《【書籍化】「お前を追放する」追放されたのは俺ではなく無口な魔法でした【コミカライズ】》ってみた

宿の部屋に戻り、真剣な表を浮かべたテレサと向き合っている。

前回の反省を踏まえたのか、今回は彼の部屋に呼ばれたのだが、俺の部屋とは違ってそれなりに広く荷も整理されている。

これでは間違っても転ぶようなことはないので、ハプニングは期待できないだろう。

『……何を考えているのです?』

テレサは文字を書くと、じっとりとした目を俺に向けてくる。

「そりゃもちろん、世界平和についてだよ」

そんなことをおくびにも出さず答えておく。

『世界平和を説くというのなら、私は目の前にいるの敵を消滅させたい気分です』

非常に辛辣な言葉を投げかけてくる。どういうわけか知り合ったころよりも好度が下がっている気がする……。

テレサから視線を外さず笑って誤魔化していると……。

は気まずそうにコホンと咳ばらいをして間を取った。

『それで、先程、ルクスの聲を封じた力についてですが……』

およそ見當がついているのか、彼は右手をに持って行くとそっとれた。

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「ああ、お前さんの呪いの力を使わせてもらった」

テレサのれ、魔力を吸い出した時からずっと、俺の右腕には呪いの力が宿っていた。

『あなたはあのようなことまでできるのですね?』

テレサは驚きの表を浮かべる。

「元々、け止めた魔法を留める方法は知っていた。今回は長時間だから結構骨が折れたが、試しておきたかったんだ」

誰彼構わずに使うのも気が引けていたので、ルクスというちょうど良い対象がいてくれて助かった。

お蔭でテレサの呪いの効果をはっきりと見ることができた。

テレサはじっと俺を観察すると、

『その力で、私の呪いを解けると思いますか?』

指を震わせ、俺に問い掛けてきた。

の瞳は揺らいでおり、張しているのがわかる。

この時ばかりは俺も曖昧な返事をするわけにはいかなかった。

「おそらく無理だろう」

『そう思う理由は?』

「俺が吸い取ったのはお前さんの呪いで間違いないだろう。だが、この手の呪いは本人の魔力を元に効果を継続させている。弱めることはできるかもしれないが、時間が立てば元に戻るのはお前さんの狀況を見ればわかるだろ?」

れた時以外に、テレサが聲を出したことはない。

わざわざ筆談しているからには、呪いが元に戻ってしまっているという証拠だ。

『そう……ですか……』

意外と冷靜に見える。せっかく手掛かりを摑んだのに、完治させられないことでもっとショックをけるかと思ったのだが……。

俺がテレサをじっと見ていると……。

『そんな顔しないでください。これでも私、ガリオンには謝しています。一時的にとはいえ呪いを弱めることが可能だと、知ることができたのですから』

そう言って微笑んでくれる。俺は頬をパンッと張ると、元の調子に戻す。

し、実験してみませんか?』

「うん? というと?」

『完全に呪いを取り去ることができないというガリオンの意見は正しいと思います。ですが、あなたにれてもらうことで聲が出せるという事実もあります。どこまですれば聲が出せるのか條件を知っておきたいのです』

「なるほど……。一理ある」

俺の視線が自然とテレサのへと吸い寄せられていく。あの日れたは素晴らしく、俺がそれを思い出していると……。

『どこを見ているのですか?』

顔を上げると、テレサが俺を睨み付けていた。

『言っておきますが、今回、っていただくのは手ですから。間違ってもらないでくださいよ?』

「安心しろ。俺から強引にれるようなことはしないさ」

前回は呪いの魔力に吸い寄せられて本當に手を放せなかっただけなのだ。

『では……』

テレサが隣に來ると俺の左手をぎゅっと握る。以前も思ったが、相変わらずひんやりとしていてすべすべしている。

じんわりと魔力が流れ込んでくる。文字を消す時にも微量ながら吸っているが、俺はここまで心地よい魔力をこれまで吸ったことはなかった。

この魔力を使えば、これまでよりも強力な力を振るうことが出來るのは間違いない。

そんなことを考えていると、テレサが上目遣いに俺の様子を見ている。

至近距離から改めて見ると、テレサが滅多にいないだと認識できる。

ルクスのやつがなりふり構わないのも無理がないだろう。

瞳で『どうですか?』と訴えかけている。それ程長い付き合いではないのだが、俺もテレサの表を読めるようになってきたな。

「これはあの時とは違うな、お前さんの魔力を普通に吸っているだけだ」

おそらく、テレサに呪いをかけている核のようなものは心臓付近に存在しているのだろう。

そこから発せられる黒い魔力を吸い取らない限り、テレサの呪いが弱まることはない。

は左手で自分の服を引っ張ると、元を覗き込んだ。

俺も気付かれないように橫目をかし覗き見ると、には黒模様一つ存在していなかった。

呪いが反応していないと浮き上がらないのだろうかと想像する。

テレサは服から手を放すと不意に顔を上げる。

『呪いが引き出されていませんね、前の時はこのようなじではなかったのですが……』

「このようなじ? もう的に言ってくれないか?」

俺が魔力を引き出す覚は理解している。今回の実験で明らかに違う點についても。

だが、テレサがどうじているのかは本人にしかわからないのだ。きちんと伝えてもらう必要がある……。

『この前の方が気持ち――』

そこまで書きかけて、指を適當にかし文字を消してしまう。何と説明しようとしたのだろうか?

『とにかく、手では駄目でしたので、次は腕を摑んでみてください』

テレサはそう言うと、服をまくり上げて腕を差し出す。

指示に従い、腕にれると……。

『……⁉』

ピクリと肩を震わせた。橫を見るとプルプルと震えている。

俺がそっと指を這わせてみると……。

—―ドンッ――

「いきなり何をするんだ?」

は顔を真っ赤にして俺を睨みつけていた。

『手つきが厭らしかったからです!』

恥ずかしそうにする姿をもっと見ていたくて悪戯心が目覚めたのだが、線引きを乗り越えてしまったようだ。

「前回も、最後の刺激がきっかけで聲を出しただろ? 今回もそうじゃないかと思って試してみたんだよ」

そんな考えをおくびにも出さず、俺は言ってのけた。

疑るような視線を俺に向けるテレサ。

『それで、呪いを吸う覚はありましたか?』

「いや、なかったな。多分だけど、前と同じにまないと無理だと思うぞ」

『それだけは死んでも嫌です!』

これは照れ隠しをしている様子がない。本気で嫌がっている様子に俺はテレサから距離を取った。

「まあ、焦るなって。そこまで自分を安売りしなくても、一度聲を出せたんだ。その良い方法があるだろうさ」

『あなたのその楽観的な考えはどこから來るのでしょうかね?』

おどけて見せると、テレサは呆れたような表をする。

「絶して嘆いていたところで呪いがとけるわけでもないだろ? それなら、いつか何とかなると思ってあかるくした方が得だろ?」

俺とテレサがこうして行をともにしていることにも意味があるはず。

『ガリオンもたまには良いことを言うのですね。確かにその通りです』

はニコリと微笑みながらも俺を貶めてくる。最近気付いたがこれがテレサなりの気軽な接し方なのだろう。

「それにしても、殘念だな……」

『殘念……ですか?』

ここで話が終われば良いのだが、俺はつい思いついた言葉を出してしまう。

首を傾げるテレサに言ってやる。

「あの時の可らしい聲を聞けないと思うとな」

『……⁉』

次の瞬間、テレサは枕を持ち上げると俺に毆りかかってきた。

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