《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》三十五話 決闘開始!
迎えた決闘當日。
俺たちのパーティーにクルタさんと姉さんをくわえた五人は、連れたって水路通りを歩いていた。
街を貫く水路に沿って酒場やレストラン、さらには娼館といった店が雑多に建ち並ぶこの界隈。
付嬢さんが前に悪所と表現した通り、全にどことなく猥雑な空気が漂っていた。
まだ晝間だというのに、そこかしこから溢れてくる酒の香り。
建のには、ちらほらと客引きらしきの姿も見て取れる。
集団で歩いているので特に何もされないが、一人だったらきっと聲掛けも凄いのだろう。
「……ロウガ殿。本當にこの先に、決闘できる場所などあるのか?」
訝しげな顔で、姉さんが前を歩くロウガさんに尋ねる。
確かに、本當にこんな場所に闘技場なんてあるのだろうか。
今のところ全くそのような気配はしなかった。
「大丈夫、場所はちゃんと確認してあるからよ。ほら、あの酒場だ」
そう言ってロウガさんが指さしたのは、通りの端にある大きな二階建ての建だった。
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酒瓶の描かれた大きな看板が、軒先に掲げられている。
しかし、建の大きさに反して人はあまりいないようであった。
営業自はしているようだが、カウンターに一人、酔いどれの男がいるだけである。
「かなり空いてますね。晝だから當然と言えば當然ですが」
「酒を飲みながら沸き躍る戦いを見られるってことで売り出したらしいが、剣闘士や魔を手配するのに思った以上に金がかかったそうでな。結局闘技場はほとんど使われず、今じゃ酒場もほとんど開店休業中だ」
「兵《つわもの》どもが夢の跡というわけですか」
「ま、そのおかげで安く貸し切りにできたんだけどよ」
そう言って、ロウガさんは俺たち四人を一旦店の外で待たせた。
彼はそのまま一人で店にると、カウンターにいる店主らしき男に親しげに話しかける。
どうやら、ロウガさんはここの常連であるようだ。
「さすが、水路通りの主って言われてるだけのことはあるねぇ」
「何ですか、それ?」
「ジーク君、知らないのかい?」
からかうように聞き返してくるクルタさん。
俺はゆっくりと首を橫に振った。
すると今度はニノさんが、ふうっとため息をつきながら言う。
「ロウガは休みのたびにこのあたりをフラフラしていますからね。いつの間にか、主って呼ばれるようになったんですよ」
「へぇ……」
「ジーク、お前はそんな風になってはいけないぞ。変な遊びを覚えたら、怒るからな?」
かなりマジなトーンで告げてくる姉さん。
ピクピクッと口元が震えているのがすごく怖い。
……ロウガさんのいに、うっかり乗らないように気をつけないとな。
朝帰りをしたら部屋に姉さんが待ち構えていたとか、普通にありそうだ。
「おーい、來てくれ!」
俺が震えているうちに、ロウガさんの話が終わったようだ。
早速彼の案で酒場の中にると、奧の階段から地下へと降りていく。
おお……これは凄い!
やがて階段を降りた先にあったのは、思いもよらぬほど立派な闘技場であった。
よくもまぁ、酒場の地下にこれだけの施設を作ったものだ。
ざっと見たじ、客席數は二百から三百と言ったところか。
俺たち二人で戦うには、十分すぎる広さである。
「簡易的なものだが、闘技場の壁は魔法障壁で強化もされてる。よほど無茶をしない限りは大丈夫だそうだ」
「なるほど、それは心強い」
「……と言っても、あくまで普通基準の話だからな? あんたのきにどこまで耐えられるかはわからんぜ」
改めて念押しをするロウガさん。
まあ、姉さんが本気を出したらこの世界のはだいたい斬れるからなぁ。
シエル姉さんが丹込めて造った魔法障壁なら防ぐかもしれないけれど、ここで使われている機材にそのクラスを期待するのは無茶だろう。
「それなら安心してくれ。対人戦に過剰な威力はいらないからな。武も私は木刀を使わせてもらおう」
マジックバッグから木刀を取り出す姉さん。
彼はそのまま闘技場の中心近くへと移すると、正眼の構えを取った。
――空気が変わった。
剣を構えただけで、ただならぬ気迫が伝わってくる。
「では、私たちは客席へ行きますね」
「頑張ってくれよ、ジーク君!」
「そうだ、剣聖が相手でもビビるんじゃねえ! かましてやれ!」
クルタさんたちは俺に一聲ずつかけると、そのまま客席へと移した。
さて……いよいよだ。
俺は額に汗を浮かべながら、黒剣を抜く。
姉さんの剣の特徴は、何よりもまず速いこと。
気を抜けば一瞬にして敗北してしまう。
決闘開始からの一秒ほど。
そこで繰り出される姉さんの最初にして最速の一撃をどう凌ぐかが、一番の課題だ。
「では……勝負、始め!」
ニノさんの聲が開幕を告げる。
先に仕掛けたのは、やはり姉さんであった。
彼は倒れるようにして前傾姿勢を取ると、ほんの一瞬で距離を詰めてくる。
相変わらず、とんでもない速さだ。
心なしか、いつもよりもさらにきのキレが増しているような気さえする。
俺は剣でガードしようとするが、追いつけない。
だがここまでは予想通り、ちゃんと対策もしてきている。
「っ!!」
――パァンッ!!
木刀の先がわき腹を強かに打ち付けようとした瞬間。
俺の服が破裂して、いきなり黒いが飛び出した。
突然のことに驚いた姉さんは、とっさに飛び退いてそれを回避する。
彼は顔つきを険しくすると、厳しい目をこちらに向けた。
「……何が起きた?」
「服の中に、ちっちゃい弾みたいなものを仕掛けておいたんだ。衝撃に反応して、インクを飛び散らせるようにしてある」
そう言うと、俺は黒い丸薬のようなを取り出した。
それを地面に叩きつけると、たちまちパンッと景気のいい音がして弾ける。
バーグさんから譲りけたアイテムの一つだ。
姉さんが狙ってくる場所はだいたい同じだから、あらかじめそこにこいつとインクを仕込んでおいたのだ。
人よりはるかに勘の鋭い姉さんなら、異変を察知したら即座に退くと予想して。
「妙な小細工をしおって……。言っておくが、そんなもので勝てるほど私は甘くないぞ!」
「知ってるよ。だから、小細工じゃない方法も考えてる」
黒剣を構えなおし、炎の魔力を込める。
たちまち剣が赤熱し、紅の炎を発し始めた。
俺がこのラージャに來てからに著けた新しい力。
魔法と剣技の融合、魔法剣だ。
「……ほう、面白そうではないか」
「ああ。ここからだよ、姉さん!」
果たしてこの勝負、俺と姉さんのどちらが勝つのか。
俺の実力が試されるときが來ようとしていた。
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