《【書籍化】竜王に拾われて魔法を極めた年、追放を言い渡した家族の前でうっかり無雙してしまう~兄上たちが僕の仲間を攻撃するなら、徹底的にやり返します〜》14話。冥竜王アルティナの主となる

「ふぅうううう〜、か、完全にマグレだったけど、うまくいった……」

古竜ブロキスがかなくなったのを確認して、僕は安堵の息を吐いた。

ヴァルム竜騎士団が、貓耳族ごと古竜ブロキスを攻撃しだしたので、慌てて介したのだ。

僕が【竜王の咆哮】(ドラゴンシャウト)で、ヴァルム竜騎士団の魔法詠唱を妨害。同時に、古竜ブロキスの気を引く。

その隙にアルティナが【黒炎のブレス】で不意打ちを仕掛ける……そんな綱渡り作戦を強行した。

しかし、ブロキスはアルティナの攻撃に耐えた。このままでは、みんな殺されると死を意識した瞬間、僕の頭は冷たく冴えた。

間近で見た【雷吼(らいこう)のブレス】の魔法式が、なぜか直的に理解できた。まるで、世界の裏の裏まで見通せるかのような不思議な覚だった。

古竜には、生半可な魔法は通用しない。

僕はその閃きに従って、一か八か、【雷吼(らいこう)のブレス】を無詠唱で再現した。

まさに奇跡だった……未だに実が湧かない。

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『古竜ブロキスを倒しました。ドロップアイテム【古竜の霊薬】を手しました!』

古竜ブロキスの死骸が崩れ去り、ポンッとドロップアイテムが飛び出して僕の手に収まった。それは青い神的なをたたえた瓶だった。

【古竜の霊薬】だって? おそらく名前からして【竜の霊薬】の上位アイテムだ。

、どんな効果があるのだろう……?

『カル様、すごいです! 古竜を倒しちまうとは、さすがはあっしのご主人様です!』

僕を乗せた飛竜アレキサンダーが、嘆の聲を上げた。

い、いや、呆けている場合じゃなかった。

なにしろ、戦闘に貓耳族たちが巻き込まれて大勢の怪我人が出ている。

「アルティナ! 貓耳族たちに、すぐに手當を! アレキサンダー、レオン兄上たちの近くに降りてくれ!」

『がってんです!』

飛竜アレキサンダーに地上に降ろしてもらう。

僕は気絶した竜騎士の腰袋を探った。

やっぱりだ。最高級回復薬(エクスポーション)がっていた。

「お、お、おぬしぃいい!? 今のは一、どうやったのじゃ!?」

アルティナがすっ飛んできて、僕に詰め寄った。

「どうって言われても、無我夢中だったとしか……」

「い、いや、不可能じゃぞ! まだ基礎しか教えておらんのに。いきなり【雷吼(らいこう)のブレス】なんぞ、絶対に不可能じゃぞ!」

の驚きようは僕以上だった。

「アルティナ。悪いけど、まずは怪我人の治療が先だ。この回復薬で、貓耳族たちの救助を手伝ってしい」

「うぬ……!? まぁ、そ、そうじゃな」

僕は立派なヒゲを生やした貓耳族を抱き起こす。おそらく村長だと思われる彼は、倒れてを流していた。

「……あ、あなた様は何者ですにゃ? 竜騎士?」

「まずは、とにかくこれを飲んでください。エクスポーションです」

僕はヴァルム竜騎士団のしでかしたことに、元ヴァルム家の人間として罪悪を抱かずにはいられなかった。

思い上がりかも知れないけど、もうし早くここに來ていれば良かったと悔やまれる。

「はっ、こ、これは……? 怪我が治っていくにゃ?」

貓耳族は不思議そうにを見下ろした。

「うにゃああああああ! お父さんが生き返ったにゃ! ありがとうございますにゃあ! まさか、本當に古竜をやっつけてくださるなんて、激ですにゃ!」

ミーナが涙にむせびながら僕に抱きついてきた。大きなが押し付けられて、思わず赤面してしまう。

「ミ、ミーナ。まだ他にも、怪我をした人がたくさんいるから……!」

僕な慌ててミーナを引き剝がす。

って、もしかして、今、回復したのがミーナのお父さん? なんだか、目をパチクリさせているよ。

「ミ、ミーナ、無事だったのかにゃ?」

「はいですにゃ! すべてはカル様とアルティナ様のおかけですにゃ! にゃ、にゃ……!? とにかく、みんなの治療をしにゃいと! アルティナ様は回復魔法とか使えますかにゃ?」

「いや、わらわは死と破壊を司る冥竜じゃからな。回復魔法は、苦手なのじゃ」

「この竜騎士たちの回復薬を借りれば良いよ。みんなが怪我をしたのは、彼らのせいだからね。さっ、急いで!」

「わかりましたなのにゃ!」

「にゃ、にゃ……ミーナ。そのお方たちは一、どなた様なのにゃ? アルティナ様とは……まさか冥竜王アルティナ?」

ミーナの父親が恐る恐るといった様子で尋ねた。

「そうにゃ! 最強の竜狩りカル・ヴァルム様と冥竜王アルティナ様にゃ! ミーナのことを助けてくれたにゃ!」

ミーナはそれだけ告げると、同族たちの手當に向かった。

「なんと、それは……!」

「め、冥竜王だってにゃ……?」

「確かブロキスたちは、冥竜王はの姿をしていると言っていたにゃ」

貓耳族たちは、アルティナの正み上がった。

困ったな。竜に好き放題された彼らにとって、アルティナも恐怖の対象のようだ。そもそも冥竜王の悪名は、伝説として轟いているからね。

するとアルティナが僕の脇腹をつついて、小聲で告げた。

「……微妙な空気じゃの。わらわはカルの配下ということにしてくれぬか? 竜狩りの一族はドラゴンをテイムして使うのじゃろ?」

「えっ!? アルティナを配下だって……?」

とんでもない提案だった。

竜狩りのステータスのひとつに、いかに強大なドラゴンを支配下にれるかというのがある。

父上は聖竜を支配下にれたと自慢していたけど、その比では無かった。

「……々、甘くみていたのじゃ。わらわの母様が昔、かなりやべぇーことをしおったからのう。

カルよ、わらわのためにも頼むのじゃ! カルの命令なら、わらわは何でも聞くと、思わせておけば安心じゃ!」

「いや、それはさすがにちょっと、気が引けるというか……」

未だかつて、竜王を支配下にれた人間なんて存在しない。

ただでさえ、ミーナに僕が最強のドラゴンスレイヤーだと誤解されている。それが、貓耳族全に広がってしまいかねなかった。

「わらわを助けると思っての。このままでは、気軽に外出できなくなるのじゃ! 貓耳族とバッタリ出會って、怯えられて逃げられたら傷つくぞ!」

「それは確かに。わかった。いいよ……」

僕は押し切られる形で、承諾した。

誤った評価が広まってしまうことは、ある程度、仕方がないと割り切ろう。

アルティナがこの島で快適に過ごせるようになることの方が大事だ。

「ありがとうなのじゃ! コホン。皆の衆、良く聞いてしいのじゃ! 古竜ブロキスは我が主カル・ヴァルムが討ち取ったのじゃ! わらわは冥竜王アルティナ。カルの忠実なる配下であるぞ!」

アルティナの宣言が高らかに響いた。

貓耳族たちは、顎が外れるほどビックリ仰天していた。

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