《「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無雙する〜【書籍化】》22・カミラ、盜賊に絡まれる
四天王視點です。
※ブラッド = ブリス
城外、とある平原。
カミラは一人、途方に暮れていた。
「勢いに任せて出てきてしまったが……一どこを探せばいいのだ?」
腕を組んで考える。
ブラッドが見つからないまま、とうとう魔王様ご帰還の日となってしまった。
今頃殘りの四天王達はあたふたしているだろう。
「しかし……今日も空は青い」
それが唯一の救いだ。
魔王様の逆鱗(げきりん)にれれば、たちまち空は暗雲に包まれる。
まだそうなっていないのは、クレアが上手く誤魔化してくれたのだろう……と思う。
「とにかく……! 早くブラッドを見つけなければ!」
特に指針はない。
しかしその辺りの村とかを適當にぶらついておけば、いつかブラッドに辿り著くだろう。
カミラが自分の頬を両手で叩き気合いをれ直した。
歩き出してしばらくしてからであった。
馬車が前方から迫ってきているかと思えば、それは通り過ぎず、カミラの前で止まった。
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そしてそこから何人かの形相の悪い男が出てきて、彼にこう言ったのである。
「止まれ」
當初カミラはこいつ等を無視して、歩みを止めなかった。
だが。
「止まれって言ってやがるだろうか! オレ様の言っていることが分からねえのか!」
男の一人がカミラの肩をつかむ。
彼はそれを鬱陶しそうに払い、ようやく振り返った。
「貴様はなにを考えている? 私に命令するとは良い度だな」
「ああん? オレ様達を見て、分かんねえのか。舐めた口利いてるとぶっ飛ばすぞ!」
男の口調は荒々しい。さらに育ちの悪さが顔から滲み出ているようで、カミラはかなり不快な気分に駆られた。
なるほど……。
「賊の類か?」
カミラは問いかける。
「はっ……! どうとでも勝手に言うがいいさ。どうせお前の運命は変わらない」
男から返ってきたのはそんな言葉である。
男達の表は余裕に満ちていた。
カミラはそいつ等を観察しながら、こう続ける。
「……の匂いが酷いな。どうせ今まで何人も人を殺してきたんだろ。洗濯はしてるのか? いくら盜賊でもなりに気をつけなければ、にモテんぞ」
「なんだ、てめえは? ……ああ、もう面倒臭い」
男達が剣を抜き、カミラに相対する。
「てめえは人だからな。オレ様達で存分に楽しんでから、奴隷として変態貴族共に高く売れるだろう」
「へっへへ。まさかこんなところで、上玉が手にるとはな」
「楽しませてもらうぜ」
はあ……。
カミラは無意識に溜息を吐いてしまう。
やはり予想していた通り、こいつ等は真のクズだ。
人間の中には、こういう下品な輩もいる……これこそが、カミラがあまり人間を好きになれない理由の一つであった。
……まあブラッドは別であるが。
「かかれ!」
男達がカミラに襲いかかる。
しかし。
「遅い」
カミラが男達の反対側に走り抜ける。
「ん……あれ? オレ、頭が……」
それは遅れてやってきた。
飛沫が周囲に飛び散る。
一瞬であった。
そのせいで盜賊の男達は悲鳴すら上げることなく、言わぬとなったのであった。
「ふん……っ。口ほどにもないな」
これじゃあブラッドの方が何百倍もマシだ。
いや比べるのも可笑しいか。
今はまだカミラの方が強いが、ブラッドも後何年か修行を積めば、じきに彼の力量を抜き去るだろう。
とんでもない才能の持ち主。そして努力も出來る男であった。あんな人間はブラッド以外で見たことがない。
だからだろう。
つ(・)い(・)つ(・)い(・)指導に力がってしまったせいで、彼は家から出て行ってしまった。
「……さて。こんなところで道草をくっている場合ではないな。早くブラッドを探さなければ……ん?」
気付く。
馬車の中にもう一人いる?
敵意はなさそうだが、一応確認しておくか。
近づき中を見ると、
「ほう……子どもか」
一人のがいた。
両手両足で鎖で繋がれており、ボロボロの服を著させられている。
「奴隷として売られるところだったか」
カミラが言うと、は恐る恐るといったじで頷いた。
「しかしもう安心するといい。盜賊は死んだ。貴様は自由だ。どこにでも行くといいさ」
カミラはそう言い殘し、立ち去ろうとした時であった。
「……なんのつもりだ?」
去ろうとするカミラの服の端を、がちょこんとつまんでいた。
「あ、ありがとうございます……わ、わたし……村の外に遊びに行ったら、あの怖い人達に攫(さら)われちゃって……まだ変なことはされてなかったけど、このままじゃ酷い目に遭わされると思っていて……だからお姉ちゃんには、お禮を言わないとって」
たどたどしい口調である。
「そうか。まあ別に謝しなくていいぞ。貴様を助けようとしたわけでもないしな。じゃあ私は……」
「ま、待って!」
気にせず歩きだそうとすると、が一際大きい聲を出す。
「も、もしよかったら……わたしを村まで送ってくれませんか?」
「なんで私がそんなことをしなければならない」
「わたし一人じゃ帰れないから……また同じような怖い人達に攫(さら)われるか、魔に殺されちゃう……それにお姉ちゃん、とってもカッコよかったから。もうちょっと一緒にいたいなって」
まあの言うことにも一理ある。
なんら力を持たないがこんなところで放り出されても、そう遠くないうちに『死』という運命が待ち構えているだろう。
「しかしだな……私は忙しいのだ」
「お願い。お姉ちゃんの言うことなら、なんでも聞くから」
力強い瞳でカミラを見る。
(本當に厄介事に巻き込まれるな……)
カミラは深く溜息を吐き。
「分かった。貴様を元の村まで送ってやる」
「あ、ありがとうございます!」
「しかし! 私も捜しをしているのだ。村まで送っていく途中で、何度か道草をくうかもしれん。最短距離では行けないだろう。それでもよかったらだが」
「うん! 大丈夫です!」
まあ一人が増えたところで、今からしようとしている仕事に差し障りはないだろう……。
それにこんないたいけな瞳で見られれば、どうしても斷ることが出來ないお人好しのカミラであった。
「貴様、名前は?」
「ルリ」
「ルリか……良い名前だな」
一私はなにをしているのだ……。
思わぬ仲間の追加に、カミラは頭が痛くなるのであった。
次回から主人公視點に戻ります。
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