《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》三十一話 お姉ちゃんからは逃げられない

四年に一度、武蕓の國エルバニアで開かれる大剣神祭。

この大會で優勝した者には、最強の剣士として剣聖の稱號が送られる。

ひとたび剣聖となれば、大國の王ですら一目置くほどの地位と名聲が手にった。

このことから、剣聖を目指し大會へ出場する剣士はいつも數千人単位。

中には國の大々的な支援をけた騎士や、既に活躍している有名な冒険者なども多い。

名実ともに、世界最強の剣士を決める戦いなのだ。

この大會を勝ち抜き、剣聖となったライザ姉さんは強い。

そのことは俺も嫌と言うほど認識しているつもりだった。

しかしその認識は、まだまだ甘かったらしい。

「……これが、ライザ姉さんの本気なのか!」

視界を覆いつくすような巨獣ヒュドラ。

その九つの首の間を、ライザ姉さんは縦橫無盡に飛び回っていた。

そう、飛んでいるのだ。

空気を蹴飛ばして、自在に宙を駆けているのである。

超高等歩法「天歩」。

姉さんはそれを完全に使いこなし、三次元でのきをしていた。

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「なぁ、あの人は誰なんだい? さっき、聲かけられてたようだけど」

「知り合いか? いきなり現れたにしては、強すぎんだろ」

「……なんですか、あれは」

いを見せるクルタさんたち。

ニノさんに至っては、姉さんのことを人間じゃない何か別のものだと認識しているようだ。

そりゃ、あんなのがいきなり現れたらびっくりするよなぁ。

けど、俺の方も大いに戸っている。

ギルドが姉さんに連絡してから、まだ三日も経っていないはずだ。

快速馬車を使っても、実家からここまでは軽く二週間はかかるはず……。

まさか、シエル姉さんが伝説の転移魔法でも完させたのか?

「えっと、あれは……その……」

まさか、素直に姉さんだとは言えない。

できればノアだということも伏せておきたかった。

剣聖のなんてことになったら、自由にけなくなりそうだし。

ううーん、いったいどうすれば……。

俺がこうして答えあぐねている間にも、戦いは佳境へと差し掛かる。

「はああぁっ!!」

を大きくひねりながら、巨大な首を斬り飛ばす。

そのまま宙を蹴ると、今度は逆回転しながら迫りくるヒュドラの頭を縦に斬った。

鋼よりいとも言われるヒュドラの鱗。

それがいともたやすく、木の葉でも斬るように真っ二つになっていく。

「……図だけだったな」

念には念をと言ったところであろうか。

首をすべて切り落とし、さらにも両斷したところでようやく姉さんは剣を納めた。

時間にして、わずか五分ほど。

國をも亡ぼす魔界の大怪蛇は、一方的に殲滅された。

姉さんはやれやれと肩を回すと、改めて俺の方を向く。

――にこり。

どこか違和のある笑みが、猛烈に怖かった。

後ろに転がっているヒュドラの死にさえ、負けないほどのド迫力だ……!

「さてと。邪魔者も切ったところで、改めて詳しい事を聴かせてもらおうか」

「…………ごめん、みんな!!」

こうなりゃ逃げるしかない!

俺は慌てて姉さんに背を向けると、一目散に走りだした。

クルタさん、ロウガさん、ニノさんごめん!!

バーグさんも、直接達報告できなくてごめんなさい!

ロックタイタスの素材は置いていくから、ロウガさんたちからけ取ってほしい!

俺は心であれこれ謝りつつも、姉さんへの恐怖から全力で足をかす。

だがしかし――。

「逃げられると思ったのか?」

「へっ!?」

いつの間にか、後ろにいたはずの姉さんが目の前にいた。

皆に心で謝るため、目を閉じたわずか一瞬。

その隙に、俺の前方へと移してきたようだ。

……この人、本當に俺と同じ生きなのか!?

