《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》三十三話 鍛冶師の助力

「……おいおい、えらく辛気臭い顔してるな?」

翌日。

ニノさんたちと一緒に店を訪れた俺を見て、バーグさんは怪訝な顔をした。

彼は作業を中斷してこちらに近づいてくると、俺の顔を見上げる。

「まさか、依頼に失敗したのか? もしそうなら、その剣は返してもらわないといけないぜ」

「ああ、それは問題なく功しましたよ。これ、ロックタイタスの素材です」

マジックバッグを取り出すと、中からロックタイタスの甲羅の一部を取り出す。

バーグさんは早速それをけ取ると、小さな金づちを取り出してカツカツと叩いた。

すると、金屬とも石とも取れぬ質な音が響く。

「うん、間違いねえな。質もよさそうだ」

「ついでに、こんなのもあります」

嬉しそうな顔をするバーグさんに、俺はマグマタイタスの素材も取り出して見せた。

ロックタイタスと比べていくらか黒褐をしたそれを見た途端、バーグさんの眼のが変わる。

「おおお! こいつはもしや……!」

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俺から素材をけ取ると、ロックタイタスの時と同じように金づちで叩いて音を確認する。

先ほどより、ほんのし重く沈んだ音がした。

バーグさんの表がみるみる明るくなり、口から會心の笑みがこぼれる。

「やるじゃねえか!! マグマタイタスの素材なんて、久しぶりに見たぜ! こいつはロックタイタスよりも上質な砥石になるが、數もなきゃ倒せるやつもねえんだよな」

「じゃあ、こっちもお譲りしますね」

「おう! ロックタイタスの報酬とは別に、八十萬でいいか?」

さすがは一流の鍛冶職人、なかなかに気前がいい。

ただでさえ、黒剣を実質的に半額以下で売ってもらっているというのに素晴らしい。

俺はすぐさま首を縦に振る。

「ありがとよ。しかし、マグマタイタスなんぞ倒してきたぐらいだ。仕事は大功だったんだろ? なんであんなにしけた顔してたんだ?」

「その後でいろいろとありまして」

「ああ、パンタネルで仕事を終えたまでは良かったんだがなぁ……」

「あの後は、本當に疲れましたね」

クルタさん拐騒を思い返しながら、俺たち三人はふっとため息をついた。

無事に片付いたとはいえ、かなりの大事件だったからなぁ。

最後にはヒュドラなんて超大まで現れちゃったし。

「そういや、教會でゾンビが出たとか騒ぎになってたな。あれの関係か?」

「ええ、まあ……詳しいことは言えないですけど」

「そうか、大変だったな。だが、今ここに居るってことは無事に済んだんだろ?」

「ええ、事件自は解決しました。ただその……り行きで、決闘することになっちゃいまして」

ほほうっとうなずくバーグさん。

彼はそのまま目を細めると、楽しげに笑みを浮かべる。

「決闘か。そいつはなかなか面白そうじゃねえか」

「笑いごとじゃありませんよ! 勝たないといろいろマズいですし、しかも相手はめっちゃくちゃ強いんです」

「つっても、お前さんだってマグマタイタスを倒すぐらいだろ? そんなにビビることねえだろ」

「それが、その……」

「剣聖ライザさんなんですよ、その相手が」

靜かに告げるニノさん。

すぐにバーグさんの眼がぎょっと見開かれた。

さすがに、剣聖が相手だとは思っていなかったらしい。

そりゃ、一般人でも知ってるクラスの存在だものなぁ……。

「おいおい、何がどうなったらそんなことになるんだ!?」

「事は言えませんが、いろいろありまして……」

弟だなんて言ったら、絶対にややこしくなるからな。

今後の平穏な生活のためにも、にしておいた方が絶対にいい。

こうして俺があえて細かいところを誤魔化すと、バーグさんは何を勘違いしたのか、勝手に納得したような顔をしてうなずく。

「若気の至りってやつか。わかるぜ、勢いで強い相手に挑む気持ち。俺も昔は、ドワーフの王様に鍛冶勝負を挑んだりしたもんだ」

「は、はぁ……」

「ま、そう言うことなら俺も力を貸すぜ。無茶な奴は嫌いじゃねえ」

「ありがとうございます。気持ちだけでもありがたいです」

もし姉さんとの決闘で剣が破損したりしたら、遠慮なくバーグさんを頼らせてもらおう。

まあ、この頑丈極まりない黒剣が壊れるようなことはまずないだろうけど。

これが壊れるよりも前に、俺のの方が持たなくなると思う。

「武以外にも、手みで作ったもんが結構あるんだ。良かったらそいつを見て行けよ。何か役に立つものがあるかもしれねぇ」

「あ、そういうことならぜひ!」

「よし來た! ふふふ、こいつらを見せるのはジークたちが初めてかもしれねえなぁ」

鼻歌を歌いながら、楽しげな様子で奧の工房へと向かうバーグさん。

倉庫でもひっくり返しているのだろうか?

ガタンバタンと騒々しい音が聞こえてくる。

やがてそれが収まると、バーグさんは大きな木箱を手に戻ってきた。

中には大砲の弾のようなから、不気味な造形の人形まで様々なものが詰まっている。

「へえ……バーグのオッサン、こんなもんまで作ってたのか」

「魔道ですか?」

「それもあるが、機械仕掛けのものも多い。あくまで趣味だからな、規則はあまりない」

「よく見せてもらっていいですか?」

「おう、もちろんだとも! 必要ならいくつか持って行ってくれ!」

こうして俺たちは、姉さんとの決闘に使えるものがないか念りに箱の中を調べるのだった。

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