《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》第八話 聖騎士
「しかし、エンペラーが出るとはな。これも魔族の影響だろうか」
ラグドア平原からの帰り道。
姉さんは眉間に皺をよせ、腕組みしながら呟いた。
話によれば、ゴブリンエンペラーは數十年に一度しか現れない超希種。
數年前に現れた際は、姉さんがわざわざ他國にまで出向いて討伐したらしい。
そう言えば何年か前、何か月か家を空けてたのはそのためだったのか。
「ケイナさんに報告した方がいいですね。また何かわかるかもしれません」
「だな、早くギルドへ戻らなくては。しかし……あの男には困ったものだ」
やれやれと肩をすくめるライザ姉さん。
あの男とは、言うまでもなくウェインさんのことだろう。
よほど彼のことが気にらないのか、姉さんの言葉にはひどく棘があった。
「まあまあ、そんなに怒らなくとも」
「いいや、良くない。Sランクと言えば冒険者の規範となるべき存在だぞ。それがあれではな……」
「別に悪いことをしたわけじゃないでしょう?」
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俺は姉さんをなだめるが、なかなか機嫌は良くならなかった。
それどころか、彼は次第に眉間の皺を深くする。
「……そう言えばあの男、聖騎士と名乗っていたな。よくなれたものだ」
「そりゃあ、Sランク冒険者ですからね。実力は十分でしょう」
「いや、腕だけでは聖騎士にはなれん」
そういうライザ姉さんの顔は、やけに自信ありげだった。
ずいぶんと詳しそうだけど、何でだろう?
俺が小首を傾げると、姉さんは微笑みを浮かべて語り出す。
「剣聖になる前、私も聖騎士の稱號がしいと思ったことがあってな。その時、ファムに聞いたんだ」
「なるほど、それで」
聖騎士とは、聖十字教団に選ばれた優秀な騎士が得られる稱號である。
當然のことながら、聖であるファム姉さんなら聖騎士になるための條件にも詳しいだろう。
何なら、ファム姉さんの権力で聖騎士の稱號ぐらいはどうとでもなってしまう。
「うむ。で、聖騎士というのは腕前はもちろんだが人格も重視して選ばれるそうでな。清廉潔白で、誰からも慕われる人格者でなければダメらしい」
「清廉潔白で、誰からも慕われる……」
「加えて、普段の素行も厳しく調査されるそうだ」
「ううーん……」
そう言われると、ウェインさんはいささか世俗にまみれすぎているような……。
パーティのたちと明らかに関係を持っていそうな雰囲気だったし。
聖十字教団の教義において、純潔であることは極めて重要である。
複數のと関係を持つことなどもってのほかだ。
「し変だと思わないか?」
「でも、聖十字教団に限って不正とかはないですよ」
古くて大きな組織には腐敗がつきものだが、こと聖十字教団はそう言ったものとは無縁であった。
聖であるファム姉さんが、日頃からしっかりと管理しているおかげだろう。
姉さんは基本的に優しい人だけど、に対してはとにかく厳しいからなぁ……。
過去の記憶が脳裏をよぎり、たまらずがぶるぶるっと震えた。
ライザ姉さんたちとは違って、ファム姉さんは笑顔で無茶苦茶を言ってくるんだよな。
「いや、最近はそうとも限らんらしい。何でも新しく司教になった男がいろいろと厄介なのだとか」
「そうなんですか? 俺、初めて聞きましたけど」
「心配をかけると思って、ジークには言わなかったのだろう。ファムはジークに気を使っていたからな」
あれで……?
切り傷を作っては、治癒魔法を使い続ける修行とかさせてきたのに?
俺は思わず眉間に皺をよせたが、姉さんは気にせず語り続ける。
「ファムの話によると、教団部に獨自の派閥を作っていろいろ怪しいきをしているらしい。しかも、資金集めに熱心で金次第で地位を斡旋するようなこともしているとか」
「え? じゃあひょっとして……」
「あくまで可能の話だがな。さすがの私も斷言はできん」
さすがに言葉を濁した姉さん。
しかし、言いたいことはハッキリと伝わってくる。
けど、これから一緒に過酷な依頼に向かうって時に仲間を疑うのも良くないな。
何といっても魔界に行くのだ、例え剣聖の姉さんが一緒でも何が起きるかはわからない。
「……ひとまず、そういうことは無事に依頼を終えてからにしましょう」
「それもそうだな。すべては魔界から帰ってきた後だ」
そう言うと、姉さんはぐぐーッと大きくびをした。
し疲れた顔をする彼に、俺は気分転換になればとし話題を変えてみる。
「そう言えば姉さん、ラージャでの暮らしにはもう慣れたんですか?」
「え? ああそうだな、それなりには慣れてきたぞ」
ラージャの街のことが、割と気にっているのだろうか。
ライザ姉さんの表は先ほどまでとは比べにならないほど明るかった。
俺も、あの街のことはすっかり好きになってしまっている。
冒険者の街という土地柄ゆえか、よそ者でもすぐにけれてくる懐の深さがあるんだよね。
「優しいですよね、ラージャの街って。俺なんて、もうずーっとあの街で暮らしてたような気がします」
「おいおい、まだほんの數か月じゃないか」
「ええ。でも、俺にとってはもう第二の故郷みたいなもんですよ」
ラージャの街の人たちのことを思い浮かべながら、微笑む俺。
みんな優しくて、もう十年ぐらい住んでいるような覚になってしまっている。
だがここで、ふと姉さんはあることを口にした。
「しかし……。ラージャにはあまり良くない部分もあるな」
「え?」
「何かとが多すぎるのだ。特にあの水路通りとか言う場所!!」
そう言うと姉さんはズイっと俺に顔を近づけた。
そして、やたらとドスの利いた聲で言う。
「ジークも、ロウガにわれて出かけたりしていないだろうな?」
「そ、そんなことないですよ! ええ!!」
青い顔をして、ぶるぶると首を橫に振る俺。
気分を変えようとして、墓を掘っちゃったかなぁ……!
俺はしばかり自らの選択を後悔したが、時すでに遅いのだった。
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