《「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無雙する〜【書籍化】》13・ギルドからの呼び出し

あれから三日が経った。

その間、俺はギルドで簡単な依頼をこなしたり、アリエルに剣を教えていたが……。

「ブリス! 見てください!」

早朝。

いつもの空き地に行くと、既にアリエルがそこで剣を振るっていた。

アリエルは俺を見つけるなり、目を輝かせた。

「いいけど……なんだ?」

「よく見ててくださいね……一度しか出來ないかもしれませんので」

アリエルが木剣を構えて、壁を凝視する。

「気斬!」

が剣を振るうと、衝撃波がひょろひょろと飛び目の前に壁に衝突。

すると壁に小さな斬り傷が殘り、アリエルはほっとで下ろした様子であった。

「や、やりましたわ!」

だが、すぐにその場でジャンプして喜ぶ。

驚いたな……いくらアリエルでも、ここまで來るのに五日はかかると予測していた。

たった三日で出來るようになるとは想像以上だ。

「す、すごいな、アリエル! もうこんなに出來るなんて……やっぱり才能がある」

「ありがとうございます! ……ですが、まだまだあなたの気斬と比べると、全然ですわね」

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アリエルは表を引き締め直す。

「そんなことはない。俺だって、ここまで來るのにアリエル以上に時間がかかったしな」

「そうなんですか?」

「ああ。だからアリエルがここまで出來るのは、正直想像以上の早さだ。おめでとう」

俺が手放しに賞賛すると、アリエルはさらに嬉しそうな表になった。

「でも……もっと頑張らないとですね……! これではまだ、戦闘では使いものにならないでしょうから」

確かにこのままでは、ゴブリンに傷一つ付けることが出來ないだろう。

せいぜい驚かれるくらいだ。彼ほどの実力なら、もっと他の手段で攻撃した方が効率がいい。

とはいえ。

「あんまりネガティブに考えるなよ。十分すごいから。この調子でやっていけば、すぐに俺の気斬なんか超える」

「やはりあなたは謙虛なお方ですね。それだけすごい実力なのに、まだそれだけ謙遜するなんて……」

アリエルの瞳がうっとりとしたものになった。

「ブリス。あなたの気斬をもう一度見させてくださいよ。なにかコツがつかめるかもしれませんから」

「ん……別にいいけど」

俺も木剣を手に取り、壁に向かって三度気斬を放った。

無論、手加減しなければ壁を破壊してしまう。斬り傷が付く程度の強さまで加減した。

斬り傷が、アリエルのものと合わさるようにして三つ出來た。

「しゅ、しゅごい! あっ……」

したためか、アリエルは臺詞を噛んでしまった。

すぐに気付いて、顔を真っ赤にする。

「……まあアリエルもすぐに出來るようになるよ」

「ブリスの剣筋が速すぎて見えなかったです……! 同時に三つもだなんて。わたくしも早くあなたのようになりたいですわ!」

「これを進化させていけば、アリエルなら《千本華(せんぼんか)》を全て気斬で放てるようになるかもしれないな」

「せ、《千本華》がですか!?」

思いつきで口にしてみたが、アリエルは話に食いついた。

「ああ」

「そんなこと出來るようになったら、あなたみたいにゴブリンキングを簡単に倒せるようになるかもしれません。躍りますね」

躍るな」

「もっと頑張らないと……!」

アリエルがぐっと握り拳を作る。

しかしそう遠くはない未來に、彼ならそれを可能とする……何故だか俺はそんな確信を抱いていた。

「……ん?」

バッサバッサ。

そんなことを話していたら、上空から鳥の羽ばたきのような音が聞こえた。

鳥だ。

鳥はそのまま降下していき、アリエルの肩に乗った。

もそれをれているようである。

「伝羽鳥(でんばどり)……どうやらギルドからのようですね」

よく見ると、鳥の口には丸められた紙が咥(くわ)えられている。

「伝羽鳥?」

「遠くの人に手紙を渡すことが出來る鳥ですわ」

「そんなことが出來る鳥なんているのか」

「ええ。わたくし、ほら……これでもSランクではないですか? 急の依頼も多いので、ギルドの伝羽鳥にわたくしの匂いを覚えさせているのですよ。街中限定にはなりますが、そのおかげで、すぐに伝羽鳥はわたくしを見つけることが出來ます」

便利な鳥だな。

アリエルは手紙をけ取ると、伝羽鳥は満足したように再び空に戻っていった。

「えーっと……なになに。ギルドに今すぐ來てしい、との容でしたわ」

「Sランク冒険者も大変なんだな。そんな風に呼び出されるなんて」

「これがSランク冒険者の使命ですからね。街の平和を守るために仕方ないことです。わたくしもこれで満足してますし」

冒険者は自由な仕事だと思っていたが、どうやらランクが上がると縛られることも多いようだ。

「取りあえず、すぐにギルドに向かわなければなりませんね」

「だな」

「では行きましょうか」

「え?」

ここで今日の所はアリエルとお別れだな。

そう思って立ち去ろうとしたら、彼はそんな俺の腕を引っ張ってきた。

「呼ばれたのはアリエルだけだろう?」

「その……ブリスにも來てしいなって」

「俺に?」

「ええ。こうやって伝羽鳥を使うということは、急の依頼だと思いますわ。だから……その、だから……ブリスも一緒に來てくれたら、心強いなって」

Sランク冒険者に頼む依頼なんて……俺が行っても、役に立てるとは思えないが。

そういう考えが顔から見えいていたのか。

「ふふ、大丈夫ですわ。なんせブリスはわたくしよりも強いですもの」

「……そうかな」

「そうに決まっていますわ。それに弟子の長も気になるでしょう? ギルドに言って、もしよかったらブリスにも參加してもらいたいです」

「弟子って……まるで俺が師匠みたいな言い方じゃないか」

「まるでじゃなくて、そうだと言っているのです」

ウィンクするアリエル。

今まで四天王から教えられる立場だったのに……いきなり師匠だなんて、俺も出世したものだ。

正直戸う。

……まあいっか。どうせ暇だしな。

俺はアリエルに連れられ、ギルドへと急いだ。

◆ ◆

「アリエルさん」

ギルドに著くと、付嬢のシエラさんがアリエルの名前を呼んだ。

「伝羽鳥から呼び出しをけまして。ブリスも連れてきたのですが、いいですわよね?」

「は、はい! どちらにせよブリスさんにもお願いしようと思っていたことですので! アリエルさんとは違って、どこにいるか分からなかったので……連れてきてもらえて助かります!」

どうやら俺も付いてきて正解だったようだな。

なんなんだろう……。

「それでどうしたんですか?」

「ノワールの森にゴブリンキングが大量出現したじゃないですか」

「ええ」

「アリエルさんに、その調査隊の隊長になってしくって」

シエラさんが言うと、俺とアリエルはお互いに顔を見合わせた。

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