《「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無雙する〜【書籍化】》29・一つ目トロール

それから俺達は馬車に乗り、渓谷近くの村に到著した。

「じゃあ行くか」

村に馬車を置き、早速俺達は一つ目トロールがいる渓谷に向かった。

「では試験開始ですね」

「頑張って、ブリス」

「ああ」

アリエルとエドラに応援される。

「今回、わたくし達試験ですからね。もし危険だと判斷し、わたくし達が手を出した時點で試験は終了です」

「その場合は失格ということか」

問うと、アリエルは首を縦に振った。

「ですが……ブリスなら一つ目トロールくらい、簡単に倒せると思いますわよ」

「ブリスなら楽勝。私でも倒せるから」

とはいえ、何度も言うが油斷はだ。気を引き締めて行こう。

「《探索(リサーチ)》」

渓谷に到著して、俺は魔法を発する。

ノワールの森ほどではないが、この渓谷も十分広い。足を使って、一つ目トロールを探し出すことも時間がかかると判斷したためだ。

俺が《探索(リサーチ)》を発すると、頭の中にぼんやりと渓谷の『地図』が浮かんでくる。

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赤い點がぽつぽつと點在している。これが一つ目トロールのはずだ。

「行くぞ」

目の一つ目トロールは、し歩いてすぐのところにいた。

ゴブリンキングほどではないがトロールは巨で、経験の淺い者なら臆してしまうかもしれない。

だが。

「気斬」

俺は冷靜に一つ目トロールの背後から近付き、剣を振るう。

ズシャアアアアアッ!

一つ目トロールの背中に大きな斬り傷がつく。

その巨がゆっくりと地面に倒れていった。

「す、すごい……こんな素早く倒してしまうなんて……」

アリエルは唖然としている。エドラも似たような反応であった。

「うっし……確かこのトロールの目が依頼達の証拠になるんだったな」

倒れている一つ目トロールに近付き、生死を確認する。

目をくり抜いて収納魔法でおさめた。

「さすがブリス。あっという間に依頼は達……」

「よし。次行くか」

時間も惜しい。

俺はエドラの言葉を全て聞かず、行を再開する。

「……? ブリス。なにを言ってるんですか?」

「え?」

「今回の昇格試験は一つ目トロール一だけの討伐ですよ。後はこれをギルドに持ち帰れば、ブリスも晴れてCランク冒険者です」

アリエルがきょとんとした表になる。

「別に一(・)(・)だけしか倒してはいけない……というルールはないんだろ?」

「それはそうですが……」

「ならもうし倒しておこう。まだ渓谷には一つ目トロールがた(・)く(・)さ(・)ん(・)いるらしい。近くの村までトロールが降りてくるかもしれないし、このまま倒せるだけ倒しておこう」

