《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》十一話 最高の防を求めて

姉さんが街を飛び出して行った翌日。

俺はギルドの前で、クルタさんたちと待ち合わせをしていた。

さて……姉さんに贈る防は一どんなのがいいかなぁ?

俺が思案をしていると、ロウガさんが聲をかけてくる。

「よう!」

「ロウガさん! 早いですね!」

「ああ。こういう時、男は早めに來るもんだからな。を待たせちゃいけねえ」

「その勤勉さを、しは普段の仕事で活かしてくださいよ」

「ははは、そりゃそうだ!」

腰に手を當てて、豪快に笑うロウガさん。

そうしているうちに、ニノさんとクルタさんがやってくる。

おや、クルタさん……いつもと服裝が違うな。

的な白を基調に、細くしなやかなの線がはっきりと出るような服を著ている。

な、何だかいつもよりずいぶんと……大人のっぽいな。

「おはよう! 昨日は眠れたかい?」

「ええ、まあ。にしてもどうしたんです、その恰好は?」

「お買いに行くのに、普段通りの服裝なんてのも蕓がないと思ってね」

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「おいおい、買うのはクルタじゃなくてライザの防だぜ?」

そんなに気合をれてどうする、と呆れるロウガさん。

一方、水を差された格好となったクルタさんはぷうっと頬を膨らませる。

「別にいいじゃないか。買いに行くのは事実なんだからさっ!」

「わっ!」

クルタさんは急に俺との距離を詰めると、サッと腕を絡めてきた。

ほんのりと薫る特有の甘い香り。

腕から伝わってくる暖かな溫。

予期せぬ出來事に、俺はたちまち思考停止しそうになった。

恥ずかしいことだけど、姉さんたち以外にこんなことされたのは初めてだ。

「な、何をしよっと!?」

「ふふふ、そんなに慌てなくてもいいだろ? ちょっとしたスキンシップだよ」

「は、はぁ……」

「もっと素直に喜ぶべきでしょう。笑ってください」

「いや、強制されるものでもないと思うよ!?」

クルタさんが関わると、途端にニノさんから常識が失われるんだよな……。

俺に対する態度がらかくなった分、以前と比べればはるかにマシなんだけども。

「まあいいでしょう。お店へ行きますよ」

「は、はい!」

「ふふふ、ついでにボクの防も選んでもらっちゃおっかな」

「あんまりジークを困らせるなよ、クルタちゃん」

こうしてギルドを出て、街の通りを歩くこと十分ほど。

俺たちは軒先にたくさんの防を飾った店の前へとやってきた。

どうやらここが、オルトさんの店のようだ。

ギルドと頻繁に取引をしているだけあって、意外にも近い場所だった。

「なかなか雰囲気の良い店じゃねえか」

「そうだね、整理整頓が行き屆いてるよ。案外そういうところがダメな店は多いんだけど」

「ああ、バーグの親父の店だって裏はグッチャグチャだぜ」

「ややっ! これは!」

やがて奧から現れたオルトさん。

彼は俺の顔を見るなり、目を丸くして驚きをあらわにした。

さすがは商人さん、俺の顔をしっかりと覚えていたようだ。

「ジークさんじゃないですか! いやあ、お久しぶりです!」

「はい、こちらこそ」

「噂は私の耳にも屆いておりますよ。何でも、魔族討伐にも協力されたとか」

「ええ、まあ。本當はもっと早めに來るはずだったんですけど、すいません」

「いえいえとんでもない! 來ていただけただけでありがたいですよ」

そう言うと、オルトさんは咳ばらいをしながら改めて姿勢を正した。

「それで、本日は何をお求めでしょう? 皆様の新しい防ですかな?」

「実は、とある人に防を贈りたくて。の剣士なんですけれども、おすすめはありますか?」

「なるほど。そういうことでしたら、その方の戦い方にもよりますな。どのような方なんです?」

「えーっと……とにかくきが速いですね。それでいて、かなり力もあります」

「ふむ……」

しばし逡巡するオルトさん。

彼は飾ってある防に目をやりながら、あれでもないこれでもないと悩む。

「機力が大事ということであれば、こちらの鎧などいかがでしょう? ミスリルで出來ておりまして、非常に軽いですよ」

「ちょっと貸してみてください」

オルトさんから鎧をけ取り、持ち上げてみる。

おー、確かに軽いな!

片手で楽々と支えることができる。

下手をすれば、革の鎧より軽いぐらいじゃなかろうか。

「悪くねえな。だが、その鎧だと可域が狹くないか?」

「そうだね。ライザにはちょっと窮屈かもしれない」

鎧を見ながら指摘するロウガさんとクルタさん。

言われてみれば、をがっしりと覆う型の鎧だからなぁ……。

誰よりも機敏にく姉さんには、し向いていないかもしれない。

「うーん、となるとこちらはいかがでしょう?」

店にある防を、次から次へと持ってくるオルトさん。

しかし、なかなかこちらの條件に合うものは見つからなかった。

まあ無理もない、姉さんみたいな人はなかなかいるもんじゃないからな。

あのスピードとパワーに耐えられる鎧なんて、そうそうあるものじゃないだろう。

「うーん……なかなか見つかりませんね」

「ボクもちょっと考えてみたけど、やっぱり難しいよねぇ」

「ちなみに、その方が防を買うのは初めてですか? もしそうでないとしたら、前に使われていた防に合わせてみるというのはいかがでしょう」

「なるほど、その通りですね」

「それもそうだな。前にライザが使っていた鎧と同じのでいいんじゃないか」

納得したような顔をするニノさんとロウガさん。

ああー、それもそうだな。

でもあれって確か……。

「……それはちょっと難しいですね」

「ん? あの鎧、そんな凄い代だったのか?」

「鎧と言うか、あれに掛けられていた付與魔法が凄いんですよ」

そう言うと俺は、眉間に深い皴を寄せた。

あれに付與魔法を掛けたのは、誰であろう――。

「賢者が直々にかけたものなんですから」

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