「この先に、サイクロプスがおりますので……」

この鉱山の現場監督を名乗る男は、怯えを顔に出すと走り去っていった。

俺たちは現在、窟のり口に立っている。今回依頼をけたサイクロプスの討伐だが、話を聞いてみると、鉱山を掘り進めて行く途中でどこかの空へと繋がっていたらしく、中には巨大なモンスターが壁に立ち、眠っていたと言う。

そのモンスターの姿を目撃した鉱山夫の証言を聞いた専門家が、モンスターの正を『サイクロプス』と斷定したため、冒険者ギルドに依頼がった。

サイクロプスが出現して以來、この鉱山は閉鎖されているらしく、辺りにはツルハシやスコップ、それと手押し車が倒れていた。

「そんで、今回はどうする？」

依頼を決めたのがテレサなので、俺は彼の言う通りにするつもりだ。

『発系の魔法は使いません』

鉱山での戦闘ということを考えると、発や炎上は避けたいところだ。

崩落を防ぐため木の板で壁が補強されているのだが、火の魔法を使えば燃えてしまったり、発の衝撃で天井が崩れてくる可能がある。

そう考えると、テレサの言葉の意味も理解できる。

「そうなると、俺がメインで倒すってことだな？」

サイクロプスに流れるはマグマのような高溫と言われていて、表面を冷やす程度の魔法ではそれ程ダメージを與えられない。

その上、巨に見合った怪力を持ち、繰り出される攻撃をまともに食らえば並の人間では防ごとが砕け散るとか。

『自信がないのですか？　それならば私が対処しますけど』

彼は空中に文字を書くと挑発的な視線を送ってくる。これまで散々からかってきたが、依頼となると真剣な表を見せ隙がない。

ルクスたちはこのようなテレサを知っていたのだろうか？

「いや、良い判斷だと思っただけだ。サイクロプス程度なら問題ねえよ」

そう言うと、一瞬、テレサが笑った気がする。彼はこれ以上は打ち合わせは必要ないとばかりに前に出ると、鉱山のり口へと足を踏みれるのだった。

『…………』

後ろから、テレサが息切れしている音が聞こえてくる。

俺たちが鉱山にってから既に數時間が経過している。

途中までは木の板が地面に敷かれおり歩きやすかったのだが、現在は足場が悪くなっているので、踏む場所を見極めなければ転んでしまう。

テレサはをそれ程鍛えていないので力がない。こうした場所を長時間移するだけで力切れしてしまうのだ。

後ろで彼がぐらつく気配をじる。

「おっと、大丈夫か？」

倒れかかったところを抱き止める。彼が顔を上げると額に汗が浮かんではいるが、瞳には強い意志がじられた。

テレサは俺のを両手で押し、立ち上がると首を縦に振った。

意外と負けず嫌いな面もあるようで、俺は口の端をつりあげ笑うと、さらに奧へと進んでいった。

「ここが、目的地か」

あれから、し進むとようやく空へと辿り著いた。

俺と彼は中にり、空を見渡す。大きさとしては、小さな闘技場程度だろうか？

奧の方を見ると、報通りサイクロプスが目を閉じ眠っている。

口が開いており呼吸をしているのが見える。

俺はテレサに目で合図を送ると、剣を抜き慎重にやつに近付いていった。

『…………グガ？』

サイクロプスにかなり近付き、見上げるようになると、やつの一つ目が突如開く。

侵者の気配をじ取ったらしい。

なんらの一つも見えない瞳が俺を見據える。

「ちっ、そのまま寢ててくれたら楽だったんだけどな」

俺がぼやくとサイクロプスは壁から背を離し、地面に転がっている棒を拾い上げた。

サイクロプスのが赤く変化し、瞳に炎が宿る。

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』

奴のび聲を合図に戦闘が始まった。