《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》十七話 二千萬の依頼
「それでなんですが……この剣って、結局いくらするんですか?」
渡された鞘に剣を納めると、恐る恐る尋ねる。
材料として貴重な隕鉄を使っていることはもちろん、最高傑作と呼ぶほどの仕上がりである。
バーグさん自が超一流の職人であるし、相當な金額になるのではなかろうか。
一応、手元には一千萬ゴールドほどあるけれど……。
さすがにし心もとない。
「そうだな、まず隕石の落札費用だけで一千萬かかっている」
「おお……」
「さらに、そいつを溶かすのに高価な炎水晶を大量に使った。そこへ俺自の手間賃が一月分で……」
ブツブツと計算を始めるバーグさん
作ったはいいが今まで持て余してきた品らしく、売値をしっかり考えていなかったようだ。
……アエリア姉さんがいたら、基本がなってないって怒りそうだな。
「よし、三千萬ってとこだな」
「三千萬!?」
俺だけでなく、ロウガさんとニノさんまで一緒になって聲を発した。
三千萬ってそれ、都會に一軒家が立てられる値段だぞ!
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使った材料と鍛冶師の腕を考えれば、妥當な金額だとは思うけれど……。
さすがにちょっと厳しすぎる金額だな。
冒険者として順調に出世したとしても、そんなお金いつになったら稼げることか。
ドラゴン素材のようなものは、そうそう手にるようなものでもないしな。
「ううーん……さすがにそんな大金は……」
「今後を見據えても、用意するのはかなり厳しいでしょう」
「だろうな。お前さん、今いくら持っている?」
これは、どう答えるのがいいんだろうな?
下手な駆け引きなどせずに、正直に言うのが一番だろうか。
アエリア姉さんも、商売の基本は素直と言っていた気がするし。
「だいたい一千萬です」
「なるほど。じゃあ、條件を満たしてくれればその金額で売ってもいい」
「本當ですか!?」
「ああ。こっちとしても、まったく買い手がつかずに困っていたものだからな。それだけ重量のある剣となると、使いこなせる人間なんてほとんどいねぇんだ。それに腕力のあるやつになればなるほど、デカい武を好むしな」
へえ、そういうものなのか。
斬撃を飛ばせば、武の大きさとかあまり関係ないと思うんだけどなぁ……。
むしろ、大きいと取り回しが面倒な場合も結構あるような気がする。
「わかりました。一千萬でこれを売ってくれるのなら、買いましょう!」
「よっしゃ、商談立だな!」
「……で、條件と言うのは? あまり無茶なものだと……その……困るんですけど」
何せ、一気に二千萬ゴールド分の値引きである。
よっぽどきつい條件ではないのだろうか。
さすがに、を売れとかそういうのだと困るのだけども。
すると俺の心配を危懼したらしいバーグさんが、豪快に笑いながら言う。
「なぁに、大したことない! 俺が出す依頼をこなして、この剣の持ち主としてふさわしい実力を見せてくれってことだ」
「そういうことですか。……でも、本當にそれで二千萬も値引きしていいんですか?」
「もちろん! 武ってのは、それをきちんと扱えるやつに持ってもらうのが一番だからな。ずっと売れなかった武だし、構いやしねえ」
そう言うと、再び腰に手を當てて笑うバーグさん。
何とも気前のいい話があったものである。
それだけ、普段のバーグさんが稼いでいるということなのだろう。
よくよく見れば、彼の奧歯には金歯が混じっていた。
「その依頼の容とはなんでしょう?」
「ロックタイタスの甲羅を集めてきてくれ。砥石として使っている素材なんだが、最近は供給が不安定でな。まとめて確保しておきたいんだ」
「ロックタイタスと言うと、Aランクに近いBランクですね。非常に防力が高いので、剣士だと討伐が難しいモンスターです」
さらさらっと解説してくれるニノさん。
さらにつけ加えるなら、ロックタイタスは巨大な亀である。
……なるほど、これは良い相手だな。
剣を十分に使いこなさなくては、斬れない魔だ。
二千萬も値引してもらうことを考えれば、し易しすぎるかもしれないけど。
「よく知ってるな、お嬢ちゃん。だが、これぐらいはしてもらわないと剣にふさわしい者とは言えねえだろう」
「そうですね、頑張ります!」
「よし、じゃあギルドに正式な依頼として出しておこう。依頼をこなすまでの間、その剣は暫定的に貸し出しだ」
「ありがとうございます!」
俺はバーグさんと握手をすると、深く頭を下げた。
いやぁ、まさかこんないい剣を手にれることが出來るとは。
お値段はさすがに高かったけれど、いい買いをできたと思う。
こうして俺が一息ついていると、れ替わりにニノさんとロウガさんが語りだす。
「……ロックタイタスの討伐に行くなら、やはり手裏剣が必要ですね。この店にありますか?」
「ああ、それならそこの棚にっている」
「じゃあ、俺は亀野郎を足止めするための盾を頼もうか。この盾の強化、二十萬で出來ないか?」
「引きけよう。特別料金だぞ」
「あ、あの!!」
放っておけば、延々と話が続いてしまいそうなのを止めた。
そしてニノさんとロウガさんの方を、よくよく見ながら言う。
「二人とも、俺と依頼に出ることが前提になってませんか?」
「ああ、そうだが?」
「だって、俺たちはまだパーティでも何でもないんですよ。手伝う必要は……」
地下水路の調査が終わってしまった以上、俺たちの間を縛るものは何もない。
そう、言ってしまえば今の俺たち三人は何の集まりでもないのである。
知り合いが買いに行くからついていった、ただそれだけの話なのだ。
しかし――。
「水くせえなぁ! 困ったときは黙って助け合うのが冒険者ってもんだぜ!」
「……不本意ですが、あなたがクルタお姉さまに近づきすぎないように監視する必要がありますので。それにロックタイタス関連の依頼は間違いなくBランクとして扱われます。私たちとパーティを組まないと、けることすら困難なはずですが」
パーティのランクと言うのは、そこに所屬する冒険者のうち一番ランクが高い人に合わせられる。
例えば俺と二人が組んだ場合は、Bランクとして扱われるのだ。
「二人とも……! ありがとうございます、ありがとうございます!」
二人に向かって何度も謝を告げる俺。
こうして俺たち三人は、再びパーティとしてロックタイタスの討伐へと向かうのだった――。
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