「レオン様、システィーナ王殿下に謝罪を……このままでは本當に死刑になってしまいますぞ！」

竜騎士のひとりがレオンに進言した。

「くぅっ……いくらシスティーナ王でも、俺を死刑にするなんて橫暴は……」

「レオン殿、わたくしは本気ですわよ。お父様にもかけあい、きっと極刑を申し付けます。

お嫌ということでしたら、わたくしだけでなく、カル殿と貓耳族のみなさんにも謝罪なさい」

システィーナ王は凜とした聲で言い放つ。

「お、俺にカルとネコ蠻族どもに頭を下げろだと！？」

「レオン様！　王殿下に対してその口のききかたは！？　ヴァルム家そのものを危うくしますぞ！」

「もし、あくまで王殿下に逆らうおつもりなら、もう従えません！　私もヴァルム家を退去いたします！」

「な、なんだと……っ！？」

家臣たちからも非難の聲が上がり、レオンは押し黙った。

「ぐぅううううっ！」

レオンは顔を真っ赤にして、歯軋りする。

「カ、カル。それとネコ蠻族、お、俺が悪かった……！」

なんとあのプライドの塊のようなレオンが謝罪した。

「心がこもっておりませんわ。もう一度！　それにネコ蠻族ではなく、貓耳族です！」

「ぎゃぁあああ！」

王殿下の容赦のない追い打ちに、レオンは発狂したような聲を上げる。

「カル、貓耳族……お、おおおお、俺が悪かった！」

「はぁ？　なんですか、その尊大な態度は？　頭が高いですわ！　しっかり地面に頭をつけて土下座なさい！」

「ぎゃぁあああ！」

レオンは屈辱に絶した。

「システィーナ王殿下、もう十分です。レオン兄上が貓耳族にしたことは確かに許せませんが。僕はレオン兄上の謝罪をけれたいと思います。幸い死者は出ませんでしたし……兄上を死刑にすることはお許しください」

なにより、レオンのを暴しすぎて、ちょっと気の毒になっていた。

好きなの子に気持ちを知られて、ドン引きされるなんて、死刑になるよりツライかも知れない。竜騎士たちの人も失ってしまったしね。

「まあっ、カル殿がそうおっしゃるのであれば……わかりましたわ。レオン殿は國外追放処分にとどめておきましょう」

王殿下は僕に見つめられると、なぜか顔をポッと赤らめた。

「はぁ、國外追放だと！？　重すぎる刑罰じゃねぇかよ！？　俺は栄あるヴァルム侯爵家の跡取りなんだぞ！」

「お黙りなさい！　不服なら百叩きも追加しますわよ！　カル殿に謝なさい、この愚か者！」

「ぐぅっ！？」

「はぁ、カルの兄とは思えぬバカじゃな」

アルティナが肩を竦めた。

「ありがとうございます。王殿下、実はもう一つお願いがあります。僕はヴァルムの名を捨てたいと思います。僕に新しい家名をいただけないでしょうか？」

今までの自分を捨てて、新しい自分に生まれ変わるために、必要な儀式だった。

僕はもうヴァルム家に未練はない。死んだ母上も、僕の門出をきっと祝ってくれるだろう。

母上は僕に呪いを伝播させてしまったことをずっと悔いていた。

あなたの未來を奪ってしまって本當にごめんなさい、と懺悔していた。

いいや違う。この呪いをけたおかげで、僕は無詠唱魔法をに著けることができた。アルティナと出會うことができた。

母上が僕に與えてくれたモノは、すべて僕の幸福に繋がっていたんだ。それをこれからの人生で証明してみせる。

「わかりましたわ。ではこの島の古い名にちなんで、アルスターの家名を與えます。これからは、カル・アルスター男爵と名乗りなさい。譽れ高き英雄カインのを引く者、あなたには期待しておりますわ」

「はっ！」

システィーナ王は右手の甲を差し出した。

僕はその手を取ってキスをする。

これは王への忠誠を示す行為だ。

システィーナ王は、ほんのりと頬を上気させて、僕の忠誠をけ取った。