《【書籍化】「お前を追放する」追放されたのは俺ではなく無口な魔法でした【コミカライズ】》海水浴してみた

「うわぁ……今日も暑いな」

ざしが降り注ぐ中、そこらでは冒険者の警備員が汗水流して働いている。

「こんな日に働かずに済むなら、テンタクルスを後數匹倒してもいいかもしれないな」

俺たち討伐組は、警備の仕事を一日免除されているので、降ってわいた休暇ということもありこうして寛いでいた。

「テレサもそう思わないか?」

向かいの席ではかき氷とテンタクルス焼きを食べているテレサが座っている。

パーカーをにつけ、橫に浮きを置いており、この祭りを満喫しているようだ。

は『何を馬鹿なことを言ってるんですか?』と俺を睨み付けると食事に戻ってしまう。

相変わらず目を惹く容姿とをしているので、周囲の男連中は通り掛ると必ず振り向いてテレサを見ているが、俺が同席しているからか聲を掛けてくる者はいないのだが、一瞬でも目を離せばやつらは群がりテレサを連れ去ろうとするだろう。

「そういうことか……」

俺がふと真実に気付くと聲がれ、テレサは食べるのを止め首を傾げる。

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「どうにも不思議だったんだよ。朝からお前さんが訪ねてきて、急に『海に行きましょう』とってきたことが」

われて斷るのは男がすたる。最初は浮かれ気分で準備をしていたのだが……。

「俺を男避けに使って誰にも邪魔されずに海水浴をしたかったってことだろ?」

ズバリと彼の考えを見かしてみせるのだが……。

「なぜそんな、使い終わった楊枝を見るような目を俺に向けてくるんだ?」

は俺の質問に答えることなく、ふたたび食事をするのだった。

「そういえばお前さん、もしかして泳げないのか?」

食事を終え、『泳ぎたい』と告げたテレサと一緒に海へと向かった。彼は浮きを持っているので聞いてみた。

テレサは首を橫に振ると、続いて海の方を指差す。

そこでは浮きを委ねてると、それを押す男のカップルがいた。

「なるほど、別に補助道として使う必要もないからな」

ずっと泳いでいるのは疲れる。

テレサは力がある方ではないので、ああしてゆっくりするのに浮きが必要だというわけだ。

がパーカーをぐと、周囲の野郎どもの視線が一気に集中する。

俺はテレサの背後に回り込むと、出來る限りその視線を遮った。

背後から彼を見下ろすと、この場で最も戦闘力が高い二つの丘が目に映る。深夜のテンタクルス以上の脅威を目の當たりにした俺はゴクリと息を吞むのだが、ふと彼振り向き、俺をじっと見つめてきた。

見ているのに気付かれたので、この後攻撃の一つでもくらわせられる覚悟をしている俺だが、なぜか彼は特に何も言うことなく、俺の手を引くと海へとっていく。

「暑い中こうして泳ぐのも悪くないな」

海水の冷たさが気持ちよく、波に揺られる。

テレサは浮きに腕を足を出すと、目を閉じて気持ちよさそうにしていた。

昨晩のテンタクルス戦で魔力を結構使っているので疲れているのだろう。

浜からある程度離れた場所まできたので、こちらに注目している者はなく、テレサの水著姿は俺だけのものとなった。

(まてよ……?)

今なら警戒心が下がっている。

周囲の男どもの下卑た視線もなくなっているので、テレサも油斷している。

最初に言っておくが、俺はが大好きだ。だが、時にはそんなよりも価値が高い部分が存在する。

テレサが目を瞑っているのを確認すると、俺は海中に潛った。

それなりに深く潛るとその場で上を見上げてみる。すると、そこには海上でぷかぷか浮かぶ浮きと、そこに嵌り込んだテレサのおがある。

波に合わせてゆらゆらと揺れるフリルの布地、きゅっと引き締まった形の良いは、普段このような角度から観察することが不可能なため、この場においては金貨10枚を超える価値があった。

浮上してしまえばテレサも目を開けてしまうかもしれない。これはあくまで一度しか見られないチャンスなのだ。

息が続く限り――いや、たとえ死ぬことになっても見続けるべきだろう。

そんな意志を貫こうとしていると、浮きがよじれた。

テレサが目を開けてしまい、俺がいないことに気付いらしい。

は慌てたのかきょろきょろとをよじり、周囲を確認して俺がいないの確認する。

そして、浮きからかすと、そのまま海中へと降りてきた。

既に空気がほぼ失われている俺を、彼は摑むと慌てた様子でかすのだが、そんなきをしながら口を開けると……。

――ゴボッ――

大量の泡がテレサの口かられた。

そしてしすると、カクンと首の力を抜き、ゆらゆらと揺れる。

(もしかして溺れてる?)

俺は慌てると、彼を抱き、浮上するのだった。

浜辺に戻ると、テレサが咳をして海水を吐き出す。俺はその様子を見ると、

「お前さん、本當は泳げなかったんだろ?」

先程、浮きを使っている時は、単に使いたいだけだと思っていたが、水の中にってきた限りを見ると、とても泳げるようには見えない。

「なのに、どうしてわざわざ海中にってきたんだ?」

俺が質問をすると、テレサは苦しそうな表を浮かべながら、理由を書いた。

『目を開けて見てガリオンがいなくて、しばらく気配をじなかったので溺れているかと思ったのです。それでいてもたってもいられずに……』

どうやら彼は俺が溺れていると考え、助けに來たらしい。

自分が泳げないくせに、無茶をするやつだ。

「そりゃ、すまなかったな。海中からしか見られない景に釘付けになっていたんだ」

『海中の景……。羨ましい』

息を整えると嫉妬じりの視線を俺に向けてくる。

「どちらにせよ、お前さんには見ることができない景だからな。気にするな」

何せ俺が見ていたのは彼なのだから……。

「助けに來てくれたお禮にこの後奢るからな。何でも好きなを食うと良い」

『いいんですか? それじゃあ、ちょっと高めの店とか考えちゃいます』

嬉しそうな顔をするテレサ。せめてもの罪滅ぼしとして、俺は財布が空になる覚悟を決めるのだった。

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