《【書籍化】竜王に拾われて魔法を極めた年、追放を言い渡した家族の前でうっかり無雙してしまう~兄上たちが僕の仲間を攻撃するなら、徹底的にやり返します〜》20話。王から島の領主に任命される

「はぁ!? じ、自害しろだぁ!? 俺は名門ヴァルム侯爵家の跡取りだぞ! 數々の竜を討ち取ってこの國に貢獻してきたんだぞ! それを罪人扱いだと!?」

「自害する勇気が無い? よろしい。では國家反逆罪で、死罪を申しつけます」

「俺が死罪だと!? システィーナ王、父上が黙っていねぇぞ! ヴァルム侯爵家を敵に回す覚悟が、お有りということだろうな? あっ、あーん!?」

レオンはもはや王に対する敬意をかなぐり捨て、脅すようなことを言う始末だった。

無論、王家としても、強大な武力を誇るヴァルム家を敵に回したくはないだろうけど……

「確かにヴァルム侯爵家は、比類なき英雄の家系。我が國への貢獻も絶大ですが、それを鼻にかけての増長は、目に余るがあります!」

システィーナ王はレオンの言い分を毅然と突っぱねた。

「お父様とも相談しますが、あなたは死罪。ヴァルム侯爵家は、伯爵位への降格を覚悟なさることですね」

「なっ……! ヴァルム家の力を削ぐようなマネをしたら、竜どもの侵攻を阻止できなくなるぞ!? しょ、正気か!?」

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「それについてはご心配なく。カル殿、あなたに男爵位と、領地としてこの島の支配権を授けたいと思います。おけいただけますか?」

システィーナ王は、僕に目玉が飛び出るようなことを提案してきた。

「えっ、それは一どういう……?」

「あなたにはヴァルム家に並ぶ、竜殺しを家業とした貴族家を立ち上げてしいのです」

「なるほどの。カルをヴァルム家の対抗勢力にするつもりなのじゃな?」

「本気ですか王殿下!? 僕は竜退治の経験なんて、ほとんどありませんよ」

しかも、2回ともほぼマグレだし……

レオンも驚愕して、押し黙っていた。

「はい、本気です。聖竜王の脅威が本格化している現狀、こちらも戦力を増強する必要があります。古竜を倒した実績があれば、お父様もお認めになるでしょう」

「忌み子が領主……!? しかも、ヴァルム家の対抗勢力だと!? ちっ、てめぇカル、育てられた恩を仇で返すつもりか!?」

「お黙りなさい! レオン殿の発言は許可しておりませんわ」

レオンが口を挾んできたが、システィーナ王が一喝して黙らせた。

「ほう。これはおもしろいのじゃ。カルよ、どうするのじゃ。わらわはこの話をけても良いと思うぞ」

アルティナも乗り気のようだ。

この島の領主にしてもらえれば、貓耳族を庇護するのも容易となる。

アルティナの好きな小説や、魔法の研究に必要な書も、手にりやすくなるだろう。

今の僕では領主など、荷が重いと思う。

だけど、僕はすでに一度死んだだ。

一度、死を覚悟した僕に恐れるは何も無かった。

なにより、アルティナのためとなるのなら。

「ありがとうございます。ではアルティナと貓耳族を王國の民として、その権利を認めていただけませんか? 彼らこそ僕の領民です」

「わたくしも未だに半信半疑なのですが、カル殿は冥竜王を配下にしてしまったのですわよね?

……いいですわ。王國を守るために、冥竜王をしていただけるのなら、願ってもないこと。お父様に奏上いたします」

システィーナ王はにっこり微笑んだ。

「ありがたき幸せです。領主のお話、謹んでおけいたします」

僕は王殿下に頭を垂れる。

僕は領主となるような教育などけていないけど、領民がアルティナと貓耳族なら、特に気負う必要などない。

王國の慣例にとらわれず、僕の思う通りにこの島を統治すれば良いと思う。

「王殿下、俺はこのカル様に銘をけました。このお方なら、下の者を無下には扱わないでしょう。カル様の家臣にしていただけないでしょうか?」

竜騎士ローグが王殿下に進言した。

彼はすでに貓耳族によって縄を解かれ、肩を回している。

「まあ、それは願ってもないことですわ。カル殿いかがでしょう?」

「はい。僕としてもありがたいお話ですが……見ての通り、ここは何も無い島です。ローグさんのご家族に不自由な生活をさせることになると思いますが、大丈夫ですか?」

さすがにアルティナの隠れ家は、もう定員オーバーだ。貓耳族の村も壊滅狀態だし、ここへの移住はかなり大変なことになるだろう。

「これは正直な領主様ですね! なに問題ありません。自然がかなこの島の方が、子供を育てるには向いてると思います。

なにより、俺はあなた様がヴァルム侯爵家を上回るところを間近で見てみたい。そのお手伝いをさせていただきたいのです」

ローグは歯を見せて笑う。

ベテラン竜騎士が仲間に加わってくれたのは、実にありがたかった。

「萬歳! 萬歳にゃ! カル様が領主となってくれたら、ミーナたちはもう安泰にゃ!」

「今夜はお祭りにゃ!」

貓耳族たちが、飛び跳ねて歓喜を発させる。

飛竜アレキサンダーもそのに加わって、雄びを上げた。

レオンはそれを忌々しく見つめる。

欠陥品として追放された僕に、力を封じられた冥竜王、蠻族扱いの貓耳族に、冷遇された竜騎士。爪弾き者の僕たちが力を合わせて、みんなで幸せに暮らせる領地を作るんだ。

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