とっさに足を止めて方向転換を試みるが、それすらも先回りされてしまう。

「…………參りました」

「よろしい」

――姉さんからは逃れられない!

俺はやむなく、白旗を上げたのだった。

――〇●〇――

「まさか、あなたが剣聖の弟だったとは。人は見かけによりませんね」

「すげえやつだとは思っていたが、なるほどなぁ」

姉さんからおおよその事を聴いて、ニノさんたちは驚いた顔をした。

その直後、俺のことをちょっぴりからかうような顔で見てくる。

このことをみんなに広めたいと、目が語っていた。

俺は慌てて、三人に対して釘を刺す。

「言わないでくださいよ! ばれたら絶対に面倒なことになりますから!」

「……俺たちは構わないが、ライザさんはどうなんだ?」

「私もことを公にするつもりはない。簡単な報告だけ済ませたら、こっそり連れ帰るつもりだ」

そう言うと、姉さんは俺の手をがっしりと握った。

そして何故かニノさんとクルタさんに強い視線を送ると、威圧するように言う。

「ノアは私の弟だからな。私と一緒に家に帰るのがベストなのだ! な?」

「……本人はここに殘りたがっているようですが」

「ジーク君、すっごい渋い顔してるねぇ」

「ジークではない、ノアだ!」

姉さんはしムキになってそう言うと、俺のをグイっと自分の方に引き寄せた。

そして、顔をまっすぐ覗き込みながら尋ねてくる。

「ノア、お前は強くなりたいのだろう? だったら、私のもとで修業を積むのが一番だ。才能のないお前でも、あと五年も修行すればいっぱしの剣士にはなれる!」

「魔族にほぼ勝っていた時點で、十分すぎるほど強いと思いますが」

「うん、Aランクのボクより明らかに強いよ」

「甘い! そんなことだから、ヒュドラごときに騒ぐ羽目になるんだ!!」

口をはさんだニノさんとクルタさんに、猛反発する姉さん。

まぁ、姉さんの基準からしてみればヒュドラなんてデカイだけの蛇だろうからなぁ。

純粋に技量の向上だけを考えるなら、やはり姉さんの元に戻って修行するのが良いだろう。

あのヒュドラにだって、すぐに勝てるようになるかもしれない。

けれどそれは……ううーん……。

「姉さん。俺、やっぱりここに殘るよ」

「なっ! お前、この姉の指導がそんなに気にらないって言うのか!? 私は剣聖だぞ!」

「そうじゃないよ! 姉さんの指導は、キッツいけどにはなると思う。けどこのまま姉さんに頼っていていいのかって」

「……どういう意味だ?」

「姉さんは強すぎるんだよ。だからこう、近くにいると頼っちゃいそうというか。神的に自立できなくなる気がするんだ。それに姉さんだけに習ってたら、いつまで経っても俺は姉さんの劣化にしかなれないと思う」

俺が切実に訴えると、姉さんは渋い顔をした。

いつもならば、こんなこと言ったら有無を言わさずに拳骨が落とされるところだけど……。

今日はそれがなかった。

人前で遠慮しているのか、それとも何か思うところがあるのか。

姉さんは腕組みをすると、そのまましばらく考え込んだ。

そして――。

「……二つ條件がある」

「おおお! ありがとう、姉さん!」

「喜ぶのは早い、人の話は最後まで聞け! ……一つ目の條件はもし、萬が一、ないとは思うが。誰かと付き合うことになったらすぐ連絡しろ。無許可で際するようなことは絶対に許さん。私の許可を取れ!」

「は、はい!」

「二つ目は――」

もったいぶるように間を持たせる姉さん。

何だか、凄く嫌な予がしてきたぞ。

まさか……な。

いくら頭が筋で出來ている姉さんでも、そんな無茶ぶりはしないだろう。

だって俺と姉さんの実力差は――。

「私に一本れろ。どんな手段を使っても構わん」

……うん。

姉さんは俺の予想を超えて、脳筋だったようだ。

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