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「あの野郎、絶対に殺してやる！」

遠目に、テレサから笑顔を向けられているガリオンを見た俺は、殺意を高めた。

これまで、冒険をともにしてきて、テレサが俺に笑いかけてきたことは一度もなかった。

常に無表で、聲を出すこともなく。淡々と魔法を放ち続ける。

その多彩な魔法に思わず見惚れてしまう立ち居振る舞いに、俺は彼を傍に置きたいと願うようになった。

だが、どれだけ俺がいを掛けようと、彼は応じることなく、自分のモノにならない彼を、俺はとうとう切り捨てた。

あの時のことは俺の最後の慈悲だった。

周りとコミュニケーションをとれないテレサを、これまで俺がどれだけ助けてやったか……。

しばらくして本人が泣いてすがってきた時に、人になることを條件に許してやるつもりだった。なのに……。

『それでは「栄の剣」とガリオンの決闘を行います』

冒険者ギルドが手配した立會人が宣言をする。

『勝敗は、どちらかのリーダーが敗北を宣言するまで続けます』

「ああ、それで構わないぜ」

不敵な笑みを浮かべるガリオンに、俺たちは苛立ちを覚える。

『それでは、決闘を開始してください』

立會人の言葉と同時に、俺たちは事前に打ち合わせした陣形を取り始めた。

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ルクスを中心に、扇狀に人員が散開している。

やつらは徐々にを広げており、このまま放っておけば俺の背後まで回り込むだろう。

この布陣を見る限り、油斷は見られない。

冒険者登録してソロで半年でCランクという肩書に、警戒心を持っているようだ。

武を持つ者を前衛に固め、後衛からは魔法で援護する。

囲い込んで死角を作るまでは決して襲いかからずに、ルクスの命令を待っているようだ。

俺は剣を下す。

「この人數を相手にビビったのかっ！」

遠くからルクスが挑発してくる。獲をなぶりものにすることに酔いしれているのか、嗜的な笑みを浮かべていた。

「いや、襲い掛かってこないなら武を構える必要もないからな。たった一人に臆病風ふかせているようだし、好きにさせてもらうさ」

「なんだとっ！」

観客に聞こえるように言うと、ルクスは顔を歪めた。

「ふざけやがって！」

「すぐに泣き聲を出させてやるっ！」

二人の前衛がしびれを切らせて突撃してくる。

「あっ！　こっちの指示に従いなさいよっ！」

斥候のが注意するが、頭にが昇っているのか、前衛の二人には聞こえなかった。

「死ねっ！」

上段から振り下ろす大剣を、を半ずらして左に避ける。

「馬鹿めっ！」

あらかじめ避ける方向に回り込んだもう一人が橫薙ぎに剣を振ってきたので、それを読んでいた俺は姿勢を低くした。

頭上を剣が通り過ぎる音がする。二人はまだ攻撃した狀態から剣を引くことができておらず、俺は素早くやつらの懐に飛び込むと……。

—―ガッ！　ガガッ！—―

「ぐふっ！」

「おげぇっ！」

腹部に拳をめり込ませると、それぞれ一発で倒してやった。

「「「なっ！」」」

その場で俺のきを目で追えたのは數人だ。

殘りの相手は何が起こったのかわからなかったようだ。

『すっ、凄いぞっ！』

『あっという間に二人を倒した！』

『これは大番狂わせもありえるんじゃないか？』

観客が興しており、今のパフォーマンスで応援が増える。

俺は観客の、特に若いの子を中心に手を振り聲援に応えた。

ふと、背後から圧をじて振り返ると、テレサがジトっとした目で俺を見ていた。

おそらく『今は私の騎士のはずでしょう。何、手を抜いているのですか？』とか考えているに違いない。

「だから言ったでしょ！　確実に囲むまで手を出さないでよっ！」

「ルクスの作戦に逆らう人は後でペナルティを與えます」

斥候のと僧のの言葉で全員の表が引き締まる。

しして、陣形が完したようだ。

「よーし、前衛は前進。後衛は魔法の準備だ！」

ルクスの指示により前衛が近付いてくる。

「ふわぁーーあーーー」

俺は欠をしてやつらの接近を待った。

「ふざけやがって！」

「この街で俺たちに逆らうんじゃねえよっ！」

「てめえは目障りだったんだっ！」

今度は三人、足並みをして斬りかかってきた。

ランクが上がってからこいつらの仕事も奪っていたからな。ルクスがどうこういうより、元々俺に恨みを持つ者もいたらしく、真面目に働いていたはずの俺はし傷ついた。

「よっ！　っと」

今度は特に避けることなく一歩距離を詰めると、正面から顔面を毆り吹き飛ばす。

「「「ぐええええええっ」」」

これだけでは済まさない。

俺はやつらがかかってきたお蔭で薄くなった場所へと飛び込む。

「くっ！　このっ！」

急に接近された後衛の魔法使いが杖を構え魔法を放とうとする。

「駄目ですっ！　同士打ちになりますよっ！」

「「「ぐっ！」」」

僧のの一言で魔法使いのきが止まる。

俺としては馳走してもらっても構わなかったのだが……。

「前衛はいて後衛を守れ！　とにかく一度仕切り直しを――」

ルクスが指示を出すが……。

「きゃっ！」

「いやっ！」

「あんっ！」

魔法には手心を加え、優しく無力化していく。

「お前がそこにいると攻撃できない！」

「そっちこそ邪魔だっ！」

「誰か早く何とかしてよっ！」

「いやあああっ！　こっちにきたっ！」

もはや陣形も何もあったものではない。いかに人數がいようが、同時に攻撃できる人數は限られている。

俺は巧みにき回ると、その場の全員を毆り倒していった。やがて……。

「ふぅ、殘すはお前さんたちだけか？」

その場に立っているのは俺と、ルクス、斥候の、僧のの四人だけになった。