《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》八話 アンデッド発生事件
47AgDragon(しるどら)先生より、ファンアートをいただきました!
五人姉妹のラフイラストです、ありがとうございます!
姉妹たちの特徴がとてもよく出ていて、素晴らしいです!
「こ、こんなにけ取れませんよ!」
シスターさんから渡された報酬額に、俺は戸いの聲を上げた。
金貨がひい、ふう、みい……。
全部合わせて、驚愕の五十萬ゴールド。
最初にけ取る約束をしていた八千ゴールドの約六十倍だ。
「これでも安すぎるぐらいです! まさかあれだけ広い墓地を浄化できる冒険者さんがいるなんて、思いませんでした!」
「は、はぁ……」
それにしても、俺が好きでやったことだしなぁ。
これだけの大金、け取ってしまうのは気が引けるというか。
大きな教會だから、これを出したからと言って財政難になることはないだろうけど……。
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「実はここ最近、アンデッドが発生する事件が何件か起きておりまして」
「え? あの墓地でですか?」
稀に、墓地の死がアンデッドとして蘇ることがある。
しかしこれは、あくまで荒れ果ててしまったお墓の話。
數十年とか數百年とか、そのぐらいの単位で放置した場合に限られることだ。
この教會の裏にある墓地の場合、シスターさんたちが定期的に手れをしている。
アンデッドが発生するようなこと、まずありえないんだけどなぁ……。
「はい。原因はわからないのですが、墓地を管理する教會として対策を行わないわけにも參りません。それで、今度聖様が巡教に出られた際に街へお寄りいただく方向で話が進んでいたのですが……」
「せ、聖様!?」
それって、ファム姉さんのことじゃないか!
姉さんが來たら、俺がここにいることがバレちゃうかもしれないぞ!
「はい。ですが、ジークさんに浄化していただいたおかげでその必要はなくなりました。あの狀態なら、さすがにもうアンデッドが発生することはないでしょう」
「な、なんだ……良かった……」
ファム姉さんが來ないことを知り、ほっとをなでおろす俺。
念のため偽名を使っているし、聖がギルドへ近づくようなことはないだろうけど……。
姉さんたちの勘って、馬鹿みたいに鋭いからなぁ。
半徑數キロ以に近づかれたら、俺の居場所を察知されかねない。
「それで、あれだけ謝していたというわけですか」
「はい。聖様にお越しいただくとなりますと、準備などいろいろと大変ですからね。この街の教會はかな方ではありますが、それでも負擔が大きくて」
「聖様を呼ぶ費用を考えれば、五十萬でも安すぎる……と」
ファム姉さん自は、華を好まず清貧を尊しとする人である。
しかし、十字教団の頂點である聖を一つで移させるわけにも行かない。
當然ながら護衛が必要だし、最低限の従者も必要だ。
巡教の途中に寄ってもらうという話であったが、それでも數百萬ゴールドは飛んだだろう。
「なるほど、わかりました。そういうことであれば……五十萬ゴールド、け取ります」
「ありがとうございます。しかし、あなたはブランシェをどこで習得されたのですか? あれは聖十字教団でも、限られた方しか習得されていないものですが……」
そうだったのか……。
ファム姉さんは「覚えておくと便利な魔法」と言う程度のノリで教えてくれたから、簡単なものだとばかり思っていた。
ううーん、これはどうやって誤魔化そうか。
相手は教會関係者だし、下手なことを言うと聖のだとバレてしまうかもしれない。
「え、えーっと……。村の神父様に教えてもらいました」
「神父様、ですか」
「はい。何でも、昔はそれなりに地位のある方だったそうで。いろいろと教えてくれたんです」
「そうですか。フェザーン様あたりかな……? いや、コルドバ様かも……」
俺がでっち上げたような人は実在するらしい。
シスターさんは顎に手を當てると、ぶつぶつとつぶやき始める。
どうやら、うまく誤魔化すことが出來たみたいだ。
「では、俺はこの辺で帰らせてもらいますね」
「あ、ちょっとお待ちを!」
「何です?」
「村の神父様にいろいろと教わったと言っておられましたよね? その中にサンクテェールの魔法はありませんでしたか?」
何か困っているのだろうか?
尋ねてきたシスターさんの顔は、こちらに懇願するかのようであった。
サンクテェールと言えば、聖域を張って瘴気の侵を防ぐ魔法。
さっき言っていたアンデッド発生事件にかかわることだろうか?
「ええ、教わりましたけど……何に使うんです?」
「地下水路の調査に同行していただきたいんです。最近になって急に瘴気の濃度が上がったので、墓地でアンデッドが発生した件との関連が疑われているのですが……。かなり広大なので、サンクテェールの魔法がないと瘴気を防ぎながら探索することが困難なのです」
「なるほど、そういうことですか」
「もちろん、後で教會の方からギルドに正式な依頼として出させていただきます。報酬は一日五萬ゴールドでいかがでしょうか?」
一日五萬……!
護衛でこれは、なかなかの好條件ではなかろうか。
いつも俺がけているDランク依頼では、一日拘束されて八千から一萬ってとこだし。
そこそこ危険度が高いことを考えても、十分と言える額だろう。
「それなら大丈夫です、お引きけします! ただ……ランクが高すぎるかもしれませんね。ギルドの依頼って報酬額とかでランクが決まるそうなので」
「おや? ジークさんは高ランク冒険者ではないのですか?」
「あはは、違いますよ。Dランクです」
「えええっ!? サンクテェールまで使えるのに、Dランクなんですか!?」
びをあげて驚くシスターさん。
結局、俺がDランクだと納得してもらうのにそれから二十分ほどかかってしまった。
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