《【書籍化】「お前を追放する」追放されたのは俺ではなく無口な魔法でした【コミカライズ】》決闘しにきてみた

ざわざわと聲が聞こえ周囲を見回す。

ここはカプセの街が運営するイベント會場で、周囲を囲むように観客席があり、満席という程ではないが八割くらいは埋まっている。

ルクスたちの宣伝効果なのだろうが、これ程多くの観客の前で戦うことになるとは想定外だ。

俺の後ろにはテレサが杖とローブといつもの格好で控えているのだが、俯いており俺と顔を合わせないのでどんな表をしているのか窺うことができなかった。

今日はルクスとの決闘の日なので、始まる前にし話したかったのだが、來てくれただけましと思うしかあるまい。

仕方なしに視線を向けると、離れた場所にルクスたちが立っている。

前衛のルクスは全を高価そうな裝備で包んでいる。

腰に下げているのは魔剣だし、鎧や盾にサークレット、他にも首飾りに腕。いずれも魔力の気配をじるので、何らかの効果を発揮する魔導なのは間違いない。

その背後には斥候のと、僧

斥候のはショートパンツで生足を曬し、太ももには短剣を何本も挿しており、僧の方は杖を抱えていての谷間が強調されている。

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俺が何気なしに敵の戦力を分析していると……。

「ん?」

踵に衝撃をけたかと思えば、テレサが背後に立って俺を睨みつけていた。

「勘違いするなよ、あくまで脅威となる武がないか確認していただけだから」

その視線は「こんな時にどこを見ているのです?」とばかりに俺を非難している。

実際、見所が他にないのだからいいじゃないかと考える。ようやく接してきたかと思えばこうして不機嫌な態度をとられているのだから取り扱いに困る。

俺が話し掛けると、テレサはプイッと顔を逸らす。

「この日を心待ちにしていたぞ」

ガシャガシャと音を立ててルクスが近寄ってくる。その後ろには斥候の、僧の他に數十名の冒険者がまばらに立っていた。

「その後ろに連れている冒険者たちは何だ?」

俺がルクスに確認すると、

「こいつらは『栄の剣』の新規メンバーだ」

ルクスはニヤニヤと笑い、俺を馬鹿にするように答えた。

「勝負は『栄の剣』の全メンバーとあんたの戦いよね?」

「いまからでも撤回しますか?」

斥候のと僧も挑発してくる。

なるほど、こいつらは日頃ルクスから甘いを吸わせてもらっていた冒険者たち。萬が一やつらが負けることを考えて、人員を補強してきたということか。

俺は溜息を吐くと、

「そこまで恥を上塗りするとは、理解できないな」

「なんだとっ!?」

俺が青ざめて謝罪する景でも想像していたのだろうか?

予想外の反応だったようで、ルクスは俺を睨みつけてきた。

「雑魚が束になってかかってきたところでどうにかできるわけないだろ? これだけ々手を回して負けたら、お前の評価は地に落ちるだろうよ」

真っ當な勝負を挑んで敗れたとしても、Bランクに留まることができるかもしれないが、大人數で挑んでおきながら負けるのは大恥もいいところ。

億が一に勝てたとしても、汚點が殘ると思うのだが、俺が憎いというだけで集まったやつらは自分を客観的に見られないらしい。

「減らず口をっ! 生きて帰れると思うなよっ!」

やつらはそう言うと、自分たちの控え場所へと戻っていくのだった。

『やはり、私も戦った方が良いのでは?』

決闘開始の時間が迫るころ、テレサはようやく俺に接してきた。

あの人數を前に不安になったのか、心配したような表を浮かべている。

「いや、俺一人で十分だろ」

あそこにいるのはBランクとCランクの冒険者がほとんどで、ルクスを除けば大した裝備をに著けていない。

全員一振りで倒せる自信があるし、やつらの攻撃が俺を捉えるビジョンが一切浮かばない。

「いや、まて。やはり助けが必要かもしれない」

俺が真剣な目をテレサに向けると、

「今の俺ではルクスを倒すには力が足りない。テレサの魔力を補充できれば余裕なんだが……」

両手をわきわきとかす。先日のことを思い出させてしまうが、冗談めかしていうことで水に流せないかと考えた。

『あなたは本當に馬鹿なんですか?』

目論見は功し、彼が文字を書くとそれを吸い取り満足する。不安が取り除かれたのか、テレサは口元を緩めている。

「馬鹿とは失禮な。俺は今、悪漢から姫を守る騎士のような気分だぞ」

ルクスたちでは力不足だが、こうしてテレサが信頼を寄せてくるなら気分が良い。

普段は蔑まれてばかりいるので、評価を上げられるこのイベントはボーナスポイントみたいなものなのだ。

そんなことを考えていると、いつの間にかテレサが近付いてきていた。

は俺の頬に左手でれると顔を寄せてくる。

不意に頬にじるらかいと、流れ込んでくる魔力。

しして、テレサは顔を放し距離を取ると……。

『不本意ではありますが、今だけはガリオンを騎士扱いしてあげます』

素早く文字を書くと顔を逸らした。

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