだ! なぜなら、お前の料理の方がおいしいから僕はもう作らなくてもいいと言われるかもしれないからだ!!
「嫌《いや》だね。誰が何と言おうと、今日の晝ごはんは僕が作るんだ」
「頑固《がんこ》者! しは自分ののことを考えてください! 昨日の戦いであなたのはとても不安定になっているのですよ? なぜそれに気づかないんですか!」
不安定?
あー、鬼の力を久々に長時間使ったせいで鬼の力に支配されかけてたから心配してくれているのか。
案外、他人思いなんだな。
「それは分かってるよ。けど、それとこれとは話は別だ。家事は僕の生活の一部みたいなものなんだ。やらないとが疼《うず》くくらいに」
「……分かりました。もう何も言いません。忠告はしましたからね」
彼はそう言うと、僕の右手の甲に『守』という字を書いた。
それが何を意味するのかはよく分からなかった。
しかし、その直後、僕のは妙に軽くなった。
不思議だ。
こんなことは今までなかったのに。
もしかして、これは子《わらこ》の力……なのかな?
僕が彼にそれを訊《たず》ねようとした時にはもう彼はこの場にいなかった。
やれやれ、優しいのか、辛口なのかよく分からないな。
僕は心の中でそう呟《つぶや》くと、今日の晝ごはんを作り始めた。
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書籍版4巻は、2022年7月8日発売です! イラストはかぼちゃ先生に擔當していただいております。 活動報告でキャラクターデザインを公開していますので、ぜひ、見てみてください! コミック版は「ヤングエースUP」さまで連載中です! 作畫は姫乃タカ先生が擔當してくださっています。 2021.03.01:書籍化に合わせてタイトルを変更しました。 舊タイトル「弱者と呼ばれて帝國を追放されたら、マジックアイテム作り放題の「創造錬金術師(オーバーアルケミスト)」に覚醒しました -魔王のお抱え錬金術師として、領土を文明大國に進化させます-」 帝國に住む少年トール・リーガスは、公爵である父の手によって魔王領へと追放される。 理由は、彼が使えるのが「錬金術」だけで、戦闘用のスキルを一切持っていないからだった。 彼の住む帝國は軍事大國で、戦闘スキルを持たない者は差別されていた。 だから帝國は彼を、魔王領への人質・いけにえにすることにしたのだ。 しかし魔王領に入った瞬間、トールの「錬金術」スキルは超覚醒する。 「光・闇・地・水・火・風」……あらゆる屬性を操ることができる、究極の「創造錬金術(オーバー・アルケミー)」というスキルになったのだ。 「創造錬金術」は寫真や説明を読んだだけで、そのアイテムをコピーすることができるのだ。 そうしてエルフ少女や魔王の信頼を得て、魔王領のおかかえ錬金術師となったトールだったが── 「あれ? なんだこの本……異世界の勇者が持ち込んだ『通販カタログ』?」 ──異世界の本を手に入れてしまったことで、文明的アイテムも作れるようになる。 さらにそれが思いもよらない超絶性能を発揮して……? これは追放された少年が、帝國と勇者を超えて、魔王領を文明大國に変えていく物語。 ・カクヨムにも投稿しています。
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