《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》第一話 魔王の

「それで、話したいことって何なんですか?」

付カウンターの奧にある、ギルドマスター専用の執務室。

そこにって扉を閉めたところで、俺はさっそく話を切りだした。

わざわざ人に話を聞かれない場所まで連れて來られたのだ。

これで大した用件でなかったら、こちらとしてもちょっと困る。

「……実はな。ケイナ君に、先日のサンプルの調査を進めて貰ったのだがね。驚くべき結果が出たんだよ」

「サンプルって言うと、あの切れ端に付著したですか?」

先日、俺たちがラズコーの谷で遭遇した魔族らしき存在。

そいつの著ていたローブの切れ端を、シエル姉さんがサンプルとしてこっそり回収していた。

それには魔族のものと思しきが付著していて、その調査をケイナさんが行ったというわけだ。

「ああ、その通りだ」

「じゃあやっぱり……魔族のだったんですね?」

「その通り。それも驚いたことにやなぁ……」

言葉を區切ると、何やら深刻そうな様子で眉間に皺を寄せるケイナさん。

Advertisement

それに合わせるように、マスターもまた顔を険しくした。

にわかに漂い始めたに、俺たちもたまらず息を呑む。

「そんなに、ヤバかったのか?」

「うん。調査の結果な、あのには黒竜の因子が含まれとったんよ」

「黒竜? それが、どう大変なの?」

いまいちピンとこなかったのか、小首を傾げるクルタさん。

ロウガさんとニノさんも、はてと顔を見合わせる。

黒竜か……。

そう言えばどこかで聞いたことがあるような気はするのだけれども。

どこで聞いたのか、俺もはっきりと思い出すことはできなかった。

「黒竜って言うのは、魔界の王の種族やね」

「お、王!?」

「そうや。黒竜のを引いとるのは、魔界でも王族や一部の上流貴族に限られとる」

「つまり、あの谷にいた魔族は魔界でも大であるということだな?」

険しい顔をしながら、聞き返すライザ姉さん。

ケイナさんは黙って首を縦に振った。

道理で、話を聞かれないように俺たちを移させたわけである。

こりゃとんでもない大ごとになってきたぞ……!!

魔界の大が人間界に現れたというだけでも、大事件なのである。

ましてそれが、何らかの破壊工作をしていたとなれば……。

最悪の場合、人間と魔族の大戦爭が始まってしまうかもしれない。

そんなことになれば、國の一つや二つ吹っ飛ぶぞ……!

「すでに今回の一件については、ギルド本部はもちろん王國や教會にも報告を上げさせてもらった」

「當然ですね。とんでもないことですよ、これは」

「その上で、ギルド本部から極の依頼が二つ発せられた」

「二つですか?」

「ああ、いずれも極めて重要なものだ」

そう言うと、マスターはまず俺と姉さんの顔を見た。

そして軽く咳ばらいをすると、重々しい口調で告げる。

「まず、ジークとライザ殿。二人には聖騎士ウェインのパーティと合流して、あるを魔界まで屆けに行ってもらいたい」

「魔界にですか……!?」

「そうだ、境界の森を超えてもらう」

「……厄介だな」

ぽつりとこぼすライザ姉さん。

いやいや、普通は厄介どころの騒ぎじゃない。

境界の森は、魔界側へ進めば進むほどに生息する魔が強くなっていく魔境だ。

しかもその奧地は、數百年もの長きにわたって人が立ちったことがない。

魔族との協定によって、流が厳しく制限されてきたためである。

「一応、森を抜けるための道自は存在している。最後に使われたのは三百年前だがな」

「それってもう森に飲み込まれているのでは……」

「だからこそ、君たちに依頼したいのだ。ちなみに、一緒に行する聖騎士ウェインはS級冒険者だぞ」

「おおお……!!」

S級冒険者と聞いて、俺は思わず目を輝かせた。

S級と言えば、大陸に星の數ほどいる冒険者たちの中でも數十名しか存在しない超エリート。

まさしく冒険者界の頂點に君臨する存在である。

その実力は凄まじく、文字通りの一騎當千をし遂げる者もいるとか。

冒険者の聖地とも言われるラージャなら、そのうち會う機會もあると思っていたけれど……。

まさか一緒に仕事ができるなんて、思ってもみなかった!!

「S級冒険者……! 會うのが楽しみですね、ライザ姉さん!」

「ふん! S級が何だ、私の方が強いに決まっている!」

頬を膨らませて、そっぽを向く姉さん。

よくわからないが、急に機嫌を悪くしてしまったようだ。

何か気に障るようなこと、言っちゃったかな?

俺が助けを求めるようにクルタさんたちの方を見ると、みんなやれやれと肩をすくめる。

「まったく、鈍な奴だな……」

「ですね。ライザさんが可哀想です」

「ま、そういうとこも可いと思うよ」

ロウガさんとニノさんが呆れる一方で、クルタさんは俺をめてくれた。

ええっと、結局何がいけなかったのだろう……?

俺が困っていると、話題を斷ち切るようにクルタさんが言う。

「それで、もう一つの依頼は? たぶん、殘ったボクたち三人でけるんだよね?」

「ああ、その通りだ。クルタ、ロウガ、ニノの三名にはある人の護衛を引きけてもらいたい」

「……どなたなんですか?」

何故か名前を出さなかったマスターに対して、端的に尋ねるニノさん。

するとマスターは、顎をりながら困ったように言う。

「それについてはまだ教えられない。先方からの要で、ギリギリまで來訪を伏せてしいそうなのだ」

「おいおい、護衛依頼で相手を知らないなんてありえねーぜ?」

「うむ、もっともな意見だ。しかし、言えないものは言えないのだ。もうし待ってくれ」

「……ひょっとして、裏社會の人とかじゃないよね?」

「まさか! 今回の件に関係して來訪される、非常に重要なお方だ」

マスターがそうまで言うということは、よほど地位のある人なのだろう。

ひょっとして、王様でも來るのだろうか?

クルタさんたちは揃って顔を見合わせる。

「とにかく、二つとも極めて重大な依頼だ。パーティを分けることになって申し訳ないが、よろしく頼む」

「はい!!」

こうして俺たちは、ギルドからの重要依頼を引きけるのだった――。

【お知らせ】

書籍版が6月15日頃にGA文庫より発売されます!

既にamazonをはじめとするネット書店で予約が始まっておりますので、ぜひぜひご覧になってください。

今回ももきゅ先生の素敵なイラストがついておりますので、必見です!

また、加筆修正もしておりますのでぜひよろしくお願いします!

    人が読んでいる<【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください