《「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無雙する〜【書籍化】》6・ブリス、森で薬草を摘む

薬草摘みの依頼をけた俺は、街の近くの森……通稱『ノワールの森』に足を運んだ。

「薬草摘みなんて初めてだな」

生い茂る森林。いたるところに草が生えている。

しかしどれが薬草なのか分からない。ほとんどが名もない雑草だとは思うが……。

「依頼では五束摘めばよかったっけな?」

生活していくためには金が必要だ。

さっさとやってしまおう。

「《探索(リサーチ)》」

そう呟き、俺は探索魔法を発した。

ノワールの森の全図が頭に浮かんでくる。

やはりシエラさんの言っていた通り、奧には魔がうじゃうじゃいそうだ。迂闊(うかつ)に近寄らないようにしよう。

「薬草に照準を定めて……と」

すると森の全図に赤い點がぽつぽつと出現する。

の場所ではあるが……この赤い點のところに薬草があるはずだ。

俺は早速行を開始し、一番近くの地點まで移した。

「うわ……草がいっぱい生えているな」

俺の探索魔法は、四天王ものと比べてまだまだ拙(つたな)い。

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こんな狹(・)い(・)……魔王城の庭(・)くらいしかない森の範囲くらいしか、全図を浮かび上がらせることしか出來ない。

人や魔を発見するならともかく、いたるところに生えている薬草を探索魔法だけで見つけることも難しいのだ。

しかし問題ない。

俺は一束の草を手に取って、

「《鑑定》」

と次に鑑定魔法を発した。

・毒草

一舐めでもすれば《小毒》狀態になってしまう草。

薬草と非常に似通っているが、ギザギザの葉っぱが特徴的。薬草と間違えて口にれないように注意。

今手にしている草の詳細が頭に浮かんでくる。

いけねえ、いけねえ……危うく、これをギルドに持ち帰ってしまうところだったぞ。

「慎重に選んでいかないとな」

その後、いくつか薬草らしき草を手に取って、次々に鑑定魔法を施していく。

・薬草

そのまま食べるのもよし、煎(せん)じて飲むのもよし。

鼻がつーんとするような匂いがする。そのため、ハーブとしても効果があるとされている。

あった。

薬草だ。

探索魔法を使って薬草がある大の場所を把握し、鑑定魔法で薬草を識別していく。

この二つの初(・)歩(・)的(・)な魔法を使っていけば、なんとか俺でも薬草摘みがこなせそうだな。

「それにしてもけない」

四天王の『魔法』の最強格であるクレア姉なら、最初の探索魔法で薬草だけを把握することが出來るだろう。

あいつに比べれば、俺の魔法もまだまだだ。

しかし悲観的になることはない。

これから冒険者として活していくと、ちょっとずつではあるが、俺も長していくだろう。

その過程でクレア姉にしでも近付ければ……そう俺は思うのであった。

「よし。この調子でどんどん摘んでいこう」

俺はしばらく、森で薬草を摘んでいった。

奧の方には進まず、り口付近で安全に薬草を摘んでいくのだ。

この付近にいれば、危険はないだろうから。

「ふう……大分集められたな」

薬草五束ならすぐに摘めた。

しかし五束以上摘んではいけない、というルールはどこにもないだろう。余った分は換金してくれるだろうし。

なので取りあえず三十束薬草を摘み、それを収納魔法で異空間におさめていった。

これくらいならまだまだ収納魔法の容量には余裕がある。

「そろそろ帰るとする……ん?」

森を後にしようとすると、探索魔法で気になる反応が見つかった。

これは……誰かが魔に襲われている?

それは森の奧からの反応であった。

シエラさんに「不用意に近付かないように!」と言われていた場所だ。

「どうやら苦戦しているみたいだな」

明らかに魔と戦っている人は圧(お)されているようであった。

このままでは殺されてしまうかもしれない。

「どうすっかな……」

正直……怖い。

本來なら、俺一人で決して近付かないところであった。

しかし。

「見捨てるなんて真似はあまりしたくない」

そういうのは俺の分には合ってない。

魔王にもよく「人助けは悪くないぞ」と常々言われていた。

魔王のくせにそんなことを口にするなんて……としおかしさはじていたが、その証拠に魔王は無用な人殺しは決してしなかった。

そしてなにより。

「俺は四天王のヤツ等みたいになりたくない」

人を痛めつけることをなんとも思わず、自分以外の人や魔族はどうなってもいい……そういう風に考えるヤツ等にだけはな。

それにこれくらいの魔なら、俺一人でも十分対処出來る。

負ける気はしなかった。

きっと魔に襲われている人は、武を持っていないのだろう。だから苦戦しているのだと。

「助けに行くか」

気付けば俺の足は勝手にいていた。

シエラさん、忠告を破ってごめん!

そう心の中で謝りつつ、魔がいる場所へと急ぐのであった。

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