《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》二十八話 邪悪な実験

「どっせえい!!」

ロウガのシールドバッシュが、飛びかかってきた犬どもを弾く。

濁ったと腐が飛び散り、群れが薙ぎ払われる。

その隣では、ニノさんが次々とクナイを投げて奧の犬たちを牽制している。

聖水に浸されたクナイは犬たちのを容易く貫き、まとめて何頭もの犬が倒れていった。

――これが一級聖水の威力か。

アンデッドの売りは、何よりもタフなだ。

の一部を吹き飛ばしたぐらいでは、すぐに再生してしまう。

しかし犬たちにできた傷は、塞がることはなかった。

それどころか、傷口から煙が上がりみるみる灰となっていく。

聖水の力によって、敵の邪悪な生命をこそぎ奪っているようだ。

「ブランシェ、ブランシェ!」

俺も負けじと、浄化魔法を連打する。

強烈なが、迫りくる犬たちを次々と灰に変えていった。

やはり、この剣は魔法のとして適している。

ゾンビと比べればいくらか強い犬たちも、問題にはならなかった。

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しかし――。

「……しかし、キリがねえな!」

「どこかで増でもしているのでしょうか」

「かも知れねえな!」

倒しても倒しても、どこからか湧いてくる犬たち。

いくら広い庭とはいえ、これだけの數が一どこから湧いて來るのか。

俺たちの力も無盡蔵ではない。

さすがにそろそろ、一息つきたいところなのだが。

そんな俺たちの願いとは裏腹に、事態はさらに悪化する。

「新手が來たな! ありゃ……騎士か?」

庭を囲うようにして聳えるコの字型の館。

その両端から、全鎧をまとった一団が現れた。

鎧の中はゾンビか何かだろうか。

普通の人間と比べるときがぎこちないものの、それなりに統制が取れている。

「むっ!」

ニノさんが投げたクナイを、騎士たちは盾を掲げて防いだ。

やはり、多は知能があるようだ。

ニノさんはやむを得ず短刀を取り出すと、近接戦へと移行していく。

をフォローすべく、すかさずロウガさんが距離を詰めた。

「大丈夫か?」

「何とか。ですが、私にはし不利な相手ですね」

「いざとなったら、聖水を投げればいいさ」

互いに背中を合わせるニノさんとロウガさん。

二人は互いの武に聖水をたっぷりしみこませると、獰猛な笑みを浮かべる。

仮にも一流と呼ばれるクラスの冒険者である。

このぐらいの修羅場ならば、既に何度か潛ってきている。

「ジークは先に向かってください! このまま包囲されれば、あなたもすぐにきが取れなくなりますよ!」

「でも、このままだと……」

「ちっ! またデカいのが來たぞ!」

ダメ押しとばかりに、他と比べて明らかに巨大な騎士が姿を現した。

ざっと見たところ、長三メートルと言ったところであろうか。

はオーガか何かのようで、鎧の隙間から巌のような筋が見える。

こちらが攻め込む準備をしたのと同様、敵もまた防衛のための準備をしていたようだ。

ドラゴンゾンビにも匹敵するほどの巨大な戦力だ。

「あいつは俺が引きけよう。ジーク、早くいけ! このままだとジリ貧になる!」

「ええ! この様子からして、敵はまだ戦力を持っています! 大元の魔族を倒さなくては、まだまだデカいのが來ますよ!」

館のり口を見ながら、先に行くことを促すロウガさんとニノさん。

……確かに、二人の言う通りかもしれない。

この様子だと、敵の戦力にはまだ余裕があることだろう。

くわえて、いま俺たちを襲っているアンデッドたちは魔族の指示をけていているはずだ。

だからその魔族さえ倒してしまえば、行を止める可能は十分にある。

「……わかりました」

「おう、任せとけ!」

「私の活躍、お姉さまによろしく伝えて下さい!」

さらりと自分の要を伝えてくるニノさん。

この様子なら、まだまだ余裕はありそうだな。

俺は軽く息を吐くと、二人にお辭儀をして走り出す。

そのきを察知して、追いかけてくる犬と騎士。

その攻撃をかわし、け止め、そらす。

敵の攻撃は、數こそ多いが非常に遅い。

ライザ姉さんとの特訓に比べれば、そこまで大したことはなかった。

「……よし」

無事に館のり口へとたどり著いた俺は、そのまま中にって扉を閉じた。

これでひとまずは安心か。

俺は改めて館のエントランスの方を向くと、不意に明りが燈る。

「なんだ?」

「よく來たな、歓迎しよう」

地の底から聞こえて來たかのような、低く威厳のある聲。

聲のした方へと視線を上げれば、階段の先に例の魔族の姿があった。

人と獣を掛け合わせ、翼を生やしたような姿はまさに異形。

見ているだけで、生理的な嫌悪が湧き上がってくるかのようだ。

「お前が……! クルタさんをどこへやった!」

「ふん、言われずとも呼ぼうとしていたところだ。さっさと來い!」

魔族の聲に促され、クルタさんが柱のから姿を現した。

しかし……どこか様子がおかしい。

目は酷く虛ろで、この非常時だというのにおよそ表と言うものがない。

さらにはそのきも、人間らしくない機械染みたものをじさせる。

「クルタさんに何をした……!」

「死霊魔の実験に協力してもらったってところかな。いやあ、実にうまくいったよ。本人の強い介に大量の死霊を憑依させることでね、生きたままアンデッドに近い強靭なと再生能力を與えることが出來た」

「そのために、クルタさんをさらったってわけか」

「その通り。私にとって彼ほど都合のいい存在はなかなかいなかったからね。憑依の介にする足る強い憎悪と高い戦闘力。申し分のない材料だった」

そう言うと、魔族はクルタさんの背後へと移した。

そしてその肩を抱くと、さらに俺を挑発するように笑う。

「一応、まだこいつは助からなくもない。せいぜいあがいてみるといい。もっとも、ルソレイユでも使えなければ無理だろうがね」

「なら大丈夫だな」

「なに? どう見ても剣士のお前が――」

「ルソレイユ!!」

消耗の激しさゆえに、ドラゴンゾンビ相手ですら溫存していたファム姉さん基準でも上位の魔法。

その絶大な威力が、とともに解放された――。

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