《「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無雙する〜【書籍化】》23・打ち上げパーティー

「「「かんぱーい!」」」

グラスが高々と上げられた。

「本當にブリス様様だよな!」

「ブリスのおかげで上手くいった!」

「今日のおかげで、オレはBランクに昇格しそうだぜ……!」

調査隊のメンバーが酒を飲みながら、次々と俺を賞賛していく。

「……騒がしいのは苦手だが、こういうのもいいもんだな」

俺はエールがったグラスを口に傾け、依頼達の余韻に浸っていた。

酒は初めて飲む。

飲もうとしたら、四天王の連中に「ブラッドがお酒を飲むなんて早い!」と止められていたからだ。

だが……初めてのお酒は々苦かったが、楽しそうな場の雰囲気につられて酒が進むのであった。

——俺達はゴブリンマスターを倒した後(のち)、すぐにノワールへと戻った。

無論、調査は大功。さらにはゴブリンキング大量発生の原因となった魔まで倒したのだ。

ギルドからは盛大に迎えれられ、俺達は多額の報酬金を手にして、それをみんなで山分けした。

今回組んだパーティーは、あくまで『調査隊』。一時的なものである。

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この依頼が終われば、速やかに解散となり、またいつも通りの日常に戻るはずだった。

だが、それではいくらなんでも味気なさすぎる……というわけで俺達は街で有名な酒場に繰り出し、『打ち上げパーティー』をすることになった。

もちろん俺とアリエル、そしてエドラもこの打ち上げに參加し、各々楽しい時間を過ごしていた。

「ブ、ブリスさん!? 本當に私、ここに來てもよかったんですか?」

「いつも世話になっていますから」

ギルドの付嬢であるシエラさんが、肩幅を小さくして椅子にちょこんと座っている。

本來なら一介の付嬢が打ち上げに參加することは、おかしいんだが……調査隊の他の男共が「シエラさんも來てくださいよ!」と引っ張ってきたことにより、晴れて彼も參加となった。

シエラさんは當初、

『えー? 私がですか。私、ただの付嬢ですよ? 打ち上げに參加するのおかしいですってば!』

と斷っていたが、

『まあ……ブリスさんも行くなら行きたい……かな』

と付いてきてくれることになったのだ。

「それにしてもブリスさん! 本當にすごいですね!」

「なにがです?」

「とぼけないでくださいよ。ゴブリンマスターを倒したのは、ほとんどブリスさん一人だけの力と聞いてますよ!」

「そんなことはないですよ。みんなの力が合ってのことです」

実際他のみんながいなければ、依頼達までにもっと時間を要していただろうしな。

「さすがブリスさんですね……そういう謙虛なところ、私本當に好きですよ」

「謙虛でもなんでもないんですが……」

何度目になるか分からないやり取りをした。

もう好きなだけ言ってくれ。

「今日はいっぱい飲ませてもらいますね! あっ、他の人達にもお禮言ってきますね! すぐ戻ってきますから!」

シエラさんは名殘惜しそうにしながらも、一旦席から離れた。

禮儀も忘れない良い子だなあ。

「なあ、ブリス」

次に、一人となった俺の元に近寄ってきたのはチャドである。

「お前……誰を狙ってるんだ?」

「なんの話だ?」

だよ。君だって男だ。好きな人の一人や二人いるんじゃないか?」

なにを言っている。

……こいつ、もしや酔ってるな。

「好きな人か……そんなものはまだいないな」

「はは、しらばくれるなって。誰が一番なんだ?」

「だから……」

「エドラもいいよな。ちっちゃくて可い。付のシエラさんも捨てがたい。知ってるか? シエラさんって実は冒険者の間で人気なんだぜ」

どうやらシエラさんを打ち上げに呼んだのは、そういう下心もあったらしい。

「まあ可いし、仕事は出來るからな」

「全くだ。だが……一番はやっぱりアリエルさんだろう。アリエルさん、君に隨分ぞっこんのようだな」

「俺に?」

「ああ。羨ましいよ。ノワールでもとびっきりのに言い寄られているなんて……」

アリエルは俺に好意を抱いているとは思っている。さもなければ、これだけ俺の面倒を見てくれないからだ。

しかしそれはなにも、男間での『好き』という意味ではないに違いない。

は世間知らずの俺のことが心配なのだ。だから構ってくれる。

そこを決して勘違いしてはいけない。勘違い男の末路は悲慘だと相場が決まっているからだ。

「チャ、チャド!? なにを言ってるんですかーっ!」

チャドと話し込んでいると、その様子がアリエルに見つかった。

「おっと、この話はまた今度だな。二人で仲良くお喋りしておきな」

ウィンクをしてチャドは俺から離れていった。

なんなんだ。

「全く……チャドに変なことを言われていませんか?」

「変なこと? ただ世間話をしてただけだよ」

「だったらいいのですが……あっ、お隣。座ってもよろしいですか?」

「もちろん」

アリエルが俺の隣の席に腰を下ろす。

「アリエル。もしかして結構飲んでるのか?」

「ええ……お酒なんて飲むの、久しぶりですから。こういう日くらいは飲んでも大丈夫ですわよね」

アリエルはコップ片手に言う。

「エール……じゃなさそうだな。赤味しそうなジュースみたいに見えるが、それはなんなんだ?」

「さくらんぼ酒ですわ。甘くて味しいですわよ」

「だったら俺も同じヤツを頼もう」

「ふふふ。今夜はとことんまで付き合ってもらいますわよ」

むところだ」

さくらんぼ酒を注文すると、ウェイトレスによってすぐに酒が運ばれてきた。

……うん。確かに彼の言った通り、ジュースみたいな味だ。

だが、ほのかにアルコールの匂いもじる。調子に乗って飲み過ぎてしまっては、すぐに酔っぱらってしまうだろう。

「ブリス……あなたは本當にすごい人ですね」

「突然なんなんだ」

「キレイな目……もっと見させてください」

ぐいっとアリエルが俺に顔を近付けた。

長い睫。整った鼻筋。雪原のような

の息づかいがじ取れるくらいまで顔が目の前にあって、俺はどぎまぎしてしまう。

「お、おい……」

「本當にキレイですわ。吸い込まれてしまいそう……あぁ」

「!」

アリエルが目をじーっと見たかと思うと、そのまま俺のへと顔からダイブしてきたのだ。

「ア、アリエル? どうしたんだ」

揺さぶりながら名前を呼んでみるが、返事は返ってこない。

「……酔っぱらってる」

慌てていると、気付けばエドラが隣に立っていた。

エドラはジト目で俺達を眺めている。

「結構飲んだみたいだからな」

「アリエル、いつもは冷靜沈著で真面目な冒険者だと聞いてる。それでも……こういう風に我を失ってしまったのは、きっとあなたのせい」

「俺が悪いのか?」

「悪い……というのはちょっと変な言い方。悪いじゃなくて、きっとこれは良いこと。きっとあなたと一緒にお酒を飲んで、楽しかったから。我を失ってしまった」

元ではアリエルが「ん〜、ブリス。この次にわたくしと一緒に……」と寢言を口にしていた。

どうやら眠っちゃったみたいだ。

「まいったな……」

アルコールというのは毒の一種だ。

つまり俺がアリエルに解毒の治癒魔法をかけてやれば、すぐに元の彼に戻ってくれるだろう。

だが。

「それは無粋だよな」

しばらくアリエルを膝枕して、ちまちまと酒でも飲んでおこうか。

「明日の朝……アリエル、どんな顔するんだろうな」

今から楽しみだ。

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