《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》二十二話 地下から現れた者
「うっ! 瘴気が出てますね!」
教會の裏手に広がる広大な墓地。
魔法で綺麗に浄化しておいたはずのそこが、瘴気に侵されていた。
いったい、何をどうしたらたった數日でこんなことになるのか。
いくら墓地だからと言って、こんなに短期間に瘴気が溜まるはずないのだけど……。
「サンクテェール!」
即座に聖域を展開し、瘴気からを守る。
俺たち三人の周囲を白いのようなものが覆った。
周囲に立ち込めていた薄紫をした瘴気が、たちどころに祓われていく。
「これで、しばらくは防げるはずですよ」
「助かった。しかしなんだってまた、急に瘴気なんぞ……」
「水路と何か関係があるのかもしれません」
「にしても……うおっ!?」
再び地面が揺れた。
――ドォン、ドォン!
地の底から雷にも似た発音が響いてくる。
突き上げるような周期的で小刻みな振。
やはりこれは、地震などではなさそうだ。
「あぶね、舌を噛むかと思ったぜ」
「グウウウゥッ!」
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「ちぃっ!」
不快な雄びとともに、墓石の下から腐った手がびてきた。
茜だった空が、気づけば濃紺に染まりつつある。
瘴気で目覚めたアンデッドたちが、夜を前にしていよいよ這い上がってこようとしていた。
「數が多い……! ニノさんとロウガさんは、ひとまずアンデッドたちを俺の前に集めてもらえますか? ブランシェでまとめて浄化していきますから!」
「任せろ!」
「私も大丈夫です」
大盾を構えるロウガさんに、短刀を構えるニノさん。
二人は迫りくるゾンビたちの群れを上手くけ止めると、俺の前へと流した。
――ブランシェ、ブランシェ!
壁よろしく押し寄せてくるゾンビの群れに、次々と浄化魔法を放つ。
聖なるによって、不浄な亡者たちは灰となって地に還っていった。
數が多いとはいえ、所詮は最下級のゾンビだ。
黒剣の補助もある今なら、浄化魔法一発でまとめて片が付く。
「この調子なら、すぐに終わりそうだな!」
「ええ、ゾンビだけで助かりました」
「んっ!? また!」
三度、地面が揺れた。
これは本當に、何が起きているのだろうか。
俺たちはその場に踏ん張って揺れが収まるのを待つが、まったくその気配はない。
それどころか、次第に震源が近づいてくるかのようだった。
「何かくるな!」
「巨大なモグラか何かでしょうか?」
「そんなモンスター、この近辺には生息していないはず……!」
「きたっ!!」
発。
地面が破裂し、その上に立っていたゾンビたちもろとも吹き飛んだ。
同時に噴き上げてくる強烈な瘴気。
恐る恐る移してみると、墓地の中心部に巨大なが出來ていた。
相當な深さがあるようで、を乗り出しても底を見ることはできない。
「なんだこりゃ……?」
「何かが下から突き破ったみたいですね」
「このし生ぬるい空気……地下水路に通じている?」
「その可能は高いな。ニノ、お前この間貸してもらった水路の地図は憶えてるか?」
「當然です、忍びの基本技能ですから」
「じゃあ、この場所が水路のどこの上にあるか分かるか?」
顎に指を當てて、しばし考えこみ始めるニノさん。
水路の地図を見たとはいえ、シスターさんから一時的に借りただけのこと。
それで今でも容を覚えているなんてこと、本當にできるのか?
俺がし疑問に思っていると、ニノさんはハッとした顔をする。
「……最深部です。この場所、水路最深部のちょうど真上にあたります!」
「なんだと?」
「これはいよいよ、きな臭くなってきましたね……」
何とはなしに、嫌な予がした。
俺はとっさにロウガさんたちの前へ出ると、彼らのきを手で制する。
そして一歩、二歩。
黒々としたの縁からしずつ距離を取った。
特に理由があったわけではないが、そうしたほうがいいような気がしたのだ。
そして――。
「グアアアアッ!!」
の底から、のもよだつ雄びが聞こえた。
それと同時に、翼の生えた巨大な人型のが飛び立つ。
黒りする外皮に覆われた、人とも獣ともつかぬ異形の者。
その強靭な爪の側には、らしき姿が見えた。
あの銀の髪は、まさか……!!
「お、お姉さま!?」
「クルタさん!!」
どういうわけか、魔に捕らえられていたクルタさん。
完全に意識を失っているらしい彼は、そのまま抵抗することもなくどこかへ連れ去られていく。
「待ちなさい! 止まれ、止まれえぇ!!」
魔の背中に向かって、持っていた武を片っ端から投げつけるニノさん。
しかし魔の翼は、さながら鋼鉄で出來ているかのようにそのことごとくを弾き返した。
俺もとっさに飛斬を放つが、うまく軌道をよけられてしまう。
どうやらこいつ、相當に強い魔であるようだ。
「あれは……魔族かもしれん!」
「ま、魔族!? あれが、ですか」
「ああ、前に境界の森で見たやつと特徴が一致している」
「急いでギルドに報告しましょう! お姉さまが、お姉さまがあぁ!!」
完全に錯してしまっているニノさん。
あれだけ慕っていたクルタさんが、得の知れない存在に攫われてしまったのだ。
揺するのももっともである。
むしろ、まともに會話できているだけで奇跡的な狀態かもしれない。
「ええ! すぐにでも!」
「二人が連絡に行くなら、俺はこの場に殘ろう。まだゾンビはし殘ってるしな」
「ありがとうございます、助かります!」
こうして俺とニノさんは、その場をロウガさんに任せてギルドへと走るのだった。
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