《【書籍化】「お前を追放する」追放されたのは俺ではなく無口な魔法でした【コミカライズ】》追跡してみた(テレサが)

「今日は仕事はなしだ」

朝食を摂っていると、ガリオンは唐突に仕事を放棄する発言をしはじめた。

『駄目に決まっているでしょう、私たちの労働が街の平和を維持しているのですよ?』

深海祭りから戻ってきて以來、やる気を出すテレサは積極的に依頼をけていた。

「すまんが、今日だけは勘弁してくれ。埋めあわせはするからさ」

『むぅ……、そこまで言うのなら構いませんけど……』

いつにないガリオンの態度に、テレサは眉を寄せて難しい顔をするが折れることにした。

それと言うのも、ガリオンが謝るのは本當に珍しいので、彼が嫌がることはしないと心の奧でブレーキをかけたからだ。

決して「埋め合わせ」と言う言葉に惹かれたわけではないのだが、それはそれとしてどこに付き合ってもらおうか即座に幾つかの行パターンを考えていたテレサは笑みを浮かべながら朝食をつついていた。

「今日は冒険者活はしないんですね?」

ガリオンの皿を下げに來たのはこの宿の娘で朝は給仕、晝は選択に晝の掃除を行っている看板娘のミリィ。歳はテレサの一つ下で、接客業をしているのか怖じすることなく良く笑うだ。

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ガリオンもテレサも、ここを定宿にしているのでミリィとは顔なじみだ。

テレサはミリィに対して頷き返事をすると朝食へと戻る。

ここの食堂の料理は味しいので、依頼がないのならゆっくり味わって食べたかったからだ。

テレサが食事をしている間にも、ミリィは皿を片付けテーブルを水で絞った布で拭く。彼はそのまま立ち去るわけでもなくポツリと呟いた。

「それにしても、妙ですね?」

テレサは首を傾げるとミリィに視線を向けた。

「ガリオンさんが用事だなんて、珍しくないですか?」

これまでを振り返ってみる。

出會ってからは依頼をこなしたり、休日であっても裝備の修理くらいでしか一人で外出しておらず、大抵は宿で寢て過ごしていたガリオンが唐突に休みをしいと言ってきたのだ。

「裝備を修理に出すのは最近やってましたし、何より普段よりもパリッとした恰好をしていました」

よく見ているなとテレサは心した目でミリィを見る。テレサが知る限り、ガリオンが今日の服裝をするのは初めてなのでわざわざ新品の服を著ているということになる。

「もしかして……」

ミリィがアゴに手をあてなにやら考え込み始めたので、テレサは目に力をれると続きに注目した。

「深海祭りで人でもできてデートに出掛けたんじゃ?」

次の瞬間、テレサが手に持っていたフォークとナイフが皿に落ち、質の音を鳴らした。

部屋に戻り大急ぎで著替えを終えたテレサは、繁華街へと來ていた。

まだ朝ということもあってか、ほとんどの店が開店しておらず、搬作業や準備に追われている人たちが店先に立っている。

そんな中、テレサは大足で歩くとキョロキョロと周囲を見回しガリオンの姿を探していた。

(まさか、そんなタイミングはなかったはずですが……)

深海祭りの警備の間も目をらせていたので、ガリオンが他のと良い雰囲気になっていなかったはずだ。

だが、最終日に気を抜いてお酒を呑んだ後に関しては空白の時間が存在している。もしかするとその時にことを起こしたがいたのではないか……。

今は一刻も早くガリオンを見つけなければいけないと、強迫観念がテレサをかしていた。

しばらく歩いていると、遠くの木工職人の店からガリオンが出てくるのを発見した。

両手に紙袋を一杯に持つと、どこかへと歩き出した。

急いで追いかけようとして、テレサは足を止める。

ああ見えて、ガリオンは超一流の剣士だ。生半可な距離ではこちらのきを察知し発見されるおそれがある。

テレサはかなり距離を置きながら追跡を開始した。

しばらく後をつけるが、ガリオンが振り向く様子はない。

大量の荷が視野を狹めているからか、それともこれから會う相手とのことを想像して注意力が散漫になっているのか……。

だんだんと街の外れへと進み、人通りがなくなってきた。

古めかしい建がまばらに點在している。

ガリオンはそんな建の一つへとって行く。広い敷地なのだが、柵はぼろく、庭先には家庭菜園が作られている。

ガリオンがノックするとドアが開き、中からは妙齢のが姿を現し、手荷を半分け取ると、ガリオンを中へと促した。

(まさか本當にとあっていたなんて)

ミリィの言葉を話半分に聞いていたのだが、こうして決定的な瞬間に遭遇するとはテレサも思っていなかった。

るときの優しい笑顔にムカムカすると敷地へとる。中の様子を探れないかと考え、建の外をぐるぐると回っていると……。

「侵者だ! 捕まえろっ!」

振り向くと、アミが降ってきた。

(なっ!)

次の瞬間、テレサはアミに巻かれると地面へと転がるのだった。

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