《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》四話 冒険者(仮)

「つまり、この依頼で指定されているラズコーの谷と言うのが凄く厄介な場所だと?」

俺がそう聞き返すと、クルタさんたちは揃ってうなずいた。

ラズコーの谷の魔力濃度調査。

俺が取ってきた依頼書には、そのように容が記されていた。

クルタさんによれば、谷の上下で魔力の濃度に異常な差が生じていないかを調べるらしい。

この谷の魔力の循環がおかしくなっていると、このあたり全に影響があるそうだ。

「ラズコーの谷は、深いし険しいからな。なにせ、上からじゃ谷底が見えないくらいだ。途中で崖登りもしなきゃならねえから、調査するのが手間なんだよ」

「調査系の依頼では、ぶっちぎりで不人気の場所ですね」

「……まあでも、ボクたちとの相は割といいんじゃないかな? ボクとニノは軽だし、ジーク君もける方だろう?」

苦笑しながらも、それとなくフォローをれてくれるクルタさん。

うーん、でもそれだと……。

俺はちらりとロウガさんの方を見た。

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筋骨隆々とした大柄なは、とても軽にけるとは思えなかった。

ロウガさん自も、し困ったように頬を掻く。

「……確かに、俺はあの場所が苦手だな」

「……どうします? 留守番しますか?」

「でも、ロウガさんも昇格のために貢獻度はしいですよね。なら、俺が責任をもってフォローして――」

「いや、俺一人だったらどこかのパーティに混ぜてもらえばいい。これでも顔は広いんでな、そのあたりは何とかなる」

他の冒険者たちの様子を見ながら、淡々と告げるロウガさん。

無事に依頼書を手にれたパーティのうちいくつかに、知り合いがいるようだった。

「じゃあ、今回は別行にしましょうか」

パーティの盾役が抜けることにし不安があるが、仕方がない。

メンバーの能力はそれなりに高いから、どうにかなるだろう。

それに、ゴリゴリの討伐依頼ってわけでもないしな。

俺は改めて依頼書を手にすると、手続きを済ませるためカウンターへと向かった。

するとここで、誰かが肩をポンポンと叩いてくる。

「……あ、姉さん!」

振り返ると、そこに立っていたのはライザ姉さんだった。

こんな早い時間からギルドにいるなんて、珍しいな。

俺がそう思って首をかしげると、姉さんは疑問に答えるように言う。

「アベルト殿に呼ばれてな。お試しでいいから冒険者をやってみないかと、いをけたのだ」

「またですか。ギルドも本當に熱心ですね」

「今は戦力がしい時期だからねぇ。剣聖ともなれば、いをけるのは當然だよ」

「そうでなくても、ライザさんをどこが口説き落とすかは話題になっていましたからね」

そう言えば、そんなことも言われてたなぁ。

今のところライザ姉さんはどこの組織にも所屬していない。

王宮に出りしていたりするが、あれも國に雇われているわけではなかった。

だから國や騎士団、そしてギルドの間では姉さんを巡る激しい奪い合いまであるらしい。

……俺も聞いた話だから、どこまで本當かはわからないのだけど。

「一応、話は聞いたぞ。そう言うことなら、パーティの四人目に私を加えてくれないか?」

「え? 姉さんを?」

「ああ。戦闘依頼ではないのだろう? ならば問題あるまい」

言われてみれば、その通りである。

姉さんを依頼に加えない最大の理由が、姉さんの強さに頼ってしまうから。

でも、非戦闘依頼ならばその點は問題にならない。

むしろ、戦い以外は俺の方が先輩だろう。

「……けど、依頼をけられるのはそもそも冒険者限定じゃないか? そこはどうするのさ?」

「大丈夫だ。アベルト殿からこんなものを貰っている」

姉さんは懐から、ギルドカードによく似たを取り出した。

ただ、裏面の合いが全く異なっている。

俺たちのギルドカードが赤銅なのに対して、姉さんのカードは銀をしていた。

「臨時のギルドカードだそうだ。本來は、國の騎士などが急で依頼に參加する場合に渡すものらしい」

「それがあれば、姉さんもひとまず冒険者として扱われると?」

「まあそう言うことになるな」

「……仕方ないなぁ。今回だけ、あくまでロウガが抜けるからだよ」

大義名分が奪われたため、渋々と言った様子ながらも參加を認めるクルタさん。

それに追従するかのように、ニノさんもまた「歓迎します」とつぶやいた。

これでひとまず、姉さんの加は問題なしか。

俺は依頼書を広げ直すと、今度こそカウンターへと向かう。

「はい、承りました。では調査に必要な機材を持ってきますので、々お待ちくださいね」

カウンターの奧へと引っ込んでいく付嬢さん。

俺はここで、ふと気になったことを姉さんに尋ねてみる。

「そう言えば、姉さん」

「何だ?」

「そのギルドカード、ランクはどうなってるんですか?」

やっぱり、剣聖なのだからSランク扱いなのだろうか?

純粋な戦闘力だけで言えば、世界最強と言っていい存在なんだし。

もしそうだったら、臨時とはいえちょっとワクワクするよな。

「ああ、Fランク扱いだ」

「やっぱりえす……えふ!?」

あまりのことに、ちょっとばかりびっくりしてしまう。

まあ、形式的に全部Fランクってことにしてるんだろうけど……。

姉さんがFって、そりゃまたひどいランク詐欺だな。

同じことをクルタさんとニノさんも思ったようで、呆れ顔でつぶやく。

「剣聖がFランクねぇ……」

「まあ、表向きはただの騎士と言うことにしてあるからな。仕方あるまい」

表向き、ライザ姉さんは「ギルドに協力をする王國の騎士」と言うことにしてある。

そうでもしないと周囲がうるさいからと、姉さん自らがそうしてしいと申し出た。

ちなみにヒュドラについては、まだ出現したことについて公には伏せられている。

ニノさんとロウガさん、そして俺が協力して魔族を打ち倒した。

それがこの前の事件について、街の人々が認識してることだ。

「にしても、姉弟そろってひどいランク詐欺です」

「ああ。ほんとだよ」

ん? 姉弟そろって?

いや、姉さんはともかく俺の方はそこまででもないと思うぞ?

サラッと不穏なことを言うニノさんに、俺はおやっと首をかしげるのだった。

【読者の皆様へ】

設定について一部追記しました。

うっかり説明したつもりで抜けてしまっていました、申し訳ないです。

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