それにここで終わったら、移の方が時間がかかってしまったことになるし……なんなら馬車で移している時間の方が疲れた。

今回の昇格試験においては、依頼を達することによって報酬金が貰える。それは普通の依頼とは変わらない。

一つ目トロールの目も薬の素材として、高く換金されるらしいからな。

元より一だけ倒して、直帰するつもりは頭なかった。

そのようなことをアリエル達に伝えると、

「……はあ。さすがブリスですね。ブリスにとったらこんな昇格試験、簡単なものでしたが」

「大予想は付いていた」

二人とも呆れたように溜息を吐いた。

「ダメか?」

「いやダメなことではありません。ブリスが規格外なだけですよ。普通の冒険者なら一つ目トロールを倒した時點で喜んでギルドに帰りますのに……」

「じゃあ決まりだな。あっ、もしかして早く帰りたかったか? そうなら先に帰ってくれてもいいぞ」

「そんなわけありません。ブリスにお付き合いしますよ。今からは試験としてではなく、ブリスのお(・)友(・)達(・)としてね」

アリエルがウィンクした。

なんか『お友達』の部分に険をじたが……どうしてだろう。

「私も行く。ブリスのお手伝いする」

どうやらエドラも付いてきてくれるみたいだ。有り難い。

「でも変ですね……本來なら一つ目トロールなんて、なかなか見つかりにくいはずですのに。た(・)く(・)さ(・)ん(・)いるとは……?」

「アリエル、どういうことだ?」

「いえ、まだわたくしの憶測にしか過ぎませんので。それにそういうこともあるかもしれません。早く行きましょう」

目の一つ目トロールは、ここからすぐのところにいるらしい。

俺達は早速そこまで移し、一つ目トロールを見つけた。

先ほどと同じように一つ目トロールを狩っていくとしよう。

「気斬」

撃破。

さらに三目も見つけ、再び俺は剣を振るおうとしたが……。

「待ってください、ブリス。今度はわたくしに任せてもらっていいですか? 試験は一目を倒した時點で、もう終わっていますので」

「ん……まあ昇格試験と関係ないなら、別にいいが」

「ありがとうございます」

一つ目トロールの背後を見ながら、アリエルは「ふー」と大きく息を吐く。

そして。

「気斬!」

俺と同じように剣を橫薙(な)ぎに振るった。

「GUOOOOOO!」

一つ目トロールが悲鳴を上げ、地面に倒れ伏せる。

アリエルが一発で倒してしまった。

「やりましたわ……!」

ぐっと握り拳を作るアリエル。

「すごい……! アリエルも使えるんだ」

エドラは気斬が俺しか使えないものだと思っていたのか、目を丸くしている。

「はい……! ブリスに教えてもらいました」

アリエルはどことなく嬉しそうだ。

「それにしてもさすがアリエルだな。俺が気斬を教えてから、まだ一ヶ月も経っていないのに……これだけものにするとは」

「そんなことありません。あなたの教え方が良かったからですよ」

実際……魔に使うのは初めてだったようだが、あれからアリエルは何度か気斬を功させていた。

さっきは気斬一発分だけだったが、既にアリエルはほぼ同時に何発か気斬を放てたはずだ。

驚異的な長速度であった。

「アリエルだけずるい……私もブリスに教えてもらいたい」

「はは。エドラは魔法使いだろ?」

「だったら魔法でもいいから……」

「まあエドラがそれでいいなら」

やれやれ。

この調子だと、どうやら早朝の特訓はエドラも仲間りみたいだな。

「うう……人數が増えるのは楽しくていいんですが、出來ればわたくしはブリスと二人きりで……」

「アリエル?」

「な、なんでもありません!」

ぷいっとアリエルが視線を逸らした。

……まあ気にせず、次に行くとするか。

一つ目トロールはまだ渓谷にたくさん殘っているようだ。

トロールの目を回収し、次へと向かう。

そして同じように俺だったり、アリエルやエドラが一つ目トロールを回収し……ということを一時間は繰り返してきた頃であろうか。

「やはりおかしいですわ」

ふとアリエルが立ち止まる。

「いくらなんでもおかしいです。一つ目トロールはもう十以上は倒していますわよね」

「だな」

「何度も言いますが、一つ目トロールはそれだけ頻繁に出現する魔ではありません。それなのに……短時間でこれだけ見つかるとは」

なにかを考え込むアリエル。

うむ……確かにここまで一つ目トロールが連続して出現すれば、違和じる。

それはアリエルも同じだったようだ。

「ん……? ちょっと二人とも、來てくれ」

俺が言ってし歩くと、とある崖の上まで到著した。

そして崖の下には……。

「あれも異常だよな?」

それを指差すと、二人が息を呑む。

崖の下には一つ目トロールが一ヵ所に集まっていた。

數は……六……いや七だ。アリエルの言うことが本當なら、さすがにこれだけ集まっているのはおかしいはずだ。

「どうやらなにかよ(・)か(・)ら(・)ぬ(・)ことが起こっているみたいだ」